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レルーロと書の賢者
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空間を余す所なく漂う、インクの匂いが好きだ。
魔術と魔術インクの相性が良くないと魔術書は書けない為、多種多様なインクがあり、それに伴い匂いも違う。しかしぶつかると混ざり合うのではなく互いに消し合うらしく、臭いに対する不愉快さは感じない。
本は人生において絶対に必要な物だと思っている。
本は知らない世界への扉だ。
知らないことへの興味への、行動への。
本は心を支える為の支柱だ。
相手への共感という名で己を肯定する為の。
本は心を豊かにする肥料だ。
想像という未知の世界で己の世界に色を差す。
前は本を読む以外にすることがなかったから読んでいた、そんな感覚だったが実際は違ったようで、エフィーニアは心に余裕ができた途端とてつもなく本を読みたいという欲求に駆られた。そしてこの大図書館、レルーロに連れて来て貰ったのだ。
静寂が支配する筈のレルーロで、水が跳ねる音が耳に届いた。
「今、何か聞こえた?」
「うん? 何も聞こえなかったよ。…………何か聞こえたのかい?」
「…………ううん、多分気のせいだから大丈夫」
「些細なことでいいから、異変を感じたらどんな時でもすぐに言いなさい」
「はーい」
それからすぐは本だけでなく現実にも意識を向けようと努力していたが、次第に本の中だけに意識が向かうようになっていった。
誰かと隣り合って温もりを分かち合いただ静かに本を読む。そんな贅沢な時間は久しぶりだった。
「こうして一緒に座って本を読むの、楽しいね」
「…………うん」
「あれ、そう思ってるの私だけ?」
「…………いや、多分違うと思う……。心がじんわりするんだけど、それをなんて言うのか私にはわからなかったんだ」
「じゃあ、分かってよかったね」
「うん」
どんな表情をしたらいいのかわからないのか、ディアノールは口をもにゅもにゅと動かしている。
そして暫くの沈黙後。再びディアノールは口を開く。
「昔、私は心を持たない世界の人形なのだと言われたんだ」
それはとても言いづらそうに発せられた。先程の感情を何処へ置いてきたのか、表情はごっそりと削げ落ち、瞳だけがただ不安定に揺れている。
しかしそんなことを言われても。私に何かできる訳ではないというのに。
「言われたから?」
「え?」
「そう言われたと私に言って、私にどうしてほしいの?」
「…………わからない」
「んーー、少なくともね。私はディアノールは人形じゃないと言い切るよ。その言われた言葉が心に残ってるってことは、その言葉気にしてるんでしょ?傷ついたんでしょ?なら感情あるでしょ? 心あるでしょ?」
「…………そう、なのかな」
「そう。ディアノールはただ知らない感情が多いだけなんだよ。大丈夫。ちゃんと感情はあるよ」
私は本を置き、ディアノールを抱きしめ心臓に耳を澄ます。とくん、とくん。人形などありえないのだ。
「ん。エフィーニア、心がじんわり温かく、でもきゅってなるんだ。どう表せばいいのかな」
本人ではないのだから細かく気持ちがわかるわけがない。
「どう表す、とかじゃなくて。今は多分、ありがとう、って感謝の気持ちを伝えるべき場面かな」
感謝の言葉を強請っている嫌なヤツにしか聞こえないな、と我ながら思った。
ふわりと体が軽くなる感覚とともに、波の音が聞こえる。
お互いに読書を再開してそんなに経っていない時だった。
「また聞こえる。ちょっと違うけど」
「うん、私も聞こえる」
「ディアノールも!?」
「うん。………………なんだろうね、これ」
眼光が鋭く、先程の危うさは嘘のように消え去っていた。
「え、ディアノールでもわからないの?」
「ご主人様…………」
