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第16話 やっとの食事と解決策思案
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「ローズ! どうして分かったのだ?」
駆け寄ってきたローズが、項垂れるセムネイルを優しく抱き締める。
「冒険者がギルドに報告してくれたのです。 セムネイル様が飯屋エリアで女の子達を連れて困っていると。 もう大丈夫です、私にお任せ下さい!」
「そうか……すまない、助かる」
頭を優しく撫でると、ローズは嬉しそうに顔を綻ばせた。
「コホンッ! 貴方様、周囲の目がございます。 移動するならお早めに」
セリスに忠告され、立ち上がると3人娘が頬をパンパンにして此方を見ている。
「後で紹介するから、な? 今は待て。 ローズ道案内を頼む。 4人共腹ペコなんだ」
「はい、畏まりました! 此方です!」
ローズはセムネイルの手を取り、3人娘に微笑む。
同じ男を愛する同志に向けた、優しい笑顔だった。
それから暫し歩くと、セムネイルの知っている店に到着する。
今日の朝、ローズと来たラーメン屋だ。
「ここの店主タナカなら、髪色は勿論種族で差別をしたりしません! ゆっくりラーメンを食べましょう!」
「よし、今度こそだ! セリス、リン、ノラ、入るぞ」
「はぃ……」 「ぅん……」 「ほら、2人共。 元気出して!」
セリスに押され、店へと入る。
「いらっしゃいませ~! お好きな席にどうぞ~」
「タナカさん、5名いけるかしら」
「あら、ローズさんいらっしゃい! 勿論だよ~、奥のテーブルなら座れるよ~」
ローズと店主タナカとの会話を聞きながら、セムネイルは安堵していた。
店主タナカはリンとノラをしっかりと見た上で、何も言わず普通に接客してくれるのだ。
こんなに嬉しい事は無かった。
店にいる他の客も誰1人、亜人だと差別する者は居なかった。
「店主、朝も旨かった。 感謝する」
「へ? お兄さん、嬉しい事言ってくれるね。 ありがとうね~」
中年の男、タナカに礼を言ってから奥のテーブルへと座る。
左側にローズとセムネイルが、右側にリンとノラとセリスが座った。
「ふわ~! なんか、凄くいい匂いがしますね!」 「くんくん! 肉か? 他にも匂うぞ! 腹が減ったぞ!」 「ふふ♪ 良かったわ、2人共元気になったわね」
リンとノラが元気になって、セムネイルも嬉しくなる。
「腹が減ってると思うが、先に紹介させてくれ。俺達を助けに来てくれた黒髪の美人はローズ、3人と同じ俺の女だ」
「元奴隷で冒険者ギルドで受付嬢をしてます。 よろしくね」
セムネイルに紹介されたローズは、3人娘に笑顔で元奴隷だと打ち明けた。
「ローズさん……私達と同じなんですね。 森の民エルフ族のリンです。 元奴隷で、セムネイル様の女にして頂きました」
リンはローズの自己紹介に驚きながらも、しっかりと返答した。
「うむ、ちゃんと自己紹介出来て偉いな。 可愛いぞ! リン!」
セムネイルが嬉しそうにリンの頭を撫でる。
「ローズ! よろしくな! お前、いい匂いするから、俺好きだぞ! 誇り高き狼獣人のノラだ! 元奴隷でセムネイルの牝だぞ! 」
「ノラも偉いな! でも、店で大声で喋る事じゃないぞ~?」
元気を取り戻したノラの頭をセムネイルがわしわしと撫でまわす。
「うー! セムネイル! リンにしたみたいに、優しくしてくれ!」
「はいはい、ノラは少し静かにね。 ローズさん、初めてまして。私はセリス、同じく元奴隷です。 旦那様に助けられ、3人共に妻にして頂きました」
セリスは笑顔で自己紹介するが、何処と無く刺が有る言い方だ。
「うん、セリス。確かにそうだが、それならローズもだぞ? だから、ローズと仲良くしろよ?」
「……はい、分かっています。 ごめんなさい、ローズさん」
「あはは……良いのよ。 気持ちは凄く分かるから。 今朝、セムネイル様に女を増やすと言われてからずっと……覚悟してました」
知らない人がこのテーブルを見たら、浮気男の修羅場だと勘違いするだろう。
