双子の最愛も、わからない時はわからない。

シュガーコクーン

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聞かないと決めた朝

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「「そーすけ君!」」
「……え」

 自分の迂闊さ故に付き合うことになった2人が自分の乗り込んだ電車の中に居た。麗しい微笑が呆然としている俺としては憎たらしい。

「何でいるんいるんだよ」
「「え? 恋び」」

 とんでもない言葉が飛び出そうとしていた気がして風を切る音が聞こえそうなほど素早く両手で双子の口を塞ぐ。運動神経底辺な俺の底力を見た。



 双子をじっとりと睨みつける。すると何故か双子は捨てられた子犬のような目をするではないか。

「そんなにいや?」
「何がだよ?」
「「恋人」」

 驚いてまじまじと双子を見る。

「いや、ここは公共の場だぞ。こんなところで声を大にして言うのは可笑しいだろう」
「「じゃあ、嫌じゃない?」」

 そこを突くか。思わず黙る。

「ねえねえ、聞こえてるでしょ」
「嫌じゃないの?」

 沈黙に徹する。

「「黙ってるなら肯定って思っちゃうからね?」」

 沈黙を選択する。



 双子も沈黙した。


 そっと見上げると、2人は若干顰めっ面だった。でも顔が真っ赤だ。

「「待って見ないで」」

 揃って片手で顔を隠し俺から顔を背ける。それでも耳までもが真っ赤なので隠せているようで隠せていない。

「え、照れてる?」
「「…………」」
「耳赤いぞ?」
「「……………………」」

 形勢逆転、今度は双子がだんまりを決め始めた。


 そして小声で何かを言い始める。

「いや、だってさぁ」
「ねぇ。セコいことした自覚あるし」
「それで嫌じゃないとかさ」
「ズルいよね」

 不覚にも、ぼそぼそと言い訳する姿を可愛いと思ってしまった。


「「何でかって、聞いてもいい?」」
「ん? …………綺麗だし、性格も悪そうではないし、性に拘りはないしな。お前らのことまだ全然知らないけど、嫌だとは思わないかな」

 双子はお互いを見やって頷く。

 俺の耳にそれぞれ顔を寄せると息ぴったりに囁きだす。


 それはおかしくなってしまいそうなほどに甘い告白。


「もうさ、2人と付き合うことに抵抗感持ってない時点で嬉しいし好き」
「普段あまり人と関わらない方なのに、いざという時ちゃんと言えるのも格好良くて好き」
「俺たちの気持ちをわかってくれるところも好き」
「そして押し付けて来ないところもね」
「人にあんまり興味なくて、俺たちにも普通に接しているところも好き」
「天然気味なところも可愛くて好き」
「改めて言うね」
「絶対に逃がさないから」
「覚悟してね」
「俺たちのこと」
「好き、に変えてあげるよ」
「「宗介、大好きだよ」」

 両耳から交差する、声に、言葉に、脳がくらくらとする。






 電車から降りて、頭がクリアになってきて思う。

「待て。何で俺の乗る時刻列車を把握してんだよ」
「「ん?」」

 双子が微笑しながら軽く首を傾げる。

 周りの生徒達が見惚れて呆然としてしまうほど美しいものに違いないのだが、背筋がゾクリとする。


 気になる。非常に気になる、が。これ以上は聞くなと心の中のどこかの俺が告げたので、先程の遣り取りはなかったものとする。なかったのだから何も問題はない。

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