【R-18】自称極悪非道な魔王様による冒険物語 ~俺様は好きにヤるだけだ~

秋刀魚妹子

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第22話 買い取りと買い物

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 ラーメン屋タナカで食事を終えたセムネイル達は、奥のテーブルで固まっていた。

 「しまった……俺とした事が」

 「セムネイル様……どうしますか?」

 「セムネイル見ろ! このハシっていう棒切れで俺ラーメン食えたぞ! 褒めろ!」

 「ノラ……今は止めなさい。 貴方様は悩んでらっしゃるのですから」

 セムネイルは本当に焦っている。
 大口を叩き、ラーメン屋で大量に昼飯を食べたのだ。

 適正の価格をセムネイルは知らないが、そもそも硬貨を1枚も持ってない時点でアウトだろう。

 「貴方様……私が身体で支払って参ります」

 セリスが徐に席を立とうとするが、セムネイルがそれを止める。

 「ダメだ。 それは、絶対に嫌だ。 セリスのお陰で腹を括れたよ……待ってろ」

 セムネイル1人席を立ち、店主タナカの元へ向かう。

 「店主、すまん」

 「あらお兄さん、お会計かい? 今日も来てくれて嬉しいよ~」

 店主タナカが笑顔で接してくるのが辛い。

 「支払いを……宝で払えるか? 武器や防具、貴金属になるのだが……」

 「ん~……ラーメン屋が武器やらを貰うのは流石に無理かな~。 どうしたの? お金足りない?」

 「そうか……すまん、そうなのだ。 今、防具屋で査定中でな。 もし、店を出るのを許して貰えるなら直ぐに金を持ってくる」

 「うんうん、前に金貨で貰った分でお釣が出るから今日は良いよ~? お兄さん、粋で義理堅いんだね~。 ローズちゃんを安心して任せれそうだ」

 「ありがとう、本当にすまん。 明日、ダンジョンに行く前にまた寄らせてもらう。 金は必ずその時に纏めて払う」

 頑ななセムネイルを見て、店主タナカは笑う。

 「ふふ、何だか故郷でラーメン屋してた時に来てくれてた学生さんを思いだすよ。 同じ黒髪だしね。 分かった、期待せずに待ってるね」

 「うむ、待っていてくれ。 リン、ノラ、セリス、話がついた出るぞ。 旨かった、ご馳走さま」

 「美味しかったです! ご馳走様でした!」

 「タナカ! 旨かった!! 」

 「タナカさん、本当にすみません。 ありがとうございます」 

 「は~い! ありがとうございました~!」

 タナカに笑顔で見送られ、4人は防具屋に戻った。

 ◆◇◆

 防具屋の扉を開けると、奥から揉める声が聞こえる。

 「やれやれ、今日はついてない1日だな。 俺の後ろに居ろ。 行くぞ」

 後ろに妻達を引き連れ、店の奥へと向かう。

 「信じられるか馬鹿野郎が! 」

 「うるせぇっ! だから、現にここに上等な防具が有るだろうが!! 」

 「もしかしたら盗品かもしれねぇだろうが!」

 「毎日毎日、俺の店に用も無く来やがって! 仕事しろ仕事を!!」

 どうやら、店主のトムが誰かと言い争っているようだ。

 奥にはトムと、同じ様な白髪を生やした中年の親父が喧嘩をしている。
 その親父は腰にハンマーと剣を差しており、中々に物騒だ。

 「おい、戻ったぞ! 査定は出来たのか?」

 セムネイルが声を掛けると2人が振り返り、知らない方の中年の親父がドカドカと近寄って来た。

 「おぉぅっ! おどれか兄ちゃん! 俺の弟を騙そうたってそうはいかねぇ! 言え! どこで盗んだ! 」

 怒鳴る親父のせいで、妻達が後ろで萎縮している。

 「いきなり何だお前、トム誰だ? 殺していいか?」

 「す、すまねぇ! 許してやってくれ! おい兄貴いい加減にしろ!! 」

 どうやら、中年の親父はトムの兄らしい。

 「こ、殺すだと? この俺を!? いい度胸だ! 俺の鍛えた剣で返り討ちにしてやるよ!」

 無謀にもトムの兄は腰に差した剣を抜き、セムネイルに斬りかかった。

 しかし、剣はびくともしない。

 「セムネイル様、大丈夫ですか!?」

 「セムネイル、凄いな! 指先で剣を摘まん出んのか!」

 「トムさん……お兄さん、本当に殺しますわよ?」

 妻達から心配の声が……リンだけ心配している様だ。

 「おい、トムの兄よ。 最後だ、話しを聞くか死ぬか答えろ。 お前のせいで、妻達に要らぬ恐怖と心配を与えたんだ」

 指先で摘まんだ剣を、指の力だけで折っていく。
 パキンッ! パキンッ! パキンッ! パキンッ!

