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サフランのファインプレー(2)
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サフランは数発尻を叩かれて床へと解放される。
「勝手に呪文を唱えるなと何度言ったらわかるんだ! それも攻撃呪文を!」
「痛くない呪文は…攻撃呪文じゃ、ないもん…」
サフランは自分のお尻を両手でさすって半べそをかいた。それを脇から見ていたジョセフ少年がケラケラと笑っていた。ギルがジョセフに命令する。
「ちょうどいいところにいたジョセフ。俺様はこれから散歩に行って来る。サフランが自分の尻に勝手に回復呪文を使わないか見ておけ。こいつへのペナルティだ。…ジョセフ。言いつけを守らないとそれなりの報いを受けるぞ」
ジョセフは額に冷や汗を流す。
「何で僕にそんな役目を⁉ ひどいよ師匠!」
「弟子入りする人間を間違えたな。…来いシム!」
籠手のシムエストが空中を舞ってギルの左腕にすっぽりと納まる。ギルは二階から階段を降りて玄関まで行き、ドアを開けて外へ出た。
そこへ、通りの壁の裏からギルを待ち構えていた人物がいた。カスケード寺院の僧侶である。
その僧侶はミッド・バーツ・カスケードから直々にギルの抹殺命令を受けていた。
(ギーリウス・ラウカーはカスケード寺院の脅威となる敵…。カスケード様に忠誠を…)
その僧侶は普段は温厚な人柄であったが、その分カスケードに付けこまれた。権威のある人間から命令されれば必要以上に残虐になれるという人の心理がある。
(あいつを殺せば寺院でのポジションを上げていただける…。これも信仰のため。仕方ないこと…)
僧侶はチャンスを逃さずに離れた位置からギルに向かって心臓破壊の呪文を唱えた。
そして結果、白い球体がギルを包み、呪文を完全に無効化した。
(そ、そんな馬鹿な⁉)
ギルはまさか心臓破壊を受けていたことなどと、つゆも思わなかった。ギルは二階を見上げて言った。
「またサフランか…。ジョセフは一体どうしたんだ…」
シムが言った。
《ジョセフは便所にでも行ってたんじゃないのか? その間にサフランが俺たちを攻撃したんだろう》
「いたずら大好きサフラン…。帰ったらまた説教だ」
何事もなかったように散歩へとおもむくギル。それを眺めていた僧侶はガクガクと震えていた。寺院へ走り帰った僧侶は早速カスケードへ報告する。
「カスケード様! ギーリウス・ラウカーは恐ろしい男です! 奴は魔法使いの呪文が使えます! 私が壁の陰から心臓破壊で攻撃しましたところ、魔障壁の呪文で弾かれました! おそらく魔法使いから聖騎士に転職したものと思います!
戦闘漬けの人生を歩んできたのでしょうか⁉ 私生活で魔障壁の呪文なんて使う必要がないはずです! ギーリウス・ラウカーという男は普段から戦いを想定している! 常に臨戦態勢なのです!
そして最も恐ろしいと感じたのが、攻撃呪文を受けても顔色一つ変えない! 平然と歩いてどこかへ行きました! 私が見つかっていたら必ず殺されていた!
