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第32話 迷宮攻略は物理が1番

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 3階層の階段入口前では、セムネイルによる殺戮が行われていた。

 「ふははははははっ! どうしたどうした雑魚共!! 俺は1人だぞ? 殺ってみせろ!」

 笑いながら、素手でブラックゴブリンを殴り殺す。

 悲鳴を上げたブラックゴブリンが順番に壁の染みへと変わっていく。

 神々や魔神達が束になっても殺せなかった最強の魔王を、例え完全復活してなかろうと、ブラックゴブリン無勢が殺せる道理は無い。

 現代では、ブラックゴブリンはBランクの冒険者が苦戦する魔物等と言われているが、神魔大戦の時は雑兵に等しく雑魚扱いであった。

 当時の英雄達が現在の冒険者や英雄と呼ばれる者達を見ると、あまりに弱すぎて泣き出すだろう。

 ブラックゴブリンキングは後方で、配下がゴミの様に殺されていくのを震えながら見ていた。

 「「「ギィギィ!!」」」

 配下のブラックゴブリン達が逃げ出そうとするのを、ブラックゴブリンキングは咄嗟に止める。 

 「ギガァァァァ!」

 ブラックゴブリンキングは命じる。
 最後の1匹まで戦えと。

 お前達がアレを消耗させて、最後に王の俺が殺すと指示を飛ばしたのだ。

 その様子を、セムネイルは呆れながら見ていた。

 「くっくっくっ、知恵が多少付いただけで、阿呆に変わりは無しか……もういい。 俺様の前から消えろ! 唸れ拳、光れ力よ、前方の敵を打ち砕け! 巨人拳!!」

 セムネイルが魔法では無く、武技を発動させると右手の拳が巨大化しブラックゴブリンキング諸とも粉砕した。

 ドッッゴォォォンッ!!

 「「「「ゲピッ?!」」」」

 「ゴギョッッ!?」

 まだ数十匹は居たブラックゴブリンとブラックゴブリンキングは壁の染みとなり、辺りは静けさを取り戻した。

 「ふう……久しぶりにアイツの武技を使ったが……流石、脳筋の技だな。 おっと、一応魔石を集めるか。 潰れてなきゃいいが……」

 セムネイルは死骸を漁り、魔石を集め始めた。

 ◆◇◆

 それから数十分が過ぎ、漁り終わったセムネイルは妻達を迎えに行く。

 ガチャッ!

 「お! すまん、待たせたな」

 4次元の扉を開けると、リンとノラが泣きながら抱き付いてきた。

 「あうー! セムネイル様、御無事で良かったですよー!」

 「がるる! おい、セムネイル! 次はちゃんと俺達も戦わせろ! 雄が1人で戦うのはダメだ! 死んだら嫌だぞー!」

 「くっくっくっ、すまんすまん。 セリスもありがとう。 咄嗟の指示をよく聞いてくれた」

 セムネイルは胸で泣く妻達を優しく撫で、セリスに礼を述べる。

 咄嗟によく動けたと。

 「いえ、当然でございます。 貴方様の無事を私は1ミリも疑っておりませんでしたわ」

 「うむ、頼りにしてる。 よし、リン、ノラ! 次は共に戦うぞ? さっさと泣き止んで出発するぞ」

 「はい!」 「おー!」 「ふふ、2人共現金ね」

 3人の妻達を連れ、今度こそ3階層の迷宮を突破しに4人は向かうのであった。

 ◆◇◆

 「おーー!? セムネイル、凄いな! 石の壁で囲まれてて何も見えないぞ!?」

 ノラが大興奮で石の壁を叩いて回る。

 「セムネイル様、この石の上を歩いて行くのではダメなのでしょうか? よっ! んっ!!」

 リンが一生懸命に壁を登ろうとするのを、セムネイルは微笑ましく見ていた。

 「くっくっくっリン、見えないが上は天井になってるぞ? ダンジョンのエフェクトで、石の上が有るように見えてるだけだ」

 「貴方様はダンジョンの事に詳しいですのね。 流石でございます」

 セリスに褒められ、セムネイルの鼻は何処までも高く高く伸びる。

 「くっくっくっ、だろ? こうみえて、封印される前に存在していたダンジョンは全て制覇していたからな。 ダンジョンマスターと呼ばれたものよ! ふははは!」

 高笑いするセムネイルに、ノラが飛び付く。

 「なーセムネイル、じゃあこの迷宮はどうやって進むんだ? しらみ潰しか?」

 「うおっ!? い、いや、違うぞノラ。 このタイプの迷宮は、通路が突然代わる。 正攻法では、まず突破出来ん。 進んだ先が行き止まりで引き返そうとしても、後ろも行き止まりになっていたり何て当たり前だからな」

 セムネイルの言葉に、セリスはハッとする。

 「確か……資料にありました。 唯一の中からの情報として、当時のSランク冒険者が送ってきた魔法に『此処は大迷宮だ我等は生きて戻れぬ』……と。 それから、このダンジョンは大迷宮と呼ばれるようになったのですよね」

 「お、よく覚えていたなセリス。 そうだ、恐らく20年前の冒険者達はこの3階層を突破出来ず迷宮の中で死んだのだろう」

 セリスとセムネイルの会話に、リンが身震いする。

 「じゃあ……どうするのですか? セムネイル様」

 怯えるリンの頭を撫でて、セムネイルは石の壁へと向かう。

 「教えてやる。 見てろよ? これが……この迷宮を簡単に突破するやり方だ!!」

 ドッッゴォォォンッ!!

 ガラガラ………

 セムネイルの前方にあった石の壁は粉砕され、次の通路が見えてきた。

 「「「…………え?」」」

 妻達が呆然とするなか、セムネイルは良い笑顔で言った。

 「真っ直ぐ壁をぶち抜けば、何も問題無い! 壁が無ければ塞がれようが無いからな! ふははははははは!!!」 
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