ふにゃりと眉を下げるディアノールの姿に、主に失望されないない為に必至なのに失敗してどうしようと狼狽える大型犬が被る。無性に笑いたくなるのは何故だろう。
やっとディアノールが元に戻った。
「私でも、全てを知っているわけではないんだよ? 寧ろ知らない事だらけなんだからね?」
「そうなの?」
「うん、…………ごめんね」
「いやディアノールが謝る必要なんてないから」
「嫌いになった?」
私の脳内で、「嫌いになった?」が繰り返される。
10回目、漸く言われた事を理解した。
「ーーーーは? 私、ディアノールのこと特別だって言ったよね」
「う、うん」
「なのに、嫌いになるなんて思ってるの?」
「…………なってしまうかもしれない」
「ならないから」
伏せられた顔を両手で包み込み、強引にこちらに向ける。
目を合わせ言い聞かせるつもりで言う。
「ならないから」
「………………」
「ならないから」
「………………うん」
「わかったならよし!」
笑顔を向けると、ディアノールの頬も緩む。
「ディアノールは顔を潰されても美人さんだね」
可愛い。
ディアノールの頬を優しく撫でる。するとエフィーニアの手をそっと握り、さらに己へと擦り付ける。
たとえ高身長の外見二十代である男性であろうが、細身で美人だったらなんの問題もなく、寧ろギャップ萌えを引き起こす。
可愛い。
「可愛いっ!」
「エフィーニア!?」
「あーもう可愛すぎ。美人で可愛いって最強じゃない!?」
可愛すぎてたまに声が漏れてしまうほどに可愛いのだ。ギャップ萌え、恐るべし。
「エフィーニアにはかっこいいって言われたい…………」
「かっこいいのはいつも。プラス可愛いだよ」
「そうなのかい?」
頬を染めてならいいのかな、と呟いている。
ぱしゃん、と一際大きく水が跳ねる音がした。
「なんか忘れるなよって言われてる気分」
「私は忘れていなかったのに?」
「私は忘れてた」
しゃらんと空気が変わり、謎の巨大が姿を現した。
目が離せないほどの存在感を放っており、しかし周りを騒然とさせるものではなく静寂を齎すものであるとわかる。
柔らかそうな四肢を持ち、背中に鈍く光る強固な甲羅を持つ生き物。
「いや亀なんかい!」
見た目は完全に亀だ。ただ極端に大きいだけで。
全体を見ることができないほど大きな亀の目が此方を向く。私を見たのかディアノールを見たのかはその目の大きさから捉えることができなかったが、自分が目を合わせてしまったのだと思った。
亀はゆったりと旋回して泳ぎ、何度か本を突く。暫くして満足したのか書庫を出て行く。はずだった。
亀の首に一瞬で縄が掛かる。ぎりぎりと締めるその縄の先を辿る。
見なかったことにするのはありだろうか。
髪は漆黒だが、つい最近会ったばかりの人の顔を見間違えたりはしない。あれは紛れもなくハールラトさんである。
「吐けよ」
はっとするような晴れた空色の瞳が青く青く燃えている。
「食った文献、吐けよ」
冴え冴えする眼差しで亀に向かって発せられた言葉の意味は、理解不能だった。
「ハ、ハールラトさん?」
「あぁ?」
眼差しは鋭すぎるまま此方を振り向かれたため私は一歩下がってしまう。
「今お前達に構ってやる暇はないからな」
「ど、どうされたのですか?」
「ほお。それを聞くか」
知り合いが奇行に走っているのに聞かずにいられるか。
「こいつはな、僕の領域の書庫に現れたんだよ」
「はあ」
「そしてあろうことか100年掛けて手に入れた文献を食らいやがった」
「それはとてもじかんとてまがかかっているのですね」
「ああ。ーーーーだから吐かせる」
自分の想像した内容に自主規制をかける。
頭を振り浮かべた映像を振り払おうとするがあまり効果がなかった。
「もう消化されているのでは……」
「大丈夫だ、まだ2時間も経っていない。固形で残っているハズなんだよ。だから絶対に吐かせる」
「…………吐かせるのは決定なのですね」
美しすぎる笑みが恐ろしい。
「せめて外でお願いしますね」
「当たり前だろ」
