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結婚後
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結婚後、サーキスは今まで以上に精力的に働いた。
「ライス総合外科病院でーす! よろしくお願いしまーす!」
あれだけ不満にしていたビラ配りも自ら進んで行う。街角で通りかかる人々に何とかチラシを受け取ってもらおうと頭を下げる。
「具合が悪い時は当院をよろしくお願いします! 腕がいい外科医が治療します!」
妻のファナ、義理の祖母、そして新しく誕生する自分の子供。背負うものが一気に増えた。彼の今までの稼ぎでは家族を養うには不安がある。病院を繁盛させないといけない、そんな使命に駆られていた。
「ライス総合病院をよろしくお願いします!」
「おい邪教徒! 何やってるんだよ⁉」
カスケード支持者の中年にからまれた。病院のビラ配りをやっているとたまにあることだ。サーキスは看護師のシャツ、セリーンの刺繍を中年に見せつける。
「ごめんよ、おっちゃん! 俺、セリーン教の僧侶なんだ! だから勘弁してよ!」
「何で僧侶が…。お前、カスケード様の教えをやぶって…。許されると思っているのか⁉」
「別にー。セリーン様は病気を治したら駄目とか言ってないもーん。他のセリーン教徒もこっそりうちに来てるし、呪文じゃ病気も治らないしねー」
彼がのらりくらりと言い訳をしていると年寄りが一人、サーキスのそばに寄って来た。
「ワシ、しばらく前から肩が痛いんじゃ…。寝る時も右肩を下にして眠れないし、夜寝ていても痛みで起きてしまう…。寺院で回復呪文をかけてもらったけど、その時はいいけどしばらくしたらまた痛くなる…」
「いいぜ、じいちゃん! 一緒に病院に行って先生に診てもらおう!」
「チッ!」
サーキスにからんでいた中年が大きく舌打ちして去って行く。その彼の後ろ姿にサーキスは愛想を一つ言った。
「おっちゃんもどこか悪くなったらうちに来てねー」
サーキスが老人を病院へ連れて行くとパディの判断で翌日手術ということになった。パディとリリカは関心していた。
「サーキスは患者さんを見つけるのが上手だね。すごいよ」
「本当です。この調子だと来月分の家賃まで用意できそうですね」
ほとんどがセリーン教の信者が住むスレーゼンで僧侶の営業はイメージが良かった。
「本当に、本当に、本当に! 結婚してくれて良かったよーーーー!」
結婚式は先日、ナタリー食堂でこぢんまりと行われた。新郎側の来賓はたかが知れていたが、新婦側の友達の人数がサーキスの予想を超えていた。パディはサーキスの結婚を心から喜んだ一人。パディは式の最中に終始、小躍りしていた。
その日の仕事が終わり、サーキスが家に帰るとフィリアが畑を見ていた。
「ばあちゃんただいま!」
「お帰りサーキス」
「たまに無意識で宿屋に帰りそうになるよ! 帰る方向間違えてしまうぜ! ははは! …畑仕事なんかある?」
「別に大丈夫だよ。代わりに呪文が余ってたら恒常的な保護の呪文を畑にかけとくれ」
「オッケー」
それからサーキス達が家に入ると夕飯を作りながらファナが待っていた。
「お帰りサーキス」
「ただいまファナ。さて、ばあちゃんの体でも視ようかな。ばあちゃん、ソファーに横になって」
「いつもすまないねえ…」
フィリアが言われたままそうすると、サーキスは宝箱を唱えて祖母の血管を視た。心臓から動脈、動脈から静脈、手足から頭まで血管を全て観察する。血管に異常がないことを認めるとまた心臓に戻って心臓を調べる。肺動脈、肺静脈、大動脈、大心静脈、冠動脈、大動脈弁、僧帽弁など心臓のあらゆる部位を見た。
「うん。大丈夫だよ。異状ない。塩分に気を付けてね。水分もたくさん摂って」
「ありがとう。あんた、お医者さんみたいなことを言うねえ」
サーキスはファナも呼んで言った。
「ご飯の前に今日はちょっと子供の絵を描こうか」
三人がリビングに揃い、サーキスがファナのお腹を透視してスケッチブックに胎児の絵を描いた。その絵を見たファナは大笑いした。
「こんなの人間に見えないよ! サーキス、嘘描かないでよ! キャハハハ!」
「最初はこんな感じなんだって! これから徐々に人の形になっていくんだって!」
フィリアは真面目な顔で目を細めて言った。
「どんな子でもこれがひ孫ならあたしは嬉しいよ…。生きてひ孫が見れるなんて思いもしなかったよ。あ! お腹の中が視れるのなら男か女か生まれる前にわかるんじゃないのかい⁉」
「わかるらしいよ」
ファナが手を叩いて喜んだ。
「すごーい! 名前も早く考えられるじゃなーい!」
