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第4話 人間の街 ブルムフに到着と腐った冒険者ギルド

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    ダンジョンから外へと出ると、既に日は暮れ辺りは暗闇へと変わっていた。

    (ふん、この程度の闇。 封印の中と比べれば極楽よ。 しかし……どうしたものか)

    セムネイルの腕に、既にコルナは居ない。
  
    前をプリプリと怒りながら、先頭を歩いているからだ。

    「おい、コルナ。 そのブルムフとかいう街までどれ程の距離があるのだ?」

    セムネイルが話し掛けるも、コルナが足を止める事はなかった。

    「もう少しです! もう! もうっ! 私は怒ってるんですからね! 貴方には、とても感謝してるのに! わざわざ、エオルニア様が神敵として指定している極悪非道な魔王を騙るなんて! もうっ!!」

    どうやら、コルナはセムネイルに信用されず有名な極悪非道な魔王の名前を騙ったと思っているようだ。

    主神エオルニアを信仰しているシスターには、タブーとされている冗談として広く知られているのだがセムネイルはそんな事は知るよしもない。

    「だから、本当だと言っているだろうが」

    「嘘です! 確かに伝承通り、紅い珍しい瞳してますけど。 彼の魔王は滅んだ極悪非道な種族、魔族何ですよ? 本当なら、頭に2本の禍々しい角が生えてるんですぅーー!!」

    (やれやれ、面倒臭くなってきたな。 まぁ……街まで送れば、後はいいだろう)

    何度、状況と名前を伝えても聞き入れてもらえない事にセムネイルは辟易していた。

     「分かった分かった、俺は…………セネルだ」

    セムネイルが偽名を絞り出して伝えると、コルナは満面の笑顔で振り向く。

    「やっと、本当の名前を教えて下さったんですね! 改めてよろしくお願いします、セネルさん!」

    「はぁ……よろしく頼む」

    (まぁ、いいか。 早くコルナを送り届け、宿屋か何処かであの女達の治療もせねばな。 くっくっくっ、今から楽しみだ)

    それから2人は他愛のない雑談をしながらブルムフに向かって歩くのであった。

    ◆◇◆

   (ほう……中々大きいな。 俺の知る人間の街より、今の時代はかなり文明が発達しているのか……興味深いな。 昔は、人間は奴隷や使い捨ての兵として神に乱獲されてたからな。 こんな大きな街を造る余裕など無かった……)

    見えてきた人間の街ブルムフは、セムネイルの想像を越えた大きな街だった。
 
 高く聳え立つ石の城壁と、衛兵と思える武装した人間達が立派な城門を守っている。

 ――さん! セネルさん! 聞いてますか?」

 セムネイルの意識が、コルナに呼び戻された。

 「っと、悪い。 聞いてなかった、どうした?」

 「ですから! これから街に入って、冒険者ギルドに報告と苦情に行かないといけません。 一緒に来てくれますよね?」

 (は……? 何故だ? コルナとは、街に入ったら別れるつもりなんだが?)

 セムネイルは苦虫を噛み潰したような顔でコルナを見る。

 「ちなみに、街に入るには銀貨3枚必要ですが。 お持ちなんですかぁ~?」

 コルナが、助けた事を後悔する程にいやらしい顔で聞いてきた。 流石のセムネイルに苛立ちを禁じ得ない。

 (道中に事情を話しても信じなかったのに、都合の良い耳だなコイツ……。 犯すぞ……いや、あんな目にあった少女にそれは酷か)

 「知ってるだろ、持ってない。 だが、俺は魔法で見つからずに入れる。 じゃあ、ここで解散だな。 またな」

 颯爽と城壁へと歩を進めるセムネイルに、コルナが半泣きで止める。

 「ごめんなさいごめんなさい! 調子に乗りました! 私だけの話しだと、信じてもらえないんです! お願いします! 何でもしますから! 街に入るお金も払いますから! 助けてくださぁぁぁい!」