「何人になろうと、俺はちゃんと抱くし愛すぞ? 安心しろ! ふははははははっ!」
「沢山の方が楽しいです」
「がう! そうだな! 群れを率いる雄は牝を沢山迎えるんだぞ! ローズ! セリス! 」
「ふふ♪ そうね、ありがとう。 仲良くしましょうね、ローズ姉さん」
「姉さん? あぁ~順番的な意味かしら?? ……うん、良い! 可愛い妹が3人も! セムネイル様、何だか凄く嬉しくなってきました!」
ローズが3人娘の頭を撫でまわす。
「あ、あわわ」 「くぅん! くすぐったいぞ! ローズ! 」 「ふふ♪ 私も姉が出来て嬉しいですわ」
「うむ! 4人が仲良く出来そうで良かった。 だが、俺は欲望と狭間の魔王だ。 もっと妻は増えるかもしれんが、よろしく頼む!!」
最低な発言をここまでハッキリ言うのは、世界広しと云えどセムネイルだけだろう。
普通なら、複数の女性達に速攻刺されても不思議では無い。
「よし、腹いっぱい食おう! 好きなの頼め」
皆でメニューを見るが、さっぱりどんな料理か分からない。 メニューには、料理の名前が書いてあるだけなのだ。
「セムネイル様、実はラーメン以外にも唐揚げとか餃子っていう美味しい料理が有るんですよ?」
セムネイルも知らない料理にワクワクが止まらない。
「は~い、お水ね~。 注文決まったら、呼んでね~」
テーブルに5個水が入ったコップが置かれ、3人娘が恐る恐る口を付ける。
「朝食べて旨かった醤油ラーメンを5つと、その餃子と唐揚げも5ついくか」
「そうですね、皆さん沢山食べそうですし。 タナカさーん、注文お願いしますー!」
ローズが馴れた口調でサクサクと注文する。
「ありがとうローズ。 ここは、朝も薦めてくれたが長いのか?」
「そうですね……私も、この街に来た当初はどこの店も入れてくれませんでした。 髪が黒色ですから」
(そうか……それで、何に困ってるか直ぐに分かったのだな)
「その時に、声を掛けてくれたのがタナカさん何です。 初めて食べるラーメンという料理を食べさせてくれて……それからずっと通ってます」
「そうか……俺も借りが出来たな」
3人娘は、セムネイルとローズの邪魔をしないように黙って水を飲んでいた。
姉が出来たと思ったら、ずっと感じていた嫉妬の感情が綺麗に消えてたからだ。
同じ男を愛してるからだろうか。
それとも、同じ元奴隷だからだろうか。
いや、きっとローズがセムネイルの様に凄く優しいからだろう。
「お待たせ~、醤油ラーメン5つと唐揚げと餃子ね~。 あと、これは新しいお客様にサービスのチャーシュー丼だよ~」
テーブルの上にご馳走が並ぶ。
店主1人で切り盛りしているとは思えない提供速度だ。
出来立ての料理に湯気が立ち上り、3人娘の食欲を刺激する。
「リン、ノラ、セリス、待たせてすまなかった。 沢山食ってくれ」
セムネイルが号令を出すと、3人娘達が料理を一斉に食べ始めた。
「いただきまふ! あっちゅ!」 「がるるる、この唐揚げって肉だぞ! 旨い! 」 「2人共、落ち着いて食べなさい。 あ、この餃子っていう料理美味しい! このチャーシュー丼もおいひい!」
リンは果敢にラーメンに挑戦して火傷をしている。 ノラは唐揚げに齧り付き、尻尾が激しく揺れているからご機嫌なのだろう。
セリスは、元貴族らしく丁寧に餃子を食べてその美味しさに感動しているようだ。
まぁ、チャーシュー丼をがっつく姿には元貴族の姿は見えないが。
「ふふ、なんだかいきなり大家族になりましたね」
セムネイルがリンの火傷を治癒魔法で治していると、ローズが急にそんな事を言い始める。
「ん? あぁ、確かに全員俺の妻だから大家族だな。ふははは! お、やはりこのラーメンとやらは旨い!ズズズズ」
それから暫く、楽しい食事が続いた。
◆◇◆
「あぁ……もうお腹いっぱいですぅ……」
「くぅん……俺も腹いっぱい、全部美味しかったぞぉ……」
「あらあら、2人共。 お腹パンパンね♪」
リンとノラは限界まで食事を楽しんだからか、お腹がぷっけりと膨らんでいる。
そのお腹をセリスが楽しそうに突っついていた。
