【R-18】自称極悪非道な魔王様による冒険物語 ~俺様は好きにヤるだけだ~

第36話 雑魚牛と危機

　セムネイルの角に宿る黒い稲妻を拳に纏い、そのまま苦しむミノタウロスキングの左頬をぶん殴る。

　「ギャモオォォォォ？！」　　　

　余りの激痛に悶え、己の左頬が吹き飛んでいる事に気付いたミノタウロスキングは更に激怒しセムネイルに向けてバトルアックスを振り回す。

　しかし、リンに左目を潰されたせいで狙いが定まらない。

　「隙ありだぞ！　喰らえー！」

　セムネイルに気を取られている所をノラが追い討ちをかけた。

　構えた両手斧をミノタウロスキングの右足に食い込ませる。

　「セムネイル様！　右目も射抜きます！」

　悲鳴を上げ続けるミノタウロスキングに容赦無くリンが矢を放つ。　リンの放った矢は正確無比に暴れるミノタウロスキングの右目に刺さった。

　「貴方様、準備が完了しましたわ！　離れて下さいませ！」

　「おう！　ノラ、離れろ！」

　「分かったぞ！」

　結界を張りながらのセリスが重力魔法を発動し、周囲の石を尖らせ射出する。　

　「浮かべ小石、尖らせ小岩、突き刺さる槍なり敵を穿つ石、重力魔法 槍石の舞！」

　セリスの周りを尖った石が踊る様に浮き上がり、ミノタウロスキング目掛けて全身を貫いた。

　「グモォォォ……」

　凄まじい衝撃音をたてながらミノタウロスキングが地面へと横たわる。

　セリスの結界で守られるアヤメはあり得ない強さを持つセムネイル達に驚愕し、自身を汚したミノタウロスキングが死んだ事に喜びの涙を流した。

　「す、すげぇ……。　本当に強かったのか……」

　隣のセリスはアヤメの呟きを誇らしげに聞いている。

　横たわった直後、近くに宝箱が出現した事でミノタウロスキングが完全に絶命した事が分かった。

　「くっくっくっ、やはり牛は牛だな。　雑魚が」

　ミノタウロスキングの死骸と落としたバトルアックスを4次元に収納したセムネイルはアヤメの下に向かう。

　戦闘が終わり、殺害欲が満たされたセムネイルの額からは角は消えていた。

　セリスの結界に守られていたアヤメは重傷ではあるが、まだ死んでおらず治療が間に合った事にセムネイルは内心で安堵する。

　もし間に合わなければ、大昔の仲間であり幾度も愛し合った治癒の女神ウルナが悲しい顔をしただろう。

　「おい、生きてるな？　治療したらとりあえず安全な場所に移動させてやるから動くな」

　「す、すまない……私はもう手遅れだ。　最後に言わせてくれ………お前の大切な者達を侮辱した。　今は……それがどれだけ愚かだったか分かる。　許してくれ……がはっ！」

　長い時間をミノタウロスキングに犯され続けたアヤメの身体はボロボロだ。　様々な所の骨は砕け、内蔵も潰れ、アヤメ自身が悟った様にもうすぐ死ぬだろう。

　「悪いが、俺の妻達への謝罪は直接言え。契約せし癒しの女神よ、神々を裏切り俺を味方した慈悲深き女神よ。ここに横たわる者達を癒せ、ここにお前の奇跡を見せろ！  治癒女神の慈悲」

　セムネイルの後ろに半透明の癒やしの女神ウルナが現れ、セムネイルに治癒の力を与える。

　ウルナの表情を見ると嬉しそうに微笑み、セムネイルの頬に触れれないキスをする。

　「ウルナ、お前だからだぞ？　ったく、仕方ない女だ」

　顔を赤くしたセムネイルがアヤメを治療し、全身の骨や傷はたちまちに癒えた。

　アヤメは全身が完治し激痛から解放された事で一気に身体から力が抜け落ち、そのまま気絶する。

　セムネイルは忘却の魔法をカエデに掛けて、先に双子のシスターを入れた所と同じ4次元の地下牢に移動させた。

　「よし、ノラ、リン。　宝箱の中身は何だった？」

　「はい、また剣です」

　「馬鹿でかい剣だぞセムネイル！　真っ赤な大剣だ！」

　振り向くと、明らかに宝箱より巨大な赤い大剣をリンとノラが持ち上げていた。

　「くっくっくっ、その大剣を持ち上げれるなら大したものだ。　皆、よくやったぞ」

　妻達を褒めながら大剣を4次元へと仕舞う。　

　「ふふ、お褒めの言葉ありがとうございます貴方様♡」　

　「が、頑張りました！」

　「うぉー！　セムネイルに褒められたぞー！」

　セリスとリンは頬を赤らめ、ノラは尻尾を振りながら走り回る。

　「ふははは、俺の可愛い妻達は既に最強かもな。　お、4層への階段が現れたぞ。　さっさとこの迷宮を抜けるとするか」

　セムネイル達は3層の迷宮を後にし、階段を降りていった。

　◆◇◆

　セムネイル達が去ってから暫くした3層の迷宮では、広大な大迷宮に住む多くのブラックゴブリンキング達やミノタウロス達が集まり魔物の言葉で何やら相談し始める。　　　

　どうやら、知恵のついた魔物達がこの迷宮を支配していたミノタウロスキングが死んだ内にダンジョンの外へと向かおうとしているようだ。

　遂に、ブラックゴブリンキング達やミノタウロス達は先立って脱獄した同胞のブラックゴブリンキングとブラックゴブリン達の様に脱獄する事を決める。

　セムネイルは知らない。

　最初に訪れた初心者が通うダンジョンに居たブラックゴブリンキングとブラックゴブリン達は元々この迷宮で生まれていた事を。