もう無理です! 私はあの男に近づきたくありません! 申し訳ありません、カスケード様ー!」
話はギルとフォードの密談に戻る。
フォードは自分が座るベッドを爪でカリカリとかきながらギルに言った。
「ま、お前さんが切り札だね。何か用意して欲しいものがあれば何でもあげるよ。金に糸目はつけない。戦力が欲しいなら人も用意する。…サーキスとか役に立ちそう?」
ギルはここでもう最悪の敵を予想していた。
「俺が敵のミッド・バーツ・カスケードであるなら、俺は思い付く限りの最強の人間を雇う。それで敵である俺を殺すなり、半殺しにするなりして屈服させる。『もう無理だ、降参だ』と言わせて抵抗する気持ちを折ってしまうな。俺なら…。
俺が仮に想定している敵は強大だ。サーキスを仲間にしても、あいつは瞬殺されるだろう…。俺ならそういう奴を呼ぶ…」
フォードは黙り込んだ。ギルは父親が頭数に入ることを言う。
「親父なら戦力として通用する。ただ…現在、不在なのが痛いな…。今、俺が強力な敵に襲われたらヤバいことになる…」
フォードはしばらく沈黙するが、今度は違う角度のことを言う。
「あのな、ギーリウス。パディちゃんはペストのことをすっごいビビってたの。悪夢をよく見てたんだって。ネズミの大群がスレーゼンの街に押し寄せて人や動物を、生き物全てを噛んでペストが蔓延する夢を。夢の中で知り合いがみんな、黒くなって血を吐いて死んで行ったって。このワシやリリカちゃんもね。確かに悪夢だよね…」
フォードはそこまでしゃべると今度は黙り続けた。しばらく沈黙が続いたが、ここでギルはフォローも兼ねてシムを紹介することにした。
「ミスター、あんたに紹介したい奴がいる…。おーい、シム! 聞いているだろう! 出て来ていいぞ!」
籠手のシムが天井を開けて空中から降りて来た。そうしてフォードの周りをクルクルと飛び回る。
《お前とは是非とも話してみたかった、カザニル・フォード! 子供たちを手厚くもてなしてくれて心から感謝するぞ!》
(これはフィリップが言っていた空飛ぶ籠手⁉ 初めて見るがこれは⁉)
「な、何だ、これは⁉」
《俺はシムエスト! どっかの国の言葉で『左』という意味だ! 元々アームイーターという化け物だが、子供たちの家庭教師などをしてここでの生活を楽しませてもらっている! 人の腕を食いちぎったり、魔法使いの呪文を全て使えるぞ! カスケード寺院は聞き捨てならん! 今から俺が単身、カスケードをぶっ殺しに行ってもいいぞ!》
「しゃべれるのか…」
ギルが冷静にシムエストを諫めた。
「カスケードを殺しても誰かが奴を生き返らせるだろう」
《それならあそこの僧侶は皆殺しだ!》
「そうしても違う寺院の僧侶が奴らの死体を生き返らせるだろ?」
《根本的な解決にならないか!》
フォードは驚きながらも呆けた顔で言った。
「何だ、これは…」
「勝手に呪文を唱えるなと何度言ったらわかるんだ! それも攻撃呪文を!」
「痛くない呪文は…攻撃呪文じゃ、ないもん…」
サフランは自分のお尻を両手でさすって半べそをかいた。それを脇から見ていたジョセフ少年がケラケラと笑っていた。ギルがジョセフに命令する。
「ちょうどいいところにいたジョセフ。俺様はこれから散歩に行って来る。サフランが自分の尻に勝手に回復呪文を使わないか見ておけ。こいつへのペナルティだ。…ジョセフ。言いつけを守らないとそれなりの報いを受けるぞ」
ジョセフは額に冷や汗を流す。
「何で僕にそんな役目を⁉ ひどいよ師匠!」
「弟子入りする人間を間違えたな。…来いシム!」
籠手のシムエストが空中を舞ってギルの左腕にすっぽりと納まる。ギルは二階から階段を降りて玄関まで行き、ドアを開けて外へ出た。
そこへ、通りの壁の裏からギルを待ち構えていた人物がいた。カスケード寺院の僧侶である。
その僧侶はミッド・バーツ・カスケードから直々にギルの抹殺命令を受けていた。
(ギーリウス・ラウカーはカスケード寺院の脅威となる敵…。カスケード様に忠誠を…)
その僧侶は普段は温厚な人柄であったが、その分カスケードに付けこまれた。権威のある人間から命令されれば必要以上に残虐になれるという人の心理がある。
(あいつを殺せば寺院でのポジションを上げていただける…。これも信仰のため。仕方ないこと…)
僧侶はチャンスを逃さずに離れた位置からギルに向かって心臓破壊の呪文を唱えた。
そして結果、白い球体がギルを包み、呪文を完全に無効化した。
(そ、そんな馬鹿な⁉)
ギルはまさか心臓破壊を受けていたことなどと、つゆも思わなかった。ギルは二階を見上げて言った。
「またサフランか…。ジョセフは一体どうしたんだ…」
シムが言った。
《ジョセフは便所にでも行ってたんじゃないのか? その間にサフランが俺たちを攻撃したんだろう》
「いたずら大好きサフラン…。帰ったらまた説教だ」
何事もなかったように散歩へとおもむくギル。それを眺めていた僧侶はガクガクと震えていた。寺院へ走り帰った僧侶は早速カスケードへ報告する。
「カスケード様! ギーリウス・ラウカーは恐ろしい男です! 奴は魔法使いの呪文が使えます! 私が壁の陰から心臓破壊で攻撃しましたところ、魔障壁の呪文で弾かれました! おそらく魔法使いから聖騎士に転職したものと思います!