縄を思い切り引っ張って亀を連れて出て行くハールラトさんを、ディアノールと二人遠い目で見送った。
亀の巨大が超えていくごとに空気が元に戻っていくことを肌で感じた。尾の部分までが消えると何事もなかったように空間が元に戻り、やっと気を緩める。
「あれってなんだったの?」
「あれは書の賢者と言われる竜だよ」
「竜?亀じゃなくて?」
「うん?かめってなんだい?」
「あれ、そもそも亀が存在しないという……。あの形の生き物が前の世界にもいて、亀っていう名前がついてたんだよ」
「へぇ。あれは本の知識を糧に生きる竜で、愉快なことが好きなものだと聞いたことがある。食事は己の魔術で知識を写しとってそれを食べるのに、稀に魔術を使わずその本の文字をそのまま食べてしまうことがある、と」
「もしかして本好きの天敵だった?」
今更ながら、この書庫の本達が害されていないかと心配になってしまった。
「いや、寧ろ一生の内に一度は会ってみたいなどと言われているようだよ。書庫の賢者はあの水飛沫で、祝福を受ける者がその時持っている本の知識を身に染み込ませる祝福をくれるんだ」
「………………」
エフィーニアは無言で今手に持つ本に視線を向け、その後ディアノールの本も見つめる。
『精霊・魔物・妖精・竜の鳴き声全集』
『不器用さんでもあら簡単! 女性の素敵な髪の結び方~初級編~』
なんとなく、この御伽噺のような世界にどんな生き物がいるのか気になって手に取っただけなのに。いやそんな理由であってももっとマシな本があったと思う。
「やり直し! やり直しを求む!!」
「無理じゃないかな……」
「ディアノールはそれでいいの!?」
何故女性。エフィーニアよりディアノールの方が良くないだろう。せめて男性なら自身にできただろうに使い道がないし、何より何故それを読もうと思ったのだと訊ねたい。
「うん。だってエフィーニアにやってあげられるようになったんだよ?」
「え、私のため?」
もじもじとしながら頷かれる。
「迷惑だったかな」
「全然。めっちゃ嬉しい、ありがとう! 戻ったらやってね?」
「ああ」
この他に何と言えと。
魔術と魔術インクの相性が良くないと魔術書は書けない為、多種多様なインクがあり、それに伴い匂いも違う。しかしぶつかると混ざり合うのではなく互いに消し合うらしく、臭いに対する不愉快さは感じない。
本は人生において絶対に必要な物だと思っている。
本は知らない世界への扉だ。
知らないことへの興味への、行動への。
本は心を支える為の支柱だ。
相手への共感という名で己を肯定する為の。
本は心を豊かにする肥料だ。
想像という未知の世界で己の世界に色を差す。
前は本を読む以外にすることがなかったから読んでいた、そんな感覚だったが実際は違ったようで、エフィーニアは心に余裕ができた途端とてつもなく本を読みたいという欲求に駆られた。そしてこの大図書館、レルーロに連れて来て貰ったのだ。
静寂が支配する筈のレルーロで、水が跳ねる音が耳に届いた。
「今、何か聞こえた?」
「うん? 何も聞こえなかったよ。…………何か聞こえたのかい?」
「…………ううん、多分気のせいだから大丈夫」
「些細なことでいいから、異変を感じたらどんな時でもすぐに言いなさい」
「はーい」
それからすぐは本だけでなく現実にも意識を向けようと努力していたが、次第に本の中だけに意識が向かうようになっていった。
誰かと隣り合って温もりを分かち合いただ静かに本を読む。そんな贅沢な時間は久しぶりだった。
「こうして一緒に座って本を読むの、楽しいね」
「…………うん」
「あれ、そう思ってるの私だけ?」
「…………いや、多分違うと思う……。心がじんわりするんだけど、それをなんて言うのか私にはわからなかったんだ」
「じゃあ、分かってよかったね」
「うん」
どんな表情をしたらいいのかわからないのか、ディアノールは口をもにゅもにゅと動かしている。
そして暫くの沈黙後。再びディアノールは口を開く。
「昔、私は心を持たない世界の人形なのだと言われたんだ」
