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あなたは僕の稲妻
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僕は気弱でいつもおどおどしている。
だからか、小学校ではいつも虐められていた。
なんでかな。
どうしても、おどおどしちゃう。
直そうと思っても、できないんだよね。
自分の意思で自分の体を制御しきれない。
僕は中学校に上がったら何か変わるのではないかと、漠然とした希望を抱いている。
そんなことあり得ない。
夢の話。
わかってる。
でも。
誰も助けてくれない。
だから縋れるものは、こんな、ちっぽけで、微かな、希望しかない。
縋っていなければましだったのだろうか。
案の定何も変わらなかった。
大人に相談しようとは絶対に思わない。
小学校では一度、勇気を振り絞って担任の先生に相談したことがある。
泣きそうになりながら、いや若干泣きながら、つっかえつっかえになっても最後まで話し切った。
なのに、僕に与えられたのは冷たい現実。
いじめなんてこんなに良い子達ばかりのクラスではありえないと取り合ってもらえなかった。
本当にそう思っていたのか、面倒事に首を突っ込みたくなかったのかはもうわからない。
あるのは闇に浸ろうとしていた僕が一気に闇に突き落とされたという事実だけ。
母さんは父さんが死んでから必死に働いてくれていて、心配をかけたくない僕にはとてもじゃないが相談することができない。
でも、母さんだけは信頼してる。
何度もやめてくれと声をあげそうになった。
しかし言ってしまったらもっと暴力がエスカレートすると知っている僕は声を上げることをしない。
あぁ、僕はなんて、なんて弱いんだろう。
僕は部屋で泣いた。
二年になっても僕は変わらない。
そう思ってた。
「はっ、情けねー奴らだな。んな普通のヤツに当たってはずかしくねぇのかよ。ちいせぇなぁ」
闇の中、一筋の光ーーーー否、稲妻が走った。
「ああ!? なんだと!!」
「イタイ目見せてやる!!」
奴らの標的が乱入者へと向かい、拳を振るう。
しかしそのパンチが当たる前にソイツの鳩尾に風を切る音とともにパンチが食い込み体が軽く飛ぶ。
「…………お、おらぁーー!」
それを見たもう一人が怯えながらも拳を上げようとして、しかしその拳が勢いをつける前に倒される。
「すごい…………」
倒した当の本人は手をプラプラとさせ、よっわ蔑むように呟いて、すぐ興味を失ったのか立ち去って行く。
一度も僕に向けられることのなかった視線。
実際に見られたら恐怖で固まってしまうのだろうが、それでもその瞳で僕を捉えてほしいと思った。
あの人は、僕の稲妻だ。
あの人の側でその光を見ていたい。
それから僕は自分を一年で変えてみせた。
僕の体格からして力任せの暴力は勝てない。
じゃあ僕の強みはなんだろうと考えて、柔軟性に行き着く。
元々関節が柔らかく、可動域が広かったが、さらに広げるために柔軟性を必死に磨いた。
僕の得意技は蹴りになった。
しかし今だに僕が気弱なのは変わらない。
生来の気質はそうそう変化するものでもない。
変われないならそのことを隠せるようになろうと思い、口調を緩くし、それに合わせて柔らかさを声色に入れて調整した。
漸く迎えた中学三年生。
僕は天雷俊介に接触して、ウザがられようがこりずに側に行き、近寄るなと空気を震わせる声で拒否されようが近くをうろつき、拳を打ち込まれようが潔く受け止めて、隣を勝ち取った。
てんちゃんは僕を救ったことなんて覚えていないだろう。
それでいい。
逆にあんな弱い自分を覚えててくれるなとさえ思う。
僕は元々計画していたことを実行した。
それは、てんちゃんに憧れている奴らを纏めて暴走族を起こすということ。
中心である総長には勿論てんちゃんを添えて。
僕は、僕に光をくれたてんちゃんに幸せになってほしいのだ。
僕を闇から救い上げてくれたてんちゃん。
じゃあ、てんちゃんをてんちゃんの闇から救い上げるのは誰なのか。
僕がその闇から救い出せるとは思っていない。
ただ、消せる人が現れた時に精一杯助けられるような万全の状態をつくる。
そんな偽善をしよう。
僕にはできないことを達成してくれる人。
どうか早く現れて。
もう準備は万全なんだ。
高校2年の新学期早々、てんちゃんが一般人と仲良くお喋りしてるなんて話が学校中を駆け抜けていた。
本当かどうか定かではないが、僕は一刻も早く確かめたい気持ちで一杯だった。
でも僕が学校に来たのは朝のSTぎりぎりで、そのまま体育館への移動になってしまいてんちゃんを見つけることができなかったのだ。
体育館では、式が始まる前は流石に教師が目を光らせていて堂々と探すことができなかったが、普段とは違う騒めきの方向は確認していたから始業式が終わってすぐにその騒めきの方に行った。
僕は何を見てるんだろう。
小柄な子の頭が己にもたれることを厭わず、それどころかその子を愛おしげに眺めるなんて、あのてんちゃんに何が起こったんだ。
僕はてんちゃんの幸せを望んでいるが、こんなに急だとどうしたんだという戸惑いが占める。
てんちゃん騙されてない?
