双子の最愛も、わからない時はわからない。

シュガーコクーン

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昼、第四合併で。

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「「待っててくれたの!?」」

 昼、俺は圭吾と駄弁るだけで弁当を開いていなかった。

 そこに双子が現れ驚いたように声を上げる。



 そうだと肯定するのは気恥ずかしい。無言を貫こう。

「可愛い」
「ツンデレ」
「「大好き!!」」
「はいはい俺も」

 俺の前の席の椅子を引き、淳平が座る。亮平はその隣の席から椅子を引っ張って来て座る。そして2人が俺の机で弁当を広げ、蓋を開ける。

「…………………亮」
「…………………なに?」
「幻聴聞こえた」
「安心して。俺も聞こえた」
「「……………………え!?」」

 双子が勢いよく俺を向く。

 何と言う不意打ち。

 反応が何もないことに安心するような残念なような気持ちを抱きながら、双子を眺めていた矢先のことだった。

 ここで気付くとか。時間差は狡い。


 俺は己の顔が赤くなるのを自覚していた。


「見るな」
「え、え。……え!?」
「ほんと!?」

 双子の顔も面白いほど赤く染まっていく。



「ねー。俺のこと忘れてね?」



 そうだった。圭吾が居る事を完全に忘れていた。此処は3人だけの空間ではないのを失念していた。

 そんな気持ちが顔に出ていたのだろう。圭吾がひでーとけたけた笑いながら言う。

「取り敢えず第四行けよ。3人で話したらー?」
「そうする」







 この階の端には第四合併教室という、授業でたまに、放課後は常に吹奏楽が使っている特別教室がある。

 そこに入って扉を閉めた途端に双子に苦しいほど抱き締められる。

「「夢じゃないよね!?」」
「…………じゃねーよ」

 体に巻き付く腕の力が更に強くなる。

「ぐぇ」

 好きな人からの抱擁であっても苦しいものは苦しい。

 離して欲しくて腕を軽く叩いても、決して緩まない。



 どうしたもんかと思案していると、顔に暖かい水滴が落ちて来た。

「ないてんの?」

 更にぽろぽろと溢れた水滴が顔に当たる。

「「大好き」」
「俺も」
「「うん。ちゃんと言って?」」

 少し調子に乗ってやいないだろうか。

 半目になった。


 でも、言葉にしていないのは俺だから。双子が欲しがっている言葉をはっきりと音にする。

「好きだよ。2人のことが好きだ」










 晴れて、俺と双子は相思相愛の恋人となった。
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