【R-18】自称極悪非道な魔王様による冒険物語 ~俺様は好きにヤるだけだ~

秋刀魚妹子

文字の大きさ
上 下
23 / 252

第23話 実戦と狩り

しおりを挟む
 買い物を終えた4人は、街の側にある森へとやって来ていた。

 街を出る時に登録を薦めてきた衛兵と少し雑談したが、リンやノラが冒険者になったと知ると喜んでいた。

 亜人を差別する人間ばかりでは無いことに、改めてセムネイルは少し安堵する。

 「よし、じゃあこれから実戦で何が出来るか見せてもらう。 先ずは……リン。 弓の腕前を見せてくれ」

 「は、はい! 頑張ります! 奴隷にされる前は世界樹の森で角ウサギを狩ってましたから!」

 リンが弓を構えて、鼻息荒く宣言する。
 羽織っている羽衣がふわふわと揺れ、その姿はとても愛くるしい。

 (うむ、やはりリンに良く似合っている。 選んで正解だったな)

 しかし、角ウサギとはセムネイルも瞬殺していた雑魚中の雑魚だ。

 新人冒険者でも狩れる、下級も下級、最下級の魔物だ。

 セムネイル達は苦笑いしながらも、リンを温かく見守る。

 (……以前のリンだったらそうかもな。 だが、今のリンなら)

 「む? セリス、分かるか?」
 
 魔力を察知し、同様に魔力を探っていたセリスに問い掛ける。

 「……はい、小さな魔力が複数。 この先です」

 「くんくん、セムネイル! 俺も匂うぞ? 小さい魔物だ!」

 セリスが指を差した方角を確認し、セムネイルは満足そうに頷く。

 「くっくっくっ、正解だ。 ノラも良く分かったな。 リン、この先に角ウサギが3匹居る。 その弓で同時に仕留めてみろ」

 セムネイルの無茶な要望にリンは慌てる。

 「さ、3匹同時にですか!? や、やや、やってみます!」

 緊張で身体が強張っているが、ゆっくりと茂みに近付く。

 すると、無防備に角ウサギが3匹茂みから出て来た。 相変わらず、野生の魔物とは思えない程の警戒心の無さだ。

 「き、来た! い、いい、いきます!」

 リンが弓を構え、魔力の矢を具現化させた。

 淡く紫色の矢は硬く、鋭く尖っている。

 セムネイルが、身体が強張っているリンの背後から優しく教える。

 「いいか、リン。 大丈夫だ、落ち着け。 今のリンはめちゃくちゃ強いぞ? 俺を信じて、深呼吸しろ。 相手は雑魚だ、魔力を3匹に向けて練ってみろ。 同時に、3匹の、額を狙うんだ」

 「は、はい! すー、はー、すー、はー! ふ~……凄い、分かります! 魔力を、額に」

 リンから凄まじい魔力が溢れだし、矢が3本に増えた。

 「息を吸って、止めて、射貫け」

 「すー……いきます」 スパァァンッ!

 「「「スンスン……ピ? ギャッ!」」」

 冷静になったリンが放つ3本の矢は、正確無比に3匹の角ウサギの額に命中し頭を吹き飛ばした。

 「がぉー!? リン、お前凄いな! 俺、びっくりしたぞ!」

 「これはいったい……貴方様と出会う前は、非力で弓を当てるだけで精一杯でしたのに……」

 驚き喜ぶ2人を他所に、リンはセムネイルの側で跳び跳ねていた。 

 「え……? や、やりました! やりましたセムネイル様! 凄い! 私にこんな事ができるなんて!」

 「良くやった、リン。 流石は、俺の妻だ」

 リンの綺麗な金髪を優しく撫でる。
 それだけで、リンは嬉しくて堪らないと言いたげに長耳を真っ赤に染めていた。

 ◆◇◆

 リンの仕留めた獲物をとりあえず4次元に仕舞う。

 「よし、次はノラ! 狼獣人の狩りを見せてくれ!」

 「アオーーーン! 任せろセムネイル! 誇り高き狼獣人の狩りを見せてやる! 」

 ノラは両手斧を振り回し、気合い十分だ。
 今日も丸見えなヘソが眩しく、変態の目は釘付けだ。

 「くんくん、くんくん! 向こうに大きな獲物がいるぞ! 」

 地面に鼻を近付け、匂いを探る。

 その仕草は狼その物で、高く突き上げた桃尻と揺れる尻尾に変態は釘付けだ。

 (ほう……流石だな。 狼獣人だからなのか、鼻の効きは魔力察知並みだな。 しかし……良い尻だ、エロい!!)