大丈夫?
とりあえず話してみようと近づくことにした。
てんちゃんの機嫌をとんでもなく損ねる気がしないでもないけど。
「付き合いたてだからっていちゃいちゃしすぎなんじゃない? てーんちゃん」
てんちゃんのお相手は、至って平凡に見える。
しかも男。
いや偏見はないけど。
てんちゃんはこれまで男を対象にしたことがないはず。
急に趣味が変わるだろうか。
やっぱり騙されてない?
「うっせえ」
笑顔という貼り付けた仮面を掴み、思いっきり壊しにかかられる。
「いたいいたいいたい」
結構本気なてんちゃんの力は流石に痛くて、一生懸命に手を剥がす。
ちょっと話しただけなのに理不尽じゃないかと思うが、それほど本気ということなのだろう。
「はーこわ。でもガチで、恋人にこんなに優しいてんちゃん初めて見るよー?」
ここで漸くてんちゃんのお相手が言葉を発する。
「…………ともだちだから」
僕の勘違いでなければその目には嫌悪が湛えられている。
平凡なこの子には、自分の軽薄そうな仮面が駄目だったのだろう。
よくあるパターン。
「えーー? そうなの??」
鬱陶しそうに荒く頷かれる。
その距離感で言う言葉ではないと思った。
ありゃ、眠いのか。
それにプラスして嫌いなタイプが来たらそりゃ嫌だよね。
ちょっと同情した。
うーと微かに唸りながらてんちゃんの肩に頭を擦り付ける仕草だけを見ると可愛らしい。
そしてそれを優しく見守るてんちゃんがなんかイイ。
何故これで友達だと言い張れるのか。
「………………ふーん、ま、いーや」
それだけ言うとすくっと立ち上がり、手をひらひらと振って扉へと向かって歩いて行く。
もうてんちゃんが幸せそうならいーや。
思考を放棄したともいう。
そしてこれは、何気に僕が腐男子街道へと進むきっかけ。
あ、康介さんに今日のこと送らないと。
てんちゃんにいい人ができたのは嬉しいけど康介さんの反応が未知数すぎて不安だなぁ。
だからか、小学校ではいつも虐められていた。
なんでかな。
どうしても、おどおどしちゃう。
直そうと思っても、できないんだよね。
自分の意思で自分の体を制御しきれない。
僕は中学校に上がったら何か変わるのではないかと、漠然とした希望を抱いている。
そんなことあり得ない。
夢の話。
わかってる。
でも。
誰も助けてくれない。
だから縋れるものは、こんな、ちっぽけで、微かな、希望しかない。
縋っていなければましだったのだろうか。
案の定何も変わらなかった。
大人に相談しようとは絶対に思わない。
小学校では一度、勇気を振り絞って担任の先生に相談したことがある。
泣きそうになりながら、いや若干泣きながら、つっかえつっかえになっても最後まで話し切った。
なのに、僕に与えられたのは冷たい現実。
いじめなんてこんなに良い子達ばかりのクラスではありえないと取り合ってもらえなかった。
本当にそう思っていたのか、面倒事に首を突っ込みたくなかったのかはもうわからない。
あるのは闇に浸ろうとしていた僕が一気に闇に突き落とされたという事実だけ。
母さんは父さんが死んでから必死に働いてくれていて、心配をかけたくない僕にはとてもじゃないが相談することができない。
でも、母さんだけは信頼してる。
何度もやめてくれと声をあげそうになった。
しかし言ってしまったらもっと暴力がエスカレートすると知っている僕は声を上げることをしない。
あぁ、僕はなんて、なんて弱いんだろう。
僕は部屋で泣いた。
二年になっても僕は変わらない。
そう思ってた。
「はっ、情けねー奴らだな。んな普通のヤツに当たってはずかしくねぇのかよ。ちいせぇなぁ」
闇の中、一筋の光ーーーー否、稲妻が走った。
「ああ!? なんだと!!」
「イタイ目見せてやる!!」
奴らの標的が乱入者へと向かい、拳を振るう。
しかしそのパンチが当たる前にソイツの鳩尾に風を切る音とともにパンチが食い込み体が軽く飛ぶ。
「…………お、おらぁーー!」
それを見たもう一人が怯えながらも拳を上げようとして、しかしその拳が勢いをつける前に倒される。
「すごい…………」
倒した当の本人は手をプラプラとさせ、よっわ蔑むように呟いて、すぐ興味を失ったのか立ち去って行く。
一度も僕に向けられることのなかった視線。
実際に見られたら恐怖で固まってしまうのだろうが、それでもその瞳で僕を捉えてほしいと思った。
あの人は、僕の稲妻だ。
