4 / 89
許婚と結婚して本当に幸せになれるのか
やるべきことを思いついた
しおりを挟む
クロード・ロランが消防署をでるとステラの頬をぶったジルから声をかけられた。
「クロード、本当にいろいろとごめんなさい。クロードの許婚にひどいことをしてしまって」
クロードはまさかジルがあやまりにくるとは思わずおどろいた。
昨日は自分をだましたのかとクロードに怒りをぶつけ、どういうつもりで自分に甘いことをいったのかと問いつめられた。
クロードはジルにかわいい女の子をかわいいと素直にほめ、すこしきどってノルン国の貴族の挨拶である手の甲へのキスをしただけだと説明した。
その説明にジルは納得がいかないようだったが、貴族の挨拶といった時に「今でもそんなことする人がいるの?」ジルが小さくつぶやいたのが聞こえた。
ジルとは町を巡回しているときに出会った。彼女と使用人が野良犬に追いかけられていたので犬を追い払い、辻馬車をつかまえる手伝いをした。
かわいい女の子だったこともあり、つい調子にのって手の甲にキスをしてしまった。
クロードと一緒に巡回していた先輩が「さすがにあれはやりすぎだろう」とあきれていた。
それなので「手の甲へのキスはノルンではただの挨拶ですよ」と笑いとばした。
それがまさかジルがステラの頬をぶつようなことになってしまうとは思ってもみなかった。
「本当にごめんなさい。彼女の頬は大丈夫だった?」
「ちょっと赤くなっただけで大丈夫だったよ」
こわばっていたジルの表情がゆるんだ。
「彼女に直接あやまるべきなのは分かっているけど、ひどいことをした人に前触れもなく会うのは嫌かもしれないと人にいわれたの。
だからお詫びの品を用意したのでクロードからわたしてもらえる?」
ジルが小さな紙袋をクロードに手渡した。
「ハンカチ。いくつあっても困らないものだし」と説明した。
「それとね、昨日は気持ちが高ぶってクロードにもいろいろ言ってしまいごめんなさい。
ノルン式の挨拶について聞いたことはあったけど、実際に見たことがなかったし遠い国のこととしか思っていなかったせいもあって――。本当にごめんなさい」
ジルが恥ずかしげに謝罪する姿はかわいかった。
昨日ジルを家まで送ったときに、クロードはジルがお嬢様であることに気付いた。
初めて会った時にジルが一緒にいた女性を使用人だといっていたので、それなりに大きな商家の娘だろうとは思っていた。
しかし昨日、ジルに付いていた使用人が御者に行き先として知らせた場所は裕福な人達しか住めない地域で、実際に馬車が到着した場所には立派という文字がふさわしい屋敷があった。
ジルはクロードが思っていたよりもはるかに裕福な家のお嬢様で、普通であれば知り合うことなどまったくなかっただろう。
「疲れているところを引き止めてごめんね。クロードを使ってしまって悪いんだけど許婚にお詫びを伝えてもらえると助かる。
本当にごめんね。これにこりずまだ友達でいてもらえる?」
「もちろん。誤解があっただけだし」
ジルがじゃあまたといって笑顔で手をふり去っていった。
昨日の勢いや怒りのはげしさにはおどろいたが、もとは感じのよい子だ。今日のような彼女がきっと普段の彼女なのだろう。
クロードはジルからわたされたステラへの詫びの品をポケットにいれ家へとむかう。
ふとステラに婚約解消したいといわれたことを思い出した。
怒りがこみあげる。
クロードにとってステラはすでに家族だ。
ステラが結婚できる年齢にたっしていないので結婚という形で家族になっていないが、ずっと一緒に育ってきて自分が一生守っていく存在だと思っている。
そのようにステラも考えていると思っていただけに、まさか婚約解消したいというなど想像すらしたことがなかった。
「ステラがあんなことをいいだすなんて絶対なにかあったはずだ」
しかしクロードが好きな奴でもできたかと聞いた時にステラは嘘をついているように見えなかった。
ステラは嘘をつくときに下唇をかむ癖があるが、あの時はかんでいなかった
そうなるとなぜ婚約解消したいといいだしたのかが分からない。
ここ最近、喧嘩をしたおぼえはない。そもそも小さい頃とちがい一緒にいる時間がすくなくなった。
クロードは夜勤があったりと勤務時間が不規則で、ステラは学校だけでなく放課後や週末に働いてと忙しくしているので一週間に一度顔を合わせるかどうかというかんじだった。
それでも家族が一緒にご飯をたべたりと行き来しているので、お互い相手が何をしているのかは把握していた。
「そういえばしばらくステラと一緒に出かけてないなあ」
それが不満なのかもしれない。ステラはすっかり家族となっているのであらたまって一緒にでかけるといった許婚らしいことをしたことがない。
弟のパトリックに最近恋人ができ、恋人と一緒に出かけたりしている。
ステラも友人などから恋人との外出を楽しんだことを聞いたりしているだろう。
「そうだ、許婚らしいことだ! それが欠けてたんだ」
クロードはステラとどこへ出かけようかと行く場所を考えはじめた。