 「はぁ……最初からそう言え。 少し、助けた事を後悔する所だったぞ」

 「ずみまぜぇぇぇん、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

 さっきのは、コルナのちょっとした冗談だったのだろう。

 本気で泣き始めてしまい、焦ったセムネイルはコルナを抱き締めてゆっくりと背中を擦った。

 「嘘だ……さっきのは。 後悔等しておらん。 泣き止め、さっさとその冒険者ギルドとやらに行って飯でも食おう」

 「はぇっ?! は、はい、ぐす……すみません、取り乱しました。 もう、大丈夫です。 い、行きましょう」

 泣き止んだが、顔を真っ赤にしたコルナに手を引かれ街の城門へと向かう。

 辺りは夜、其処に騒ぎながら近付く2人組。

 城門の衛兵達が警戒するのは至極真っ当だろう。

 「止まれ。 ここはボブムズ王国の街が1つ、ブルムフである。 なに用か述べよ」

 2人の衛兵が槍と盾を構え、問い詰めてきた。

 「わ、私達は怪しい者ではありません! 私は、聖エオルニア教国所属のシスター コルナです。 教会からの指示でこの街の冒険者達と今朝、異常の起きたダンジョンに調査に向かいました」

 「確認する……暫し待たれよ」

 コルナの後ろで待つセムネイルは、コルナの臀部にしか目が言っていなかった。

 (ほう……やはり、コルナには白のローブが良く似合う。こう……腰のラインと尻が堪らん)

