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第33話 救いと天秤

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 ドッッゴォォォンッ!!

 迷宮の壁をセムネイルが吹き飛ばしながら一行は進む。

 暫く進むと、破壊音に魔物が集まり始めたのか前方の壁に魔力反応が有ることに気付いた。

 「セリス、分かるか?」

 「はい、貴方様。 前方の壁裏側に魔物が30匹程居ますわ!」

 「くっくっくっ、上出来だ。 ノラ、俺の後ろに来い。 リンはセリスを守りながら矢を射れ。 セリス、好きなようにやってみろ」

 「「はい!」」 「あおーん!」

 3人の返事を聞き、セムネイルは前方の壁を破壊する。

 「ぬぅおりゃぁぁぁ!」

 ドッッゴォォォンッ!!

 「「「ギギャァァァァ!!」」」

 壁に近すぎたのか瓦礫に潰された魔物の悲鳴が聞こえ、崩れた先にはブラックゴブリンキング達が待ち構えていた。

 Aランクの魔物達にリンとノラは緊張し、セリスはブラックゴブリンキングを見て杖を抱きしめていた。

 「ノラ、2人に敵を近付けるな! リン、正確に頭を射貫けよ? セリス!! 深呼吸しろ、大丈夫だ! 俺が居る! 」

 ブラックゴブリンキングに颯爽と殴りかかるセムネイルにノラが続く。

 「うが! 俺の出番だ! 負けねぇぞーー!!」

 両手斧を振りかざし、勇猛果敢にブラックゴブリンキングを相手取る。

 流石は誇り高き狼獣人だ。
 戦闘が始まれば怯えや恐れは消え去り、ノラはブラックゴブリンキング達を斬り捨てる。

 「セリスさん! 私が近付けさせません! 殺っちゃって下さい!」

 セムネイルとノラをすり抜けようと動くブラックゴブリンキング達を、リンが冷酷無比に矢で貫く。

 額に矢を生やした死骸が山と成り、止めにセリスが詠唱を始めた。

 「ふーーー………礫よ岩よ、尖り尖り、相手を貫け! 下から上へと伸びよ伸びよ! 岩礫の岩柱!!」

 セリスが魔法を使うと、セムネイルやノラに止められていた魔物達が地面から生えた鋭い岩柱に貫かれ息絶える。

 「まだだ! 後2匹! ノラ、リン、殺れぇ!!」

 「がう!! 狼流奥義鉄斬剣!」

 「しっ!! 三連射!」

 リンとセリスに迫っていた2匹のブラックゴブリンキングは真っ二つに裂け、額には3本の魔力の矢が突き刺さる。

 「「ガガギィィィ……」」

 ドッシーーーーンッ!

 最後の魔物達が倒れ、戦いが終了した事を告げる。

 「わ……私に、あんなに恐ろしい魔物達が倒せるなんて……」

 「がう! セムネイル!! 見てたか? 俺達の戦い見てたか!?」

 「ふぅ……本当に私達でAランクの魔物が倒せるとは驚きですわ」

 3人は信じられないと驚き、勝てた事実に感動していた。

 「くっくっくっ、3人に必要なのは経験だけで実力自体は出会ったSランク冒険者神の使徒(笑)を既に越えてるからな。 あれぐらいの雑魚なら楽勝だろ。 さぁ、魔石を採って先を進むぞ」

 「はい!」 「がう! 綺麗なあの石だな!」 「あら? 貴方様、金貨はまだかなり残っているのでは?」

 元気よく返事をするリンとノラを撫でながらセムネイルは苦笑する。

 「すまん、昔の癖でな。 ダンジョンで手に入る物は全て入手するルールだったんだ。 まぁ……所謂貧乏性ってヤツだな。 セリスはケチ臭い男は嫌いか?」
 
 「いいえ、とんでもないですわ。 私も賛成です! 根こそぎ奪いましょー!」

 「ふははは! 流石、俺の妻だ。 よし、俺達も集めるとしよう」

 「はい、貴方様♡」

 セムネイルとセリスは、先に採取を始めた2人の元に行くのであった。

 ◆◇◆

 ドッッゴォォォンッ!!

 セムネイルが派手に迷宮の壁を叩き壊す。

 ドッッゴォォォンッ!!

 また暫く進むと魔物に襲われ、返り討ちにするのを繰り返し始めてから1時間。

 セムネイルの魔力探知に人間の反応が現れた。

 (ん……? くっくっくっ、生きてるか。 リンとノラが悲しまずにすみそうだな……しかし、これは……)

 「セリス」

 「はい、貴方様。 その先に2つの気配が有ります。 ……その気配の直ぐ側に魔物の気配も」

 悲痛な顔でセリスが答える。

 セリスは分かっているのだ……この先の人間がどのような目に合っているのか。

 「セリス、結界は張れるか?」

 「……え?は、はい! 師匠に教わった重力結界が使えますわ」

 「くっくっくっ……そうか、やはりセリスは優秀だな。 俺よりも魔法の才があるぞ? よし、この先は俺が1人で行く。 リン、ノラ、セリスの結界の中で待機しろ」

 「え……は、はい」 「がるるる……俺も何か嫌な感じがするぞ!」 「2人共、私の側に。 貴方様……どうか、お願いします。 同じ女として……救いを」

 「うむ……分かった。 3人共、直ぐに戻る」

 セムネイルは3人の妻達を置いて、気配がある先へと走っていった。

 ドッッゴォォォンッ!!

 「ギガ?」

 ドッッゴォォォンッ!!

 「ギピッ?!」

 壁を破壊しながら、道中に遭遇する敵を捻り潰す。

 (……次か。 妻達の願いだ……ベストを尽くそう)

 ドッッゴォォォンッ!!

 壊した壁の向こうでは、牛の頭部をした魔物ミノタウロスが予想通り紫髪のシスターコリンを犯していた。

 足下には、白髪のシスターカリンが血だまりに倒れている。

 既に長時間犯され続けたであろう、カリンの瞳に光は無く。 
 魔力にも微々たる反応が有るだけだ。

 直ぐに助けて治療しなければ、一刻もしない内に死ぬだろう。

 現在犯されているコリンも至るところから血を流し、楽に死ねずその小さな身体は巨大な陰茎で貫かれていた。

 「ブルルルル……? ゴァァァァ!!」

 壁を破壊して巣に入ってきた侵入者に気付いたミノタウロスは、その醜く巨大な陰茎を勢いよく引き抜き武器を取った。

 ズッ……ズッ……ズポォ……ゴトッ!

 「あが……あ……あ……」

 紫髪のコリンは地面へと落下し、血だらけで倒れるコリンの瞳は虚ろで呻くだけだ。

 「ちっ……本当にお前達魔物は生きる価値が無いな。 其処の女に同情は無い……だが、お前は俺に2度と見たくない光景を見せた。 楽に死ねると思うなよ?」

 ミノタウロスの後ろから、更にミノタウロス達が群れでぞろぞろと現れる。

 その数20匹。

 小さな国なら蹂躙され滅ぶ程の戦力だ。

 恐らく……2人のシスターはミノタウロスの群れに犯されていたのだろう。

 2人がSランク冒険者として、強靭なのが災いし何匹ものミノタウロスに犯されても死ねなかったのだ。

 セムネイルの怒りが頂点に達した時、黒髪の中から小さな角が2本生え始める。

 魔族としての象徴である角が。
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