「あ~、食った食った。 本当にこの店は旨いな。 そうだ、ローズ。 城門に居た衛兵に、リンやノラを冒険者ギルドで登録した方が良いと言われたんだが何故か分かるか?」
「そうですね……あまり楽しい話では有りませんがよろしいですか?」
「構わん、頼む」
セムネイルとローズが真剣な話をしている頃、向かい側の席ではリンとノラがうたた寝を始めセリスが優しく頭を撫でていた。
「この街……いえ、このボブムズ王国は特に亜人差別が酷い国なのです。 言いにくい事を言いますと……この国では亜人に人権が有りません」
バキッ! セムネイルの持つ箸がバラバラに砕ける。
「それは……この国だけなのか?」
セムネイルの紅い瞳が暗く濁る。
「いえ、人間の国は基本的に亜人を差別しています。 亜人を奴隷として使うのを推奨しているのが……聖エオルニア教国になります」
(聖エオルニア教国か……コルナの所属する国だったな。 あの糞女神を崇める国か……糞だな)
ローズとセムネイルの話を、セリスは黙って2人の頭を撫でながら耳を傾けていた。
「話を戻します、人権が無い亜人は2種類に別れます。 奴隷か、冒険者のパーティーのメンバーとして登録しているか、です」
「そうか……なる程な。 だから、あの衛兵もあの焼き肉屋も登録登録と言ってたんだな」
セムネイルは己の判断ミスを後悔していた、
もし、広場で悩んだ時に真っ直ぐ冒険者ギルドに行っていれば問題無く食事を取れていたからだ。
それに……リンとノラの涙を見る事も無かった。
「その冒険者のパーティーに登録って事は、リンやノラにもランクのタグが貰えるのか?」
「いえ、あくまでも冒険者の道具という意味合いです。 亜人を冒険者としてギルドに登録した前例を私は知りません。 ですが、可愛い妹達の為です。 前例等作れば良いのです!」
「くっくっくっ、そうか、そうだな。 分かった、ローズありがとう。 俺は分からない事ばかりだ、また色々教えてくれ」
頭を下げるセムネイルを見てローズは慌てふためく。
「そ、そんなセムネイル様! 妻として当然です!」
ローズに抱き締められ、セムネイルとの間に甘い空気が流れる。
「貴方様、リンとノラは完全に眠ってしまいました。 可能でしたら、家の自室で眠らせてあげたいのですが……」
それを遮ったのはセリスだ。
「む、そうだな。 よし、前払いしている宿屋が有る。 其処から家に入るか」
席を立ち、両手にそれぞれリンとノラを抱える。
2人はセムネイルの腕に座り、セムネイルの頭に寄りかかって眠っている。
普通なら、女性を片手づつ運ぶなど不可能だがこの変態に不可能の文字は無い。
軽々と持ち上げ、テーブルの側に立て掛けてあったノラの両手斧とリンの弓は一旦4次元にしまっておく。
「くっくっくっ、リンもノラも良い顔で寝ているな」
「はい♪ 2人のこんな顔が見れるのは貴方様のお陰です♡」
話に付いていけていないのは、ローズだけだった。
「え? ん? セムネイル様? 宿屋に向かって、家に入るってどういう事ですか?」
「くっくっくっ、ローズ付いてこい。 お前の部屋も作ってあるのだ」
「ふふ♪ ローズ姉さん、見たらびっくりしますよ?」
頭に疑問符だらけのローズを連れて、店の出口へ向かう。
「店主、馳走になった。 釣りは要らん、だからまた食わせてくれ」
店を出る前に、店主のタナカに金貨を1枚支払う。
「ありゃ、お兄さん粋だね。 故郷の金持ちを思い出すよ、ふふふ。 私の料理でそんなに幸せそうに眠ってくれたなら本望さ~、いつでもおいで~。 ありがとうございました~」
ローズもセリスも店主に礼をし、店を出た。
外に出ると、歩く人々が両手で抱っこしているリンとノラを見てくるがセムネイルはもうイライラしなかった。
「すー、すー……」 「ん~……がるるる」
自分の腕の中で眠る2人の顔が、とても幸せそうだったからだ。
(明日だ、明日からお前達が奇異な目で見られ無いようにしてやるからな)
セリスとローズを後ろに連れて宿屋に向かうセムネイルは、心中で何かを企んでいた。
※次回の、姉妹との情事は性描写の多々含まれます。