 「くっくっくっ、ノラ行ってこい!」

 「がう! セムネイル達も見ててくれよな!」

 ノラが可愛い尻尾を振りながら森へと駆けていく。

 セムネイル達も追い、ノラの狩りを見守る。

 ガサガサ 「ギガ? ギギ」 「「ギガァ」」

 森を進んだ先には、茂みから棍棒を持ったゴブリン3匹が出てくる所だった。

 「ガルルル! 俺、お前達……なんか分かんないけど嫌いだ! 死ねぇ! 狼流奥義回転乱舞!」

 狼獣人の流派なのか、ノラが奥義名を叫びながらゴブリンに向かって飛んだ。

 ノラが空中で回転し始める。 すると縦や横等、縦横無尽に両手斧が振り回されそのままゴブリン達を細切れにした。

 ズババババァァンッ!
 「「「ギギィアァァァッ!」」」

 3匹のゴブリン達はバラバラになり、地面に汚ない青色の血だまりを作る。

 「ふー、どうだ!? 見てたかセムネイル! なんか、凄く身体が軽いんだ! 今なら竜でも狩れるぞ!」

 「よくやった、ノラ。 見てたぞ、ノラなら竜でも楽勝だな」

 最下級とは云え、3匹のゴブリンに対して何もさせずに倒すのはCランク冒険者でも難しいだろう。

 セムネイルに頭を撫でられる度に狼耳がピクピクと動き、尻尾が千切れんばかりに揺れている。

 (うむ、不安だったが大丈夫そうだな。にしても、リンは清楚で可愛くて、ノラは野性的で可愛いなぁ……いかん、ムラムラしてくる)

 変態は吹き上がる欲情を抑えて、最後のテストを始めるのであった。

 ◆◇◆

 「ふむ、これぐらい広ければ良かろう。 よし、セリス! 使える魔法を全て見せてくれ」

 森を進み、草原に出た所でセリスの魔法を見る事になった。

 「畏まりました。 ですが、それほど使える魔法は多く有りませんが……よろしいですか?」

 「謙遜するな。 セリス、お前の魔力量は俺の次に多いぞ。 自信を持て」

 セリスは顔を綻ばせた。
 
 「はい! 見ていて下さいませ!」

 セリスは、杖を構え魔法を詠唱する。

 「頑張ってセリスさーん!」

 「セリス! でかい魔法が見たいぞ!」

 2人の可愛い妻妹達の声援がセリスに更に力を与えた。

 「全てを燃やす火よ、全てを運ぶ風よ、全てを受け入れる水よ、一時の間混じり交ざり矛となれ! 三元素複合砲!!」

 セリスの杖の先から、炎風水が1つとなり直線上に在るものを全てを吹き飛ばした。

 草原は燃え、水圧で木々は折れ、風が余多を切り裂いた。

 「おぉ! 複合魔法か!! セリス、見事だ!」

 これには、セムネイルも驚きを隠せなかった。 三元素の複合魔法は上級の魔法だからだ。

 前にコルナが言っていた事が事実なら、今の時代では最高峰の魔法だという事だ。

 「セリスさん、すごーい!」 「綺麗な魔法だな!」

 大好きなセリスの魔法が見れて、2人は御満悦だ。

 複合魔法は魔力を緻密に練り上げ、火風水の攻撃魔法を暴発しないように操らないと不可能なのだ。

 封印される前の、あの地獄の世界でも使える魔法使いは限られていただろう。

 「えへへ、まだ使えますよ! 見てて下さい!」

 それから、疲れ知らずのセリスは雷魔法や土魔法等を使ってみせ。

 最後の取って置きの魔法を披露することになった。

 「セリス、大丈夫か? もう充分セリスの実力は分かったぞ?」

 心配するセムネイルは、この後今日1番驚く事になる。

 「ふぅ……大丈夫ですわ、これで最後ですので。 私が学園で覚えた最強の魔法をお見せ致します! 浮かべ小石、浮かべ大岩、空から降るは月の石、重力魔法 降る石の雨!!」

 ズドドドドドドドドドドドッ!!!

 セリスが魔法を唱え始めると、周囲の岩が浮き空へと上がると雨の様に地面へと落下し始める。 ただ浮かんで落ちた訳ではない、凄まじい速度で地面を穿ち広範囲を破壊するのだ。

 「ふふ……あら? 流石に魔力切れですわ」

 ふらつくセリスをセムネイルが優しく受け止める。

 「すごいなセリス! まさか、重力魔法を使えるとは!!」

 以前にセムネイルが使った重力魔法よりは劣るが、それでも最上級の魔法だ。

 コルナの弁を借りるなら、お伽噺の魔法だ。
 
 「あぁ、貴方様が喜んで下さって良かったですわ。 学園は愚かにも、この素晴らしい魔法を禁忌魔法としてたのです」

 「くっくっくっ、それは確かに愚かだな。 よし、確認はこれで終わりだ! 明日、4人でダンジョンに向かうぞ!」

 「やったー! 良かったねノラ! セリスさん!」

 「がう! やったなリン! セリスも頑張ったな!」  

 「ふふ、はいはい」

 セリスを抱き上げ、4人で仲良くローズが待つギルドへと向かうのであった。

 ◆◇◆

 4人が草原を去った後。

 「おい、これは……なんだ?」

 周囲を巡回していた兵士の1人が、穴だらけの草原を発見した。

 「な……何があったんだここで。 まさか、上級の魔物が!?」

 「脅かすなよ……え? おい! アレを見ろ!」

 穴だらけの草原の先に見えた。

 草原は焼け、木々は折れ、見渡す限りがズタズタに切り裂かれている。

 「間違いねぇ、こりゃ上級の竜だ! 飛竜が来るんだ! 急いで領主様に伝えよう! 走れ! 走れ走れ走れぇぇぇ! 近くにいるかもしれねぇぞーーー!!」

 4人の兵士達は、急ぎ街へと戻るのであった。

 しかし、偶然にもこの勘違いが後になって幸をなす事をセムネイル達は未だ知らない。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

処理中です...