まほう使いの家事手伝い

トド

文字の大きさ
上 下
23 / 31
第一章 『私のまほう使い』

⑲ 『戦いは突然終わり……』

しおりを挟む
 銀色領主様は、魔法まほうを何度も何度も使ってくる。アゼルはそれと全く同じ魔法まほうを使って消す。
 それがしばらく続いていたんだけれど、高笑いをしながら魔法まほうを使っていた銀色領主様の笑いが突然とつぜん止まった。

「なっ、何故だ! 何故、急に力が……」
 戸惑とまどう銀色領主様は、だんだん体も銀色ではなくなっていき、ただの領主様にもどるのが見ていて分かった。

 そしてそれと同時に、大地から頭(かどうかは知らないけれど)を出して明るかった、<マジックガイザー>とかいうものも、かがやきを失っていく。

 アゼルはそうなるのが分かっていたように、今度は明るい球を作ってそれを上に投げる。すると、今までよりも周りが明るくなった。

「その疑問に答えて上げる理由はないけれど、あえて言うのならば、あなた達が物知らずなだけだよ」
 アゼルはその言葉と同時に、今度はかみなりを領主様に落とす。

「……あっ……、がぁぁっ……」
 領主様はアゼルの魔法まほうを受けて、顔から地面にたおれる。そして、まったく動かなくなった。

 間違まちがいいなく、アゼルの完全勝利だった。
 私達を傷つけようとしていた二人は、アゼルに手も足も出ずに負けたんだ。

 けれど、だれも喜びの声をあげない。
 目の前で突然とつぜん起こった魔法まほうの戦いに言葉を失い、そして、そんなでたらめな戦いを一方的に、圧倒的あっとうてきに制したアゼルをみんなこわがっているみたいだ。

 正直、私も少しこわいと思った。思ってしまった。
 だって、私の知っている、いつものアゼルとはぜんぜん違うんだもん……。

「……アミィ。この子達とそこの体の大きな人はだれなのか、教えてくれないかい?」
「えっ、あっ、うん!」
 不意に声をかけてきたアゼルに、私はあわててけ寄り、これまでの事を簡単に説明する。

「……そうか。ということは、この子達は家に帰さないといけないね」
「うっ、うん……」
 アゼルの言うことは正しいと思う。でも、やっぱり変だ。
 いつもとぜんぜんちがう。
 そっけないと言うか、初対面の人にする態度みたいと言うか……。

「そこの君たち……」
 アゼルが声をかけると、ミリアさん達は明らかに恐怖きょうふを顔にかべていた。

「……なっ、なんですか?」
 体をふるわせながらも、ミリアさんが他の女の子をかばうように前に出て、アゼルに問い返す。

「これから、君たちを家に送り届けようと思う。だから、君たちは自分の家の事を頭に思いかべて欲しいんだ」
「おっ、思いかべる? それって……」
「難しく考えなくていいよ。君たちが会いたいと思う人のことを考えてくれるだけで良いから」
 アゼルの説明にみんなは不審ふしんがっていたけれど、

「本当に? お兄さんが、私をお父さんとお母さんの所に連れて行ってくれるの?」
 ミリアさんの後ろにかくれていた最年少だと思われる女の子が、なみだを目にめながら言うと、他の子たちも、アゼルの指示に従って自分が帰りたい場所の、家のことを考え始めたようだった。

「うん。その気持ちを少しだけ持ち続けて」
 アゼルはそういったかと思うと、指をパチンと鳴らした。

 すると次の瞬間しゅんかん、ミリアさん達の姿が突然とつぜん消えた。みんなが一瞬いっしゅんで、同時に……。

「なっ、何をしたの、アゼル!」
「……みんなが住んでいる村に送っただけだよ。突然とつぜん、家の中に現れたらおどろくだろうから、村の外れに送っておいた。それでも、あわい光をまとわせておいたから、だれかがすぐに気がつくはずだ」
 アゼルはどうでもいいことのように言うと、今度は気絶してたおれている領主様に近づいていく。

「……はぁ~。悪運が強いな。これなら……まだ間に合う……」
 アゼルはため息をつくと、右手を領主様の体の上にかかげた。そして、それを素早く右にる。

 すると、今度は突然とつぜん、女の人が領主様の横に現れた。
 それは私の知っている人だった。

「えっ? えっ? なんで、セリーナが?」
 領主様の横に現れたセリーナは、全くの無傷だった。服も傷ひとつないようだ。
 でも、セリーナは生贄いけにえとかいうものにされたはずじゃあ……。

 不思議に思った私は、説明をしてほしくてアゼルを見たんだけれど、アゼルはやっぱりニコリともしないで、こちらを見てもくれない。

「アゼル! どうしてそんな態度をするのよ!」
 私は我慢がまんできなくて、文句を口にする。

 そんな私にアゼルはおこるでもなく、ただ静かに、

「……アミィ。どうして、君はボクとの約束を破ったのかな?」

 そう質問をしてきたんだ。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

見習い錬金術士ミミリの冒険の記録〜討伐も採集もお任せください!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?〜