※苦手な方はご注意下さい。
※読まれなくても、話が分かる様には致します。
駆け寄ってきたローズが、項垂れるセムネイルを優しく抱き締める。
「冒険者がギルドに報告してくれたのです。 セムネイル様が飯屋エリアで女の子達を連れて困っていると。 もう大丈夫です、私にお任せ下さい!」
「そうか……すまない、助かる」
頭を優しく撫でると、ローズは嬉しそうに顔を綻ばせた。
「コホンッ! 貴方様、周囲の目がございます。 移動するならお早めに」
セリスに忠告され、立ち上がると3人娘が頬をパンパンにして此方を見ている。
「後で紹介するから、な? 今は待て。 ローズ道案内を頼む。 4人共腹ペコなんだ」
「はい、畏まりました! 此方です!」
ローズはセムネイルの手を取り、3人娘に微笑む。
同じ男を愛する同志に向けた、優しい笑顔だった。
それから暫し歩くと、セムネイルの知っている店に到着する。
今日の朝、ローズと来たラーメン屋だ。
「ここの店主タナカなら、髪色は勿論種族で差別をしたりしません! ゆっくりラーメンを食べましょう!」
「よし、今度こそだ! セリス、リン、ノラ、入るぞ」
「はぃ……」 「ぅん……」 「ほら、2人共。 元気出して!」
セリスに押され、店へと入る。
「いらっしゃいませ~! お好きな席にどうぞ~」
「タナカさん、5名いけるかしら」
「あら、ローズさんいらっしゃい! 勿論だよ~、奥のテーブルなら座れるよ~」
ローズと店主タナカとの会話を聞きながら、セムネイルは安堵していた。
店主タナカはリンとノラをしっかりと見た上で、何も言わず普通に接客してくれるのだ。
こんなに嬉しい事は無かった。
店にいる他の客も誰1人、亜人だと差別する者は居なかった。
「店主、朝も旨かった。 感謝する」
「へ? お兄さん、嬉しい事言ってくれるね。 ありがとうね~」
中年の男、タナカに礼を言ってから奥のテーブルへと座る。
左側にローズとセムネイルが、右側にリンとノラとセリスが座った。
「ふわ~! なんか、凄くいい匂いがしますね!」 「くんくん! 肉か? 他にも匂うぞ! 腹が減ったぞ!」 「ふふ♪ 良かったわ、2人共元気になったわね」
リンとノラが元気になって、セムネイルも嬉しくなる。
「腹が減ってると思うが、先に紹介させてくれ。俺達を助けに来てくれた黒髪の美人はローズ、3人と同じ俺の女だ」
「元奴隷で冒険者ギルドで受付嬢をしてます。 よろしくね」
セムネイルに紹介されたローズは、3人娘に笑顔で元奴隷だと打ち明けた。
「ローズさん……私達と同じなんですね。 森の民エルフ族のリンです。 元奴隷で、セムネイル様の女にして頂きました」
リンはローズの自己紹介に驚きながらも、しっかりと返答した。
「うむ、ちゃんと自己紹介出来て偉いな。 可愛いぞ! リン!」
セムネイルが嬉しそうにリンの頭を撫でる。
「ローズ! よろしくな! お前、いい匂いするから、俺好きだぞ! 誇り高き狼獣人のノラだ! 元奴隷でセムネイルの牝だぞ! 」
「ノラも偉いな! でも、店で大声で喋る事じゃないぞ~?」
元気を取り戻したノラの頭をセムネイルがわしわしと撫でまわす。
「うー! セムネイル! リンにしたみたいに、優しくしてくれ!」
「はいはい、ノラは少し静かにね。 ローズさん、初めてまして。私はセリス、同じく元奴隷です。 旦那様に助けられ、3人共に妻にして頂きました」
セリスは笑顔で自己紹介するが、何処と無く刺が有る言い方だ。
「うん、セリス。確かにそうだが、それならローズもだぞ? だから、ローズと仲良くしろよ?」
「……はい、分かっています。 ごめんなさい、ローズさん」
「あはは……良いのよ。 気持ちは凄く分かるから。 今朝、セムネイル様に女を増やすと言われてからずっと……覚悟してました」
知らない人がこのテーブルを見たら、浮気男の修羅場だと勘違いするだろう。
「何人になろうと、俺はちゃんと抱くし愛すぞ? 安心しろ! ふははははははっ!」
「沢山の方が楽しいです」
「がう! そうだな! 群れを率いる雄は牝を沢山迎えるんだぞ! ローズ! セリス! 」