 セムネイルがそんな変態な事を考えてたいるなど露知らず、コルナは真面目な顔で衛兵達と交渉している。

 「確認した。 失礼をしました、シスターコルナ。 して、同行していた冒険者達は? そちらの男性が同行者ですか?」

 コルナがセムネイルを一瞥して、深呼吸する。

 勇気を絞り出しているのだろう。
 冒険者ギルドでも、同じ報告をするのだから今から覚悟を決めるのは良いことだ。

 そう考えたセムネイルは見守る事にする。

 「いえ、彼は私の恩人です。 同行した冒険者達は……ダンジョンに入るや否や、私を強姦し魔物に殺されたように見せ掛けて……殺そうとしてきました」

 想像もしていなかったシスターの報告に、衛兵達に緊張が走る。

 それもその筈、シスターが所属する聖エオルニア教国とはこの世界最強規模の軍隊を持つ大国だ。

 その大国に所属するシスターに、自分達の街に所属する冒険者達が不貞を働いたのだ。

 最悪、街の住民全て奴隷にされる可能性がある。

 衛兵隊長が息を飲んでから聞き返した。

 「……して、その冒険者達はどうなったのですか?」

 もし生きているなら、八つ裂きにして拷問に掛けてシスターの許しを得る。

 衛兵隊長の頭を埋めるのは、街の住民を守る事だけだった。

 「それに関しては、こちらのセネルさんが助けて下さいました。 冒険者達は全員、死んでいます。 なので、安心して下さい。 ブルムフの街が責を問われる事はありません」

 コルナを言葉を聞いて、衛兵達から安堵の息が零れる。

 「代わりに、こちらのセネルさんを尋問無しに街に入れる事。 冒険者ギルドが私の話を信じず、無下に扱ってきた際のご助力をお願い致します」

 衛兵隊長は一瞬男を見て、その紅い瞳を不気味に思ったが。 そんな事で、街が平和なら断る理由も無かった。

 「仰せのままに、シスターコルナ。 どうぞ、そのままお入り下さい。 冒険者ギルドの件につきましては、何か有れば直ぐに詰所にお越しを。 必ず対処致します」

 「寛大な対応、心より感謝を。 貴方と衛兵の皆さんに我等が主神エオルニア様の御加護を……」

 衛兵達が敬礼している間に、コルナはセムネイルの手を引いて小走りで街へと入った。

 「はぁー、はぁー、緊張しました! よし、私の機転で銀貨3枚も得しましたよ! セネルさん! 」

 「えらくドヤ顔で言ってくるが、元々俺は魔法で入るつもりだったからな? それより、良かったのか? アイツらに言って」

 「い、いいんです! どうせ、冒険者ギルドでも同じ事言うんですもん。 味方を作ってた方が安心ですから」

 当然、本心では無いのだろう。
 セムネイルはコルナの瞳に光る物を見てしまった。

 「その冒険者ギルドとやらは、そんなに酷い所なのか?」

 「え? あ、そうですね……。 ギルドマスターは良い人そうでしたけど、仕事を斡旋されてる受付穣と副ギルドマスターが嫌な感じの人なので……あはは」

 嫌な予感を浮かべながら、コルナの道案内で街中を歩いていく。

 そして、広場にある1軒の建物の前にやってきた。

 街中の建物は木造建築が多く、この大きめの建物も木造だ。

 入り口にある小さな門の様な扉を開け、コルナと中に入る。

 すると、中は酒場の様になっており。
 丸い木の円卓に多くの武装した人間達が食事を楽しんでいた。

 酒や豪快な料理の数々には、空腹の胃を刺激するが今はそれ所では無い。

 コルナとセムネイルが冒険者ギルドに入るや否や、一斉に食事や喧騒を止めて此方を見てきたのだ。

 「ひっ……」

 「大丈夫だコルナ。 俺の側より安全な場所は無い。 着いてこい」

 一時間を置くと、元の騒がしい酒場に戻ったが視線だけは此方を見ている。
 
 セムネイルはそんな事もお構い無しに、コルナを連れて奥にあるカウンターへと向かう。

 カウンターには、綺麗だが何処か嫌な雰囲気の女が座っていた。

 「ちっ、こんな夜中に何の用ですか? 明日に出直せや糞が」

 (話し方が既に腹が立つな)

 「おい、コイツから話がある。 さっさと、ギルドマスターと副ギルドマスターとやらを連れてこい」

 「きゃっ、ちょ、ちょっとセネルさん。 あ、どうも……」

 「はぁ? 何よアンタ、気持ち悪い目しやがって。 誰よ、そのコイツとやら……は?  何よ、アンタ生きてたの」

 (やっぱり、分かってて仕組んだんだな)

 受付嬢の対応に、既にぶちギレそうだが必死にセムネイルは耐える。

 こういうクズでゲスな人間が大嫌いなのだ。

 「え?! あ、貴女知ってて、あんな冒険者達を!? なんて酷い……ギルドマスターを呼んで下さい。 全て報告します」

 「ぷっ、あははは! 出来る訳ねぇじゃん、バーカ! おいアンタ達、コイツらの相手をしてやんな!」

 受付嬢に応える様に、円卓で騒いでいた冒険者達の何組かが武器を持ち近付いてくる。

 「ま、まさか、この人達もあの受付嬢の仲間?! ちょ、誰か、誰か助けて下さい!」

 コルナが席を立ってない冒険者達に助けを求めるが、反応する者は誰も居なかった。

 「そ、そんな……」

 「コルナ、後ろに居ろ」

 「でも、流石のセネルさんでもこの人数は……」

 コルナの言葉に、魔王は嗤う。

 「くっくっくっ、この人数に俺が負けると? 魔神や神々を相手取り、負けなかったこの俺が? あっはっはっはっは! 中々に面白い冗談だ」

 「ぷっ、コイツ頭がイカれてるじゃない。 残念だね、教会の豚。 頼みの綱がこんなので」

 武装した男達はニヤニヤと笑いながら近付く。

 頭のイカれた男を殺すだけで、シスターを死ぬ迄犯せるのだ。 同行した奴等が何処に行ってようと知ったことではない。

 まるで、臨時のボーナスが入ったかのように男達は喜んだ。

 この後の地獄を知らずに。

 「おい、1度だけ警告だ。 今逃げれば赦そう。 しかし、向かってくるなら地獄を見せてやろう……さぁ、どうする?」

 セムネイルから膨大な魔力と殺気が膨れる。

 当然、臨時ボーナスを逃がすまいと冒険者は誰1人として逃げない。

 もし、この受付嬢や冒険者達が凄腕なら、その魔力や殺気がどれ程の物か知り絶望し気絶するだろう。

 しかし、この中にそのような者は居なかった。

 よって、待つのは……地獄だ。

 「踊れ、笑え、契約せし殺戮人形。 俺の手にその刃を宿せ。 痛み、傷み、苦痛の限りを味わえ! 殺戮人形の舞!」
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