新しくできた家族に囲まれて、一言で言ってサーキスは幸せだった。
「ライス総合外科病院でーす! よろしくお願いしまーす!」
あれだけ不満にしていたビラ配りも自ら進んで行う。街角で通りかかる人々に何とかチラシを受け取ってもらおうと頭を下げる。
「具合が悪い時は当院をよろしくお願いします! 腕がいい外科医が治療します!」
妻のファナ、義理の祖母、そして新しく誕生する自分の子供。背負うものが一気に増えた。彼の今までの稼ぎでは家族を養うには不安がある。病院を繁盛させないといけない、そんな使命に駆られていた。
「ライス総合病院をよろしくお願いします!」
「おい邪教徒! 何やってるんだよ⁉」
カスケード支持者の中年にからまれた。病院のビラ配りをやっているとたまにあることだ。サーキスは看護師のシャツ、セリーンの刺繍を中年に見せつける。
「ごめんよ、おっちゃん! 俺、セリーン教の僧侶なんだ! だから勘弁してよ!」
「何で僧侶が…。お前、カスケード様の教えをやぶって…。許されると思っているのか⁉」
「別にー。セリーン様は病気を治したら駄目とか言ってないもーん。他のセリーン教徒もこっそりうちに来てるし、呪文じゃ病気も治らないしねー」
彼がのらりくらりと言い訳をしていると年寄りが一人、サーキスのそばに寄って来た。
「ワシ、しばらく前から肩が痛いんじゃ…。寝る時も右肩を下にして眠れないし、夜寝ていても痛みで起きてしまう…。寺院で回復呪文をかけてもらったけど、その時はいいけどしばらくしたらまた痛くなる…」
「いいぜ、じいちゃん! 一緒に病院に行って先生に診てもらおう!」
「チッ!」
サーキスにからんでいた中年が大きく舌打ちして去って行く。その彼の後ろ姿にサーキスは愛想を一つ言った。
「おっちゃんもどこか悪くなったらうちに来てねー」
サーキスが老人を病院へ連れて行くとパディの判断で翌日手術ということになった。パディとリリカは関心していた。
「サーキスは患者さんを見つけるのが上手だね。すごいよ」
「本当です。この調子だと来月分の家賃まで用意できそうですね」
ほとんどがセリーン教の信者が住むスレーゼンで僧侶の営業はイメージが良かった。
「本当に、本当に、本当に! 結婚してくれて良かったよーーーー!」
結婚式は先日、ナタリー食堂でこぢんまりと行われた。新郎側の来賓はたかが知れていたが、新婦側の友達の人数がサーキスの予想を超えていた。パディはサーキスの結婚を心から喜んだ一人。パディは式の最中に終始、小躍りしていた。
その日の仕事が終わり、サーキスが家に帰るとフィリアが畑を見ていた。
「ばあちゃんただいま!」
「お帰りサーキス」
「たまに無意識で宿屋に帰りそうになるよ! 帰る方向間違えてしまうぜ! ははは! …畑仕事なんかある?」
「別に大丈夫だよ。代わりに呪文が余ってたら恒常的な保護の呪文を畑にかけとくれ」
「オッケー」
それからサーキス達が家に入ると夕飯を作りながらファナが待っていた。
「お帰りサーキス」
「ただいまファナ。さて、ばあちゃんの体でも視ようかな。ばあちゃん、ソファーに横になって」
「いつもすまないねえ…」
フィリアが言われたままそうすると、サーキスは宝箱を唱えて祖母の血管を視た。心臓から動脈、動脈から静脈、手足から頭まで血管を全て観察する。血管に異常がないことを認めるとまた心臓に戻って心臓を調べる。肺動脈、肺静脈、大動脈、大心静脈、冠動脈、大動脈弁、僧帽弁など心臓のあらゆる部位を見た。
「うん。大丈夫だよ。異状ない。塩分に気を付けてね。水分もたくさん摂って」
「ありがとう。あんた、お医者さんみたいなことを言うねえ」
サーキスはファナも呼んで言った。
「ご飯の前に今日はちょっと子供の絵を描こうか」
三人がリビングに揃い、サーキスがファナのお腹を透視してスケッチブックに胎児の絵を描いた。その絵を見たファナは大笑いした。
「こんなの人間に見えないよ! サーキス、嘘描かないでよ! キャハハハ!」
「最初はこんな感じなんだって! これから徐々に人の形になっていくんだって!」
フィリアは真面目な顔で目を細めて言った。
「どんな子でもこれがひ孫ならあたしは嬉しいよ…。生きてひ孫が見れるなんて思いもしなかったよ。あ! お腹の中が視れるのなら男か女か生まれる前にわかるんじゃないのかい⁉」
「わかるらしいよ」
ファナが手を叩いて喜んだ。
「すごーい! 名前も早く考えられるじゃなーい!」
新しくできた家族に囲まれて、一言で言ってサーキスは幸せだった。
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