あの人の側でその光を見ていたい。
それから僕は自分を一年で変えてみせた。
僕の体格からして力任せの暴力は勝てない。
じゃあ僕の強みはなんだろうと考えて、柔軟性に行き着く。
元々関節が柔らかく、可動域が広かったが、さらに広げるために柔軟性を必死に磨いた。
僕の得意技は蹴りになった。
しかし今だに僕が気弱なのは変わらない。
生来の気質はそうそう変化するものでもない。
変われないならそのことを隠せるようになろうと思い、口調を緩くし、それに合わせて柔らかさを声色に入れて調整した。
漸く迎えた中学三年生。
僕は天雷俊介に接触して、ウザがられようがこりずに側に行き、近寄るなと空気を震わせる声で拒否されようが近くをうろつき、拳を打ち込まれようが潔く受け止めて、隣を勝ち取った。
てんちゃんは僕を救ったことなんて覚えていないだろう。
それでいい。
逆にあんな弱い自分を覚えててくれるなとさえ思う。
僕は元々計画していたことを実行した。
それは、てんちゃんに憧れている奴らを纏めて暴走族を起こすということ。
中心である総長には勿論てんちゃんを添えて。
僕は、僕に光をくれたてんちゃんに幸せになってほしいのだ。
僕を闇から救い上げてくれたてんちゃん。
じゃあ、てんちゃんをてんちゃんの闇から救い上げるのは誰なのか。
僕がその闇から救い出せるとは思っていない。
ただ、消せる人が現れた時に精一杯助けられるような万全の状態をつくる。
そんな偽善をしよう。
僕にはできないことを達成してくれる人。
どうか早く現れて。
もう準備は万全なんだ。
高校2年の新学期早々、てんちゃんが一般人と仲良くお喋りしてるなんて話が学校中を駆け抜けていた。
本当かどうか定かではないが、僕は一刻も早く確かめたい気持ちで一杯だった。
でも僕が学校に来たのは朝のSTぎりぎりで、そのまま体育館への移動になってしまいてんちゃんを見つけることができなかったのだ。
体育館では、式が始まる前は流石に教師が目を光らせていて堂々と探すことができなかったが、普段とは違う騒めきの方向は確認していたから始業式が終わってすぐにその騒めきの方に行った。
僕は何を見てるんだろう。
小柄な子の頭が己にもたれることを厭わず、それどころかその子を愛おしげに眺めるなんて、あのてんちゃんに何が起こったんだ。
僕はてんちゃんの幸せを望んでいるが、こんなに急だとどうしたんだという戸惑いが占める。
てんちゃん騙されてない?
大丈夫?
とりあえず話してみようと近づくことにした。
てんちゃんの機嫌をとんでもなく損ねる気がしないでもないけど。
「付き合いたてだからっていちゃいちゃしすぎなんじゃない? てーんちゃん」
てんちゃんのお相手は、至って平凡に見える。
しかも男。
いや偏見はないけど。
てんちゃんはこれまで男を対象にしたことがないはず。
急に趣味が変わるだろうか。
やっぱり騙されてない?
「うっせえ」
笑顔という貼り付けた仮面を掴み、思いっきり壊しにかかられる。
「いたいいたいいたい」
結構本気なてんちゃんの力は流石に痛くて、一生懸命に手を剥がす。
ちょっと話しただけなのに理不尽じゃないかと思うが、それほど本気ということなのだろう。
「はーこわ。でもガチで、恋人にこんなに優しいてんちゃん初めて見るよー?」
ここで漸くてんちゃんのお相手が言葉を発する。
「…………ともだちだから」
僕の勘違いでなければその目には嫌悪が湛えられている。
平凡なこの子には、自分の軽薄そうな仮面が駄目だったのだろう。
よくあるパターン。
「えーー? そうなの??」
鬱陶しそうに荒く頷かれる。
その距離感で言う言葉ではないと思った。
ありゃ、眠いのか。
それにプラスして嫌いなタイプが来たらそりゃ嫌だよね。
ちょっと同情した。
うーと微かに唸りながらてんちゃんの肩に頭を擦り付ける仕草だけを見ると可愛らしい。
そしてそれを優しく見守るてんちゃんがなんかイイ。
何故これで友達だと言い張れるのか。
「………………ふーん、ま、いーや」
それだけ言うとすくっと立ち上がり、手をひらひらと振って扉へと向かって歩いて行く。
もうてんちゃんが幸せそうならいーや。
思考を放棄したともいう。
そしてこれは、何気に僕が腐男子街道へと進むきっかけ。
あ、康介さんに今日のこと送らないと。
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