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水が切れた放課後
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水筒が空になった。わかっていてもつい水筒を振って水の音がしないか確認する動作をしてしまう。
「はあ」
放課後には殆ど空になる程しか入れられない水筒。毎日のように汲みにいかなければならない水筒。
面倒この上ない。
けれども飲まずに2時間以上の部活を乗り切れる訳もなく。毎日せっせと汲みに行くわけだが。
クソ遠い。
3階にある自分の教室の隣が部活を行う部屋なのだが、下駄箱とは反対側だ。そしてウォーターサーバーは下駄箱の端と体育館の前にしかない。
どちらも同じくらい遠くて、時間が掛かる。でも早く部活をやりたいし、地味に疲れるしで憂鬱なのだ。
自販機をひとつ素通りし、一階の廊下の角を曲がる。此方にある自販機二つの方が好みなのだ。
カルピスにしようか、それとも葡萄果汁50%のジュースにしようか。迷いに迷って、量のあるカルピスにしようと小銭を入れかけた時。
「淳平君! 好きです! 付き合ってくださいっ!!」
「やだ」
「だよねー」
小銭を落としかけた。
俺の心臓がばくばくと音を立てる。
小銭をなくす可能性よりも、3人に気づかれる可能性に慄いた。
「えっ! な、なんでですか!? ちゃんとわかってますよ私! 2人のこと見分けて、別人だとわかって言っています!!」
「「だから?」」
「…………え?」
深い溜息が此方まで聞こえた。
「よっぽど容姿に自信があるみたいだね?」
「「でもごめんね。それ以前の問題だから」」
荒々しく去る足音。
しかしその後に双子が続かない。
「飲み物買う?」
「そうしよ」
これは非常に不味いのではないだろうか。
でも逃げ道のないこの場所では俺は何もできるはずもなく。
「「え」」
「あ」
案の定鉢合わせた。
「あ、あー……。…………えっと、災難だったな」
「うん」
「変なの聞かせてごめんね」
告白されていた側に申し訳なさそうにされるのは気まずい。
「いや、あんな結局容姿しか好きになってない子に告白されてたお前らの方が大変だったろ。しかも頓珍漢なこと言ってたしな。気を遣わんでくれ。……困る」
「「………………」」
何か変なことを言ってしまったのか、双子が顔を見合わせる。
「何で頓珍漢だと思ったの?」
いや不思議そうにされても。
「だっていくら双子だからってさ、髪型とか区別つくようにしようと思えばできるのにしてないだろ? どうしてかはしらんけどさ。双子にとって、見分けられるということはそこまで重要じゃないってことだろ?」
双子は珍しくぽかんと口を開け呆然としている。
俺は双子の思っていることと違うことを言ってしまったのだろうか。だとしたらとんだ勘違い野郎だ。
え。本当にそうだとしら言い表せないくらいには恥ずかしいのだが。
「…………違った?」
「「違わない!!」」
よかった。
「わかってくれたのが初めてだったから」
「びっくりしてただけ」
2人がふわりと微笑む。初めて無防備な姿を見た気がした。
「「ありがとう」」
「お、おう」
先程とは違う恥ずかしさが込み上げて視線を逸らす。
「「俺達と付き合って」」
「お、おう。………………おう?」
慌てて見た双子の表情は凄艶さを帯びており、どこか無防備な雰囲気は彼方へと消え去っていた。
「言ったからね?」
「違えたらいけないよ?」
「「絶対に逃がさないから」」
「はあ」
放課後には殆ど空になる程しか入れられない水筒。毎日のように汲みにいかなければならない水筒。
面倒この上ない。
けれども飲まずに2時間以上の部活を乗り切れる訳もなく。毎日せっせと汲みに行くわけだが。
クソ遠い。
3階にある自分の教室の隣が部活を行う部屋なのだが、下駄箱とは反対側だ。そしてウォーターサーバーは下駄箱の端と体育館の前にしかない。
どちらも同じくらい遠くて、時間が掛かる。でも早く部活をやりたいし、地味に疲れるしで憂鬱なのだ。
自販機をひとつ素通りし、一階の廊下の角を曲がる。此方にある自販機二つの方が好みなのだ。
カルピスにしようか、それとも葡萄果汁50%のジュースにしようか。迷いに迷って、量のあるカルピスにしようと小銭を入れかけた時。
「淳平君! 好きです! 付き合ってくださいっ!!」
「やだ」
「だよねー」
小銭を落としかけた。
俺の心臓がばくばくと音を立てる。
小銭をなくす可能性よりも、3人に気づかれる可能性に慄いた。
「えっ! な、なんでですか!? ちゃんとわかってますよ私! 2人のこと見分けて、別人だとわかって言っています!!」
「「だから?」」
「…………え?」
深い溜息が此方まで聞こえた。
「よっぽど容姿に自信があるみたいだね?」
「「でもごめんね。それ以前の問題だから」」
荒々しく去る足音。
しかしその後に双子が続かない。
「飲み物買う?」
「そうしよ」
これは非常に不味いのではないだろうか。
でも逃げ道のないこの場所では俺は何もできるはずもなく。
「「え」」
「あ」
案の定鉢合わせた。
「あ、あー……。…………えっと、災難だったな」
「うん」
「変なの聞かせてごめんね」
告白されていた側に申し訳なさそうにされるのは気まずい。
「いや、あんな結局容姿しか好きになってない子に告白されてたお前らの方が大変だったろ。しかも頓珍漢なこと言ってたしな。気を遣わんでくれ。……困る」
「「………………」」
何か変なことを言ってしまったのか、双子が顔を見合わせる。
「何で頓珍漢だと思ったの?」
いや不思議そうにされても。
「だっていくら双子だからってさ、髪型とか区別つくようにしようと思えばできるのにしてないだろ? どうしてかはしらんけどさ。双子にとって、見分けられるということはそこまで重要じゃないってことだろ?」
双子は珍しくぽかんと口を開け呆然としている。
俺は双子の思っていることと違うことを言ってしまったのだろうか。だとしたらとんだ勘違い野郎だ。
え。本当にそうだとしら言い表せないくらいには恥ずかしいのだが。
「…………違った?」
「「違わない!!」」
よかった。
「わかってくれたのが初めてだったから」
「びっくりしてただけ」
2人がふわりと微笑む。初めて無防備な姿を見た気がした。
「「ありがとう」」
「お、おう」
先程とは違う恥ずかしさが込み上げて視線を逸らす。
「「俺達と付き合って」」
「お、おう。………………おう?」
慌てて見た双子の表情は凄艶さを帯びており、どこか無防備な雰囲気は彼方へと消え去っていた。
「言ったからね?」
「違えたらいけないよ?」
「「絶対に逃がさないから」」
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