 遂には、柄だけになった剣をトムの兄は信じられない顔で見ていた。

 「お……おぉ? あ、あり得ん……俺が……鍛えた剣が」

 トムの兄はその場で崩れ落ち、項垂れてしまった。

 「セリス、魔法を止めろ。 ありがとう大丈夫だ、俺をなまくらで傷を付ける事は不可能だよ」

 手から炎を出し、止めをさそうとしていたセリスを止める。

 「……分かりました。 すみません、貴方様。 私が、この店を過大評価したばかりに……」

 「構わん。 気にするな、セリスのせいじゃない。 おい、トムさっさと勘定してくれ」

 セリスの頭を優しく撫でながら、トムを見る。

 トムは項垂れてしまった兄を何とも言えない表情で見ていた。

 「……はっ! す、すまねぇ。 本当に兄貴がすまねぇな。 どうか、許してやってくれ。 思い込みが激しいんだ。 勘定だな、査定は終わってる。 金を持って来るから、ちょっと待っててくれ」

 トムが金を取りに行っている間、セムネイルは項垂れている親父を見る。

 「おい、トムの兄よ。 その姿、ハンマー、武器職人だな」

 「ぁ……ぁぁ、そうだ。 こんな、なまくらしか打てない職人だがな。俺は、弟とは違う……才能がねぇんだ」

 (嫉妬、妬みか……恐らく、上等な防具の買い取りが弟の店に来たのが信じられ無かったんだろうな。 かと言って、同情の余地は無いか……いや、待てよ?)

 カランッ! 兄の前に1本の短剣が落ちる。

 「その剣を真似て、新しく打ってみろ。 その剣以上を目指せ、弟の店を覗く暇等無いぐらい打ち続けろ人間。 絶え間ない向上心、それが唯一人間が神々より勝る物だ」

 「こ、これは! こんなすげぇ剣見た事ねぇ。あ、あんた……本当に何者だ?」

 「お前が、それ以上の剣を打った時に教えてやる。 さぁ、何をグズグズしてる。 さっさと店に戻って打ってこい!」

 「や、やってやる! やってやるよ! 必ず打ってやる! 必ずだ! 出きるまで休まねぇ! 」

 トムの兄は短剣を握りしめ、防具屋を出ていった。

 「ふぇ……何か凄い人でしたね」

 「ふははは! 元気なおっさんだったな!」

 「ふふ♪ 慈悲深いのですね、貴方様」

 「ん? 違うぞ? 何たって、俺は極悪非道の魔王だからな。 これからアヤツは、鬼の様に打ち続けるだろ……もし、出来なかったら二度と職人として復帰はできまい」
 
 セムネイル達が雑談していると、大袋を持ったトムが戻ってきた。

 ドシャッ! 置かれた大袋の中には金貨が山程入っている。

 「えらく多いな」

 「どの防具も俺が見たこと無いぐらい上等だったからな。 さっきの迷惑料も入ってる。 大金貨3枚分の金貨だ。大金貨は商人以外には使いにくいだろうから、金貨300枚での買取りだ」

 「うむ、すまない。 じゃあ、世話になったな」

 金貨の詰まった大袋を4次元に仕舞う。

 「もし、もしだ! また買取りが必要なら、俺の所に持って来てくれ! 何処よりも高く買い取る!!」

 セムネイルは後ろ手を振り、そのまま店を出る。 当分世話になる機会は無いだろう。

 平民の年収が金貨1枚だ。
 この時点で、セムネイルは平民の年収300年分を手に入れた事になる。

 贅沢三昧しても、釣りがくるだろう。

 セムネイル達は異世界人が作ったスーパーという大きな店にやってきた。

 食料、酒、雑貨等、何でもあるらしくかなり繁盛している。

 「よし! 色々トラブったが、ようやく買い出しだ! 食料、酒、好きなだけ買え! ダンジョンには店は無いからな。買ったのは俺が4次元の家に送る、行くぞ!」

 「あわわ! セムネイル様、私……パンが良いです!」

 「肉! 俺は肉だーーー!」

 「ふふ♪ なら、私は貴方様と飲む用にお酒が良いですわ」

 4人は夕方まで買い物を楽しむのであった。

 ◆◇◆

 4人が買い物を終えた後日。

 スーパーを利用する住民の間で、買った物を消す黒髪とお酒に頬擦りしている赤髪に、パンとお肉を持って踊っている亜人2人が現れたと真しやかに噂されていた。
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