戦闘漬けの人生を歩んできたのでしょうか⁉ 私生活で魔障壁の呪文なんて使う必要がないはずです! ギーリウス・ラウカーという男は普段から戦いを想定している! 常に臨戦態勢なのです!
そして最も恐ろしいと感じたのが、攻撃呪文を受けても顔色一つ変えない! 平然と歩いてどこかへ行きました! 私が見つかっていたら必ず殺されていた!
もう無理です! 私はあの男に近づきたくありません! 申し訳ありません、カスケード様ー!」
話はギルとフォードの密談に戻る。
フォードは自分が座るベッドを爪でカリカリとかきながらギルに言った。
「ま、お前さんが切り札だね。何か用意して欲しいものがあれば何でもあげるよ。金に糸目はつけない。戦力が欲しいなら人も用意する。…サーキスとか役に立ちそう?」
ギルはここでもう最悪の敵を予想していた。
「俺が敵のミッド・バーツ・カスケードであるなら、俺は思い付く限りの最強の人間を雇う。それで敵である俺を殺すなり、半殺しにするなりして屈服させる。『もう無理だ、降参だ』と言わせて抵抗する気持ちを折ってしまうな。俺なら…。
俺が仮に想定している敵は強大だ。サーキスを仲間にしても、あいつは瞬殺されるだろう…。俺ならそういう奴を呼ぶ…」
フォードは黙り込んだ。ギルは父親が頭数に入ることを言う。
「親父なら戦力として通用する。ただ…現在、不在なのが痛いな…。今、俺が強力な敵に襲われたらヤバいことになる…」
フォードはしばらく沈黙するが、今度は違う角度のことを言う。
「あのな、ギーリウス。パディちゃんはペストのことをすっごいビビってたの。悪夢をよく見てたんだって。ネズミの大群がスレーゼンの街に押し寄せて人や動物を、生き物全てを噛んでペストが蔓延する夢を。夢の中で知り合いがみんな、黒くなって血を吐いて死んで行ったって。このワシやリリカちゃんもね。確かに悪夢だよね…」
フォードはそこまでしゃべると今度は黙り続けた。しばらく沈黙が続いたが、ここでギルはフォローも兼ねてシムを紹介することにした。
「ミスター、あんたに紹介したい奴がいる…。おーい、シム! 聞いているだろう! 出て来ていいぞ!」
籠手のシムが天井を開けて空中から降りて来た。そうしてフォードの周りをクルクルと飛び回る。
《お前とは是非とも話してみたかった、カザニル・フォード! 子供たちを手厚くもてなしてくれて心から感謝するぞ!》
(これはフィリップが言っていた空飛ぶ籠手⁉ 初めて見るがこれは⁉)
「な、何だ、これは⁉」
《俺はシムエスト! どっかの国の言葉で『左』という意味だ! 元々アームイーターという化け物だが、子供たちの家庭教師などをしてここでの生活を楽しませてもらっている! 人の腕を食いちぎったり、魔法使いの呪文を全て使えるぞ! カスケード寺院は聞き捨てならん! 今から俺が単身、カスケードをぶっ殺しに行ってもいいぞ!》
「しゃべれるのか…」
ギルが冷静にシムエストを諫めた。
「カスケードを殺しても誰かが奴を生き返らせるだろう」
《それならあそこの僧侶は皆殺しだ!》
「そうしても違う寺院の僧侶が奴らの死体を生き返らせるだろ?」
《根本的な解決にならないか!》
フォードは驚きながらも呆けた顔で言った。
「何だ、これは…」
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