「ふふ♪ そうね、ありがとう。 仲良くしましょうね、ローズ姉さん」
「姉さん? あぁ~順番的な意味かしら?? ……うん、良い! 可愛い妹が3人も! セムネイル様、何だか凄く嬉しくなってきました!」
ローズが3人娘の頭を撫でまわす。
「あ、あわわ」 「くぅん! くすぐったいぞ! ローズ! 」 「ふふ♪ 私も姉が出来て嬉しいですわ」
「うむ! 4人が仲良く出来そうで良かった。 だが、俺は欲望と狭間の魔王だ。 もっと妻は増えるかもしれんが、よろしく頼む!!」
最低な発言をここまでハッキリ言うのは、世界広しと云えどセムネイルだけだろう。
普通なら、複数の女性達に速攻刺されても不思議では無い。
「よし、腹いっぱい食おう! 好きなの頼め」
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「セムネイル様、実はラーメン以外にも唐揚げとか餃子っていう美味しい料理が有るんですよ?」
セムネイルも知らない料理にワクワクが止まらない。
「は~い、お水ね~。 注文決まったら、呼んでね~」
テーブルに5個水が入ったコップが置かれ、3人娘が恐る恐る口を付ける。
「朝食べて旨かった醤油ラーメンを5つと、その餃子と唐揚げも5ついくか」
「そうですね、皆さん沢山食べそうですし。 タナカさーん、注文お願いしますー!」
ローズが馴れた口調でサクサクと注文する。
「ありがとうローズ。 ここは、朝も薦めてくれたが長いのか?」
「そうですね……私も、この街に来た当初はどこの店も入れてくれませんでした。 髪が黒色ですから」
(そうか……それで、何に困ってるか直ぐに分かったのだな)
「その時に、声を掛けてくれたのがタナカさん何です。 初めて食べるラーメンという料理を食べさせてくれて……それからずっと通ってます」
「そうか……俺も借りが出来たな」
3人娘は、セムネイルとローズの邪魔をしないように黙って水を飲んでいた。
姉が出来たと思ったら、ずっと感じていた嫉妬の感情が綺麗に消えてたからだ。
同じ男を愛してるからだろうか。
それとも、同じ元奴隷だからだろうか。
いや、きっとローズがセムネイルの様に凄く優しいからだろう。
「お待たせ~、醤油ラーメン5つと唐揚げと餃子ね~。 あと、これは新しいお客様にサービスのチャーシュー丼だよ~」
テーブルの上にご馳走が並ぶ。
店主1人で切り盛りしているとは思えない提供速度だ。
出来立ての料理に湯気が立ち上り、3人娘の食欲を刺激する。
「リン、ノラ、セリス、待たせてすまなかった。 沢山食ってくれ」
セムネイルが号令を出すと、3人娘達が料理を一斉に食べ始めた。
「いただきまふ! あっちゅ!」 「がるるる、この唐揚げって肉だぞ! 旨い! 」 「2人共、落ち着いて食べなさい。 あ、この餃子っていう料理美味しい! このチャーシュー丼もおいひい!」
リンは果敢にラーメンに挑戦して火傷をしている。 ノラは唐揚げに齧り付き、尻尾が激しく揺れているからご機嫌なのだろう。
セリスは、元貴族らしく丁寧に餃子を食べてその美味しさに感動しているようだ。
まぁ、チャーシュー丼をがっつく姿には元貴族の姿は見えないが。
「ふふ、なんだかいきなり大家族になりましたね」
セムネイルがリンの火傷を治癒魔法で治していると、ローズが急にそんな事を言い始める。
「ん? あぁ、確かに全員俺の妻だから大家族だな。ふははは! お、やはりこのラーメンとやらは旨い!ズズズズ」
それから暫く、楽しい食事が続いた。
◆◇◆
「あぁ……もうお腹いっぱいですぅ……」
「くぅん……俺も腹いっぱい、全部美味しかったぞぉ……」
「あらあら、2人共。 お腹パンパンね♪」
リンとノラは限界まで食事を楽しんだからか、お腹がぷっけりと膨らんでいる。
そのお腹をセリスが楽しそうに突っついていた。
「あ~、食った食った。 本当にこの店は旨いな。 そうだ、ローズ。 城門に居た衛兵に、リンやノラを冒険者ギルドで登録した方が良いと言われたんだが何故か分かるか?」