それはとても言いづらそうに発せられた。先程の感情を何処へ置いてきたのか、表情はごっそりと削げ落ち、瞳だけがただ不安定に揺れている。
しかしそんなことを言われても。私に何かできる訳ではないというのに。
「言われたから?」
「え?」
「そう言われたと私に言って、私にどうしてほしいの?」
「…………わからない」
「んーー、少なくともね。私はディアノールは人形じゃないと言い切るよ。その言われた言葉が心に残ってるってことは、その言葉気にしてるんでしょ?傷ついたんでしょ?なら感情あるでしょ? 心あるでしょ?」
「…………そう、なのかな」
「そう。ディアノールはただ知らない感情が多いだけなんだよ。大丈夫。ちゃんと感情はあるよ」
私は本を置き、ディアノールを抱きしめ心臓に耳を澄ます。とくん、とくん。人形などありえないのだ。
「ん。エフィーニア、心がじんわり温かく、でもきゅってなるんだ。どう表せばいいのかな」
本人ではないのだから細かく気持ちがわかるわけがない。
「どう表す、とかじゃなくて。今は多分、ありがとう、って感謝の気持ちを伝えるべき場面かな」
感謝の言葉を強請っている嫌なヤツにしか聞こえないな、と我ながら思った。
ふわりと体が軽くなる感覚とともに、波の音が聞こえる。
お互いに読書を再開してそんなに経っていない時だった。
「また聞こえる。ちょっと違うけど」
「うん、私も聞こえる」
「ディアノールも!?」
「うん。………………なんだろうね、これ」
眼光が鋭く、先程の危うさは嘘のように消え去っていた。
「え、ディアノールでもわからないの?」
「ご主人様…………」
ふにゃりと眉を下げるディアノールの姿に、主に失望されないない為に必至なのに失敗してどうしようと狼狽える大型犬が被る。無性に笑いたくなるのは何故だろう。
やっとディアノールが元に戻った。
「私でも、全てを知っているわけではないんだよ? 寧ろ知らない事だらけなんだからね?」
「そうなの?」
「うん、…………ごめんね」
「いやディアノールが謝る必要なんてないから」
「嫌いになった?」
私の脳内で、「嫌いになった?」が繰り返される。
10回目、漸く言われた事を理解した。
「ーーーーは? 私、ディアノールのこと特別だって言ったよね」
「う、うん」
「なのに、嫌いになるなんて思ってるの?」
「…………なってしまうかもしれない」
「ならないから」
伏せられた顔を両手で包み込み、強引にこちらに向ける。
目を合わせ言い聞かせるつもりで言う。
「ならないから」
「………………」
「ならないから」
「………………うん」
「わかったならよし!」
笑顔を向けると、ディアノールの頬も緩む。
「ディアノールは顔を潰されても美人さんだね」
可愛い。
ディアノールの頬を優しく撫でる。するとエフィーニアの手をそっと握り、さらに己へと擦り付ける。
たとえ高身長の外見二十代である男性であろうが、細身で美人だったらなんの問題もなく、寧ろギャップ萌えを引き起こす。
可愛い。
「可愛いっ!」
「エフィーニア!?」
「あーもう可愛すぎ。美人で可愛いって最強じゃない!?」
可愛すぎてたまに声が漏れてしまうほどに可愛いのだ。ギャップ萌え、恐るべし。
「エフィーニアにはかっこいいって言われたい…………」
「かっこいいのはいつも。プラス可愛いだよ」
「そうなのかい?」
頬を染めてならいいのかな、と呟いている。
ぱしゃん、と一際大きく水が跳ねる音がした。
「なんか忘れるなよって言われてる気分」
「私は忘れていなかったのに?」
「私は忘れてた」
しゃらんと空気が変わり、謎の巨大が姿を現した。
目が離せないほどの存在感を放っており、しかし周りを騒然とさせるものではなく静寂を齎すものであるとわかる。
柔らかそうな四肢を持ち、背中に鈍く光る強固な甲羅を持つ生き物。
「いや亀なんかい!」
見た目は完全に亀だ。ただ極端に大きいだけで。
