双子の最愛も、わからない時はわからない。

高校受験後のある日

「アロマンティック・アセクシュアルな人が恋人の友達って、こんな安心感得られることなかなかないよね」
「最初嘘だと思ってたよ」

　特にお前らのような焼き餅焼きには安心しかない奴だろうな。









　高校受験を無事終えた春休み、仲の良い同じ高校に通うこととなった圭吾と遊び終えた時。

「なあ、俺んち来ねえ？」
「んあ？　急に大丈夫なのか？」
「ああ」

　遊んでいる間ずっと、圭吾がどこか硬いと思っていた。

　多分、何かを話そうとしている。恋人ができたんだぜ、とか言う軽い話ではなくて俺ともう話せなくなるかもしれないと思っている、圭吾にとっての重大な話。

「なら行くよ」
「ああ」


　ゲームの話でもしようかと思ったが、圭吾は話を終えないと安心できないのだろう。

　俺たちは静かに住宅街を歩いた。



「ごめん、オレンジジュースしかねーわ」
「健全で結構」

　ここで普段なら何目線だよ！　とツッコミでも入る。

「俺手土産持ってきてないし、適当でいいんだよ」
「そうか」
「そうだよ」

　圭吾も床に座る。

　俺からは何も喋らない。


　ただ、待つ。





「俺さぁ、アロマンテック・アセクシュアル」
「そう」
「………………」
「………………」
「………………それだけ……？」

　もっと言ってほしいのか？　何も言うことなんてないのだが。

　いや、あるか。

「俺パンセクシュアル」
「……………………俺に合わせて言ってる？」
「んなわけあるか」
「そーか」

　黙り込んだ圭吾は顔を俯けた。



「中2ん時さぁ、軽く友達にさぁ、俺が恋愛感情とか性欲とか持てないヤツだったらどうする？　って聞いたんだよ。そしたらさぁ、ゲラゲラ笑ってさぁ、ありえねぇって」

　声が震えていることには気づいていない振りをして。何で顔を俯けているのかも気づいていない振りをして。

「そうか」

　それだけを言った。隣に座り手を握った。


　弱々しく握り返され俺も顔を俯けた。