「そうですね……あまり楽しい話では有りませんがよろしいですか?」
「構わん、頼む」
セムネイルとローズが真剣な話をしている頃、向かい側の席ではリンとノラがうたた寝を始めセリスが優しく頭を撫でていた。
「この街……いえ、このボブムズ王国は特に亜人差別が酷い国なのです。 言いにくい事を言いますと……この国では亜人に人権が有りません」
バキッ! セムネイルの持つ箸がバラバラに砕ける。
「それは……この国だけなのか?」
セムネイルの紅い瞳が暗く濁る。
「いえ、人間の国は基本的に亜人を差別しています。 亜人を奴隷として使うのを推奨しているのが……聖エオルニア教国になります」
(聖エオルニア教国か……コルナの所属する国だったな。 あの糞女神を崇める国か……糞だな)
ローズとセムネイルの話を、セリスは黙って2人の頭を撫でながら耳を傾けていた。
「話を戻します、人権が無い亜人は2種類に別れます。 奴隷か、冒険者のパーティーのメンバーとして登録しているか、です」
「そうか……なる程な。 だから、あの衛兵もあの焼き肉屋も登録登録と言ってたんだな」
セムネイルは己の判断ミスを後悔していた、
もし、広場で悩んだ時に真っ直ぐ冒険者ギルドに行っていれば問題無く食事を取れていたからだ。
それに……リンとノラの涙を見る事も無かった。
「その冒険者のパーティーに登録って事は、リンやノラにもランクのタグが貰えるのか?」
「いえ、あくまでも冒険者の道具という意味合いです。 亜人を冒険者としてギルドに登録した前例を私は知りません。 ですが、可愛い妹達の為です。 前例等作れば良いのです!」
「くっくっくっ、そうか、そうだな。 分かった、ローズありがとう。 俺は分からない事ばかりだ、また色々教えてくれ」
頭を下げるセムネイルを見てローズは慌てふためく。
「そ、そんなセムネイル様! 妻として当然です!」
ローズに抱き締められ、セムネイルとの間に甘い空気が流れる。
「貴方様、リンとノラは完全に眠ってしまいました。 可能でしたら、家の自室で眠らせてあげたいのですが……」
それを遮ったのはセリスだ。
「む、そうだな。 よし、前払いしている宿屋が有る。 其処から家に入るか」
席を立ち、両手にそれぞれリンとノラを抱える。
2人はセムネイルの腕に座り、セムネイルの頭に寄りかかって眠っている。
普通なら、女性を片手づつ運ぶなど不可能だがこの変態に不可能の文字は無い。
軽々と持ち上げ、テーブルの側に立て掛けてあったノラの両手斧とリンの弓は一旦4次元にしまっておく。
「くっくっくっ、リンもノラも良い顔で寝ているな」
「はい♪ 2人のこんな顔が見れるのは貴方様のお陰です♡」
話に付いていけていないのは、ローズだけだった。
「え? ん? セムネイル様? 宿屋に向かって、家に入るってどういう事ですか?」
「くっくっくっ、ローズ付いてこい。 お前の部屋も作ってあるのだ」
「ふふ♪ ローズ姉さん、見たらびっくりしますよ?」
頭に疑問符だらけのローズを連れて、店の出口へ向かう。
「店主、馳走になった。 釣りは要らん、だからまた食わせてくれ」
店を出る前に、店主のタナカに金貨を1枚支払う。
「ありゃ、お兄さん粋だね。 故郷の金持ちを思い出すよ、ふふふ。 私の料理でそんなに幸せそうに眠ってくれたなら本望さ~、いつでもおいで~。 ありがとうございました~」
ローズもセリスも店主に礼をし、店を出た。
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「すー、すー……」 「ん~……がるるる」
自分の腕の中で眠る2人の顔が、とても幸せそうだったからだ。
(明日だ、明日からお前達が奇異な目で見られ無いようにしてやるからな)
セリスとローズを後ろに連れて宿屋に向かうセムネイルは、心中で何かを企んでいた。
※次回の、姉妹との情事は性描写の多々含まれます。
※苦手な方はご注意下さい。
※読まれなくても、話が分かる様には致します。
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