うさみち
児童書・童話
【見習い錬金術士とうさぎのぬいぐるみたちが描く、スパイス混じりのゆるふわ冒険!情報収集のために、お仕事のご依頼も承ります!】 「……襲われてる! 助けなきゃ!」  錬成アイテムの採集作業中に訪れた、モンスターに襲われている少年との突然の出会い。  人里離れた山陵の中で、慎ましやかに暮らしていた見習い錬金術士ミミリと彼女の家族、機械人形(オートマタ)とうさぎのぬいぐるみ。彼女たちの運命は、少年との出会いで大きく動き出す。 「俺は、ある人たちから頼まれて預かり物を渡すためにここに来たんだ」  少年から渡された物は、いくつかの錬成アイテムと一枚の手紙。 「……この手紙、私宛てなの?」  少年との出会いをキッカケに、ミミリはある人、あるアイテムを探すために冒険を始めることに。  ――冒険の舞台は、まだ見ぬ世界へ。  新たな地で、右も左もわからないミミリたちの人探し。その方法は……。 「討伐、採集何でもします!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?」  見習い錬金術士ミミリの冒険の記録は、今、ここから綴られ始める。 《この小説の見どころ》 ①可愛いらしい登場人物 見習い錬金術士のゆるふわ少女×しっかり者だけど寂しがり屋の凄腕美少女剣士の機械人形(オートマタ)×ツンデレ魔法使いのうさぎのぬいぐるみ×コシヌカシの少年⁉︎ ②ほのぼのほんわか世界観 可愛いらしいに囲まれ、ゆったり流れる物語。読了後、「ほわっとした気持ち」になってもらいたいをコンセプトに。 ③時々スパイスきいてます! ゆるふわの中に時折現れるスパイシーな展開。そして時々ミステリー。 ④魅力ある錬成アイテム 錬金術士の醍醐味!それは錬成アイテムにあり。魅力あるアイテムを活用して冒険していきます。 ◾️第3章完結!現在第4章執筆中です。 ◾️この小説は小説家になろう、カクヨムでも連載しています。 ◾️作者以外による小説の無断転載を禁止しています。 ◾️挿絵はなんでも書いちゃうヨギリ酔客様からご寄贈いただいたものです。

トゥオンと竜の結び手【休載中】

神原オホカミ【書籍発売中】
児童書・童話
大陸の北側にある山岳地帯のラナカイ村に住む少女、トゥオン。 彼女の相棒は、伝説の生き物と言われている『竜』のヴァンだった。 家族同様に一緒に過ごし、平和な日々を過ごしていたトゥオンとヴァンだったのだが 西の平地を統治するウルン大帝国が、食糧飢饉に陥ったことで、その平和は脆く崩れ去ってしまう。 竜を悪者とする西の民は、竜の住まう東の聖域の豊かな資源を求めて その場所を侵略する動きが見えてきた。 竜の住む東の聖域、ローチャオに到達するまでには、 トゥオンたちの住む山岳地帯を抜けるしか方法は無い。 次々に近隣の村がウルン大帝国に支配されていく中で、 ラナカイ村も平和的に属国となり、争いを避ける事となった。 しかし、ヴァンが見つかってしまえば、捕まって殺されてしまう。 トゥオンの両親は、ヴァンを助けるために、竜の住む聖域にヴァンを戻すことに決める。 トゥオンは大事な家族を守るため、別れを告げるために ヴァンとともに、彼を安全な聖域の奥地へと逃がす旅に出る。 大人たちの思惑、少年と少女たちの複雑な思い、そして種族を越えた絆と家族。 少年少女たちが、竜とともに戦い、立ち向かって行く物語です。 2021年7月書き始め 2023年改稿中 申し訳ないですが、不定期更新となりますm(__)m ◆表紙画像は簡単表紙メーカー様で作成しています。 ◆無断転写や内容の模倣はご遠慮ください。 ◆文章をAI学習に使うことは絶対にしないでください。

ミズルチと〈竜骨の化石〉

珠邑ミト
児童書・童話
カイトは家族とバラバラに暮らしている〈音読みの一族〉という〈族《うから》〉の少年。彼の一族は、数多ある〈族〉から魂の〈音〉を「読み」、なんの〈族〉か「読みわける」。彼は飛びぬけて「読め」る少年だ。十歳のある日、その力でイトミミズの姿をしている〈族〉を見つけ保護する。ばあちゃんによると、その子は〈出世ミミズ族〉という〈族《うから》〉で、四年かけてミミズから蛇、竜、人と進化し〈竜の一族〉になるという。カイトはこの子にミズルチと名づけ育てることになり……。  一方、世間では怨墨《えんぼく》と呼ばれる、人の負の感情から生まれる墨の化物が活発化していた。これは人に憑りつき操る。これを浄化する墨狩《すみが》りという存在がある。  ミズルチを保護してから三年半後、ミズルチは竜になり、カイトとミズルチは怨墨に知人が憑りつかれたところに遭遇する。これを墨狩りだったばあちゃんと、担任の湯葉《ゆば》先生が狩るのを見て怨墨を知ることに。 カイトとミズルチのルーツをたどる冒険がはじまる。

桃の木と王子様

色部耀
児童書・童話
一口食べれば一日健康に生きられる桃。そんな桃の木に関する昔話

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

オオカミ少女と呼ばないで

柳律斗
児童書・童話
「大神くんの頭、オオカミみたいな耳、生えてる……?」 その一言が、私をオオカミ少女にした。 空気を読むことが少し苦手なさくら。人気者の男子、大神くんと接点を持つようになって以降、クラスの女子に目をつけられてしまう。そんな中、あるできごとをきっかけに「空気の色」が見えるように―― 表紙画像はノーコピーライトガール様よりお借りしました。ありがとうございます。

処理中です...