全体を見ることができないほど大きな亀の目が此方を向く。私を見たのかディアノールを見たのかはその目の大きさから捉えることができなかったが、自分が目を合わせてしまったのだと思った。
亀はゆったりと旋回して泳ぎ、何度か本を突く。暫くして満足したのか書庫を出て行く。はずだった。
亀の首に一瞬で縄が掛かる。ぎりぎりと締めるその縄の先を辿る。
見なかったことにするのはありだろうか。
髪は漆黒だが、つい最近会ったばかりの人の顔を見間違えたりはしない。あれは紛れもなくハールラトさんである。
「吐けよ」
はっとするような晴れた空色の瞳が青く青く燃えている。
「食った文献、吐けよ」
冴え冴えする眼差しで亀に向かって発せられた言葉の意味は、理解不能だった。
「ハ、ハールラトさん?」
「あぁ?」
眼差しは鋭すぎるまま此方を振り向かれたため私は一歩下がってしまう。
「今お前達に構ってやる暇はないからな」
「ど、どうされたのですか?」
「ほお。それを聞くか」
知り合いが奇行に走っているのに聞かずにいられるか。
「こいつはな、僕の領域の書庫に現れたんだよ」
「はあ」
「そしてあろうことか100年掛けて手に入れた文献を食らいやがった」
「それはとてもじかんとてまがかかっているのですね」
「ああ。ーーーーだから吐かせる」
自分の想像した内容に自主規制をかける。
頭を振り浮かべた映像を振り払おうとするがあまり効果がなかった。
「もう消化されているのでは……」
「大丈夫だ、まだ2時間も経っていない。固形で残っているハズなんだよ。だから絶対に吐かせる」
「…………吐かせるのは決定なのですね」
美しすぎる笑みが恐ろしい。
「せめて外でお願いしますね」
「当たり前だろ」
縄を思い切り引っ張って亀を連れて出て行くハールラトさんを、ディアノールと二人遠い目で見送った。
亀の巨大が超えていくごとに空気が元に戻っていくことを肌で感じた。尾の部分までが消えると何事もなかったように空間が元に戻り、やっと気を緩める。
「あれってなんだったの?」
「あれは書の賢者と言われる竜だよ」
「竜?亀じゃなくて?」
「うん?かめってなんだい?」
「あれ、そもそも亀が存在しないという……。あの形の生き物が前の世界にもいて、亀っていう名前がついてたんだよ」
「へぇ。あれは本の知識を糧に生きる竜で、愉快なことが好きなものだと聞いたことがある。食事は己の魔術で知識を写しとってそれを食べるのに、稀に魔術を使わずその本の文字をそのまま食べてしまうことがある、と」
「もしかして本好きの天敵だった?」
今更ながら、この書庫の本達が害されていないかと心配になってしまった。
「いや、寧ろ一生の内に一度は会ってみたいなどと言われているようだよ。書庫の賢者はあの水飛沫で、祝福を受ける者がその時持っている本の知識を身に染み込ませる祝福をくれるんだ」
「………………」
エフィーニアは無言で今手に持つ本に視線を向け、その後ディアノールの本も見つめる。
『精霊・魔物・妖精・竜の鳴き声全集』
『不器用さんでもあら簡単! 女性の素敵な髪の結び方~初級編~』
なんとなく、この御伽噺のような世界にどんな生き物がいるのか気になって手に取っただけなのに。いやそんな理由であってももっとマシな本があったと思う。
「やり直し! やり直しを求む!!」
「無理じゃないかな……」
「ディアノールはそれでいいの!?」
何故女性。エフィーニアよりディアノールの方が良くないだろう。せめて男性なら自身にできただろうに使い道がないし、何より何故それを読もうと思ったのだと訊ねたい。
「うん。だってエフィーニアにやってあげられるようになったんだよ?」
「え、私のため?」
もじもじとしながら頷かれる。
「迷惑だったかな」
「全然。めっちゃ嬉しい、ありがとう! 戻ったらやってね?」
「ああ」
この他に何と言えと。
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