潮騒が聞こえる

t.yuduki

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デジタル表記は止まらなかった。
無情にも僕の目の前でカチカチと、無機質な音を出し続けている。

頭が真っ白になる。が、すぐに切り替えてさっと構造を見直す。
数秒後には全身の力が抜けていた。
わからない。これまでの処理方法に間違いもなかったはずだ。
どうすればいい?
頭の中で焦りだけが増していく。
それはアルフォードにも伝わったようだった。
「終わった?」
「いえ。多分、あと一つです」
声が強張った。残り時間は二分を切っている。
僕は視線を爆弾へ向けたまま、できるだけ冷静に言った。
「アルフォードさん、避難してください」
「言っただろ。俺はここにいる」
まったく迷いのない返事だった。僕は少し躊躇って、正直に告げる。
「その、最後の一つがわからないんです。今まではマニュアル通りだったけど、これは……」
「あと何分だ?」
「―― 一分」
「ハリーに任せる」
僕の足に置いていた手が勇気付けるようにぽんと叩く。
「お前を一人残して行ったりしない」
揺るぎない声に僕は吐息を吐いた。目の前ではデジタル数字が淡々と時を刻んでゆく。

「アルフォードさん、僕はあなたが好きです」

沈黙に、時計の音が大きく響いた。
ゆっくりと自分の言葉を反芻して、動揺する。
「す、すみません、こんな時に――あ、返事はいいです、相手がいるのはわかってます。ただ、伝えておきたかっただけですから」
アルフォードは何も言わなかった。
どんな表情をしているのかもわからないが、むしろ救いだったかもしれない。
想いを告げたことで気持ちが軽くなっていた。

僕は覚悟を決めて爆弾に向き直った。
「――切ります」
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