「クロード、本当にいろいろとごめんなさい。クロードの許婚にひどいことをしてしまって」
クロードはまさかジルがあやまりにくるとは思わずおどろいた。
昨日は自分をだましたのかとクロードに怒りをぶつけ、どういうつもりで自分に甘いことをいったのかと問いつめられた。
クロードはジルにかわいい女の子をかわいいと素直にほめ、すこしきどってノルン国の貴族の挨拶である手の甲へのキスをしただけだと説明した。
その説明にジルは納得がいかないようだったが、貴族の挨拶といった時に「今でもそんなことする人がいるの?」ジルが小さくつぶやいたのが聞こえた。
ジルとは町を巡回しているときに出会った。彼女と使用人が野良犬に追いかけられていたので犬を追い払い、辻馬車をつかまえる手伝いをした。
かわいい女の子だったこともあり、つい調子にのって手の甲にキスをしてしまった。
クロードと一緒に巡回していた先輩が「さすがにあれはやりすぎだろう」とあきれていた。
それなので「手の甲へのキスはノルンではただの挨拶ですよ」と笑いとばした。
それがまさかジルがステラの頬をぶつようなことになってしまうとは思ってもみなかった。
「本当にごめんなさい。彼女の頬は大丈夫だった?」
「ちょっと赤くなっただけで大丈夫だったよ」
こわばっていたジルの表情がゆるんだ。
「彼女に直接あやまるべきなのは分かっているけど、ひどいことをした人に前触れもなく会うのは嫌かもしれないと人にいわれたの。
だからお詫びの品を用意したのでクロードからわたしてもらえる?」
ジルが小さな紙袋をクロードに手渡した。
「ハンカチ。いくつあっても困らないものだし」と説明した。
「それとね、昨日は気持ちが高ぶってクロードにもいろいろ言ってしまいごめんなさい。
ノルン式の挨拶について聞いたことはあったけど、実際に見たことがなかったし遠い国のこととしか思っていなかったせいもあって――。本当にごめんなさい」
ジルが恥ずかしげに謝罪する姿はかわいかった。
昨日ジルを家まで送ったときに、クロードはジルがお嬢様であることに気付いた。
初めて会った時にジルが一緒にいた女性を使用人だといっていたので、それなりに大きな商家の娘だろうとは思っていた。
しかし昨日、ジルに付いていた使用人が御者に行き先として知らせた場所は裕福な人達しか住めない地域で、実際に馬車が到着した場所には立派という文字がふさわしい屋敷があった。
ジルはクロードが思っていたよりもはるかに裕福な家のお嬢様で、普通であれば知り合うことなどまったくなかっただろう。
「疲れているところを引き止めてごめんね。クロードを使ってしまって悪いんだけど許婚にお詫びを伝えてもらえると助かる。
本当にごめんね。これにこりずまだ友達でいてもらえる?」
「もちろん。誤解があっただけだし」
ジルがじゃあまたといって笑顔で手をふり去っていった。
昨日の勢いや怒りのはげしさにはおどろいたが、もとは感じのよい子だ。今日のような彼女がきっと普段の彼女なのだろう。
クロードはジルからわたされたステラへの詫びの品をポケットにいれ家へとむかう。
ふとステラに婚約解消したいといわれたことを思い出した。
怒りがこみあげる。
クロードにとってステラはすでに家族だ。
ステラが結婚できる年齢にたっしていないので結婚という形で家族になっていないが、ずっと一緒に育ってきて自分が一生守っていく存在だと思っている。
そのようにステラも考えていると思っていただけに、まさか婚約解消したいというなど想像すらしたことがなかった。
「ステラがあんなことをいいだすなんて絶対なにかあったはずだ」
しかしクロードが好きな奴でもできたかと聞いた時にステラは嘘をついているように見えなかった。
ステラは嘘をつくときに下唇をかむ癖があるが、あの時はかんでいなかった
そうなるとなぜ婚約解消したいといいだしたのかが分からない。
ここ最近、喧嘩をしたおぼえはない。そもそも小さい頃とちがい一緒にいる時間がすくなくなった。
クロードは夜勤があったりと勤務時間が不規則で、ステラは学校だけでなく放課後や週末に働いてと忙しくしているので一週間に一度顔を合わせるかどうかというかんじだった。
それでも家族が一緒にご飯をたべたりと行き来しているので、お互い相手が何をしているのかは把握していた。
「そういえばしばらくステラと一緒に出かけてないなあ」
それが不満なのかもしれない。ステラはすっかり家族となっているのであらたまって一緒にでかけるといった許婚らしいことをしたことがない。
弟のパトリックに最近恋人ができ、恋人と一緒に出かけたりしている。
ステラも友人などから恋人との外出を楽しんだことを聞いたりしているだろう。
「そうだ、許婚らしいことだ! それが欠けてたんだ」
クロードはステラとどこへ出かけようかと行く場所を考えはじめた。
25
お気に入りに追加
488
あなたにおすすめの小説
恋を再び
Rj
恋愛
政略結婚した妻のヘザーから恋人と一緒になりたいからと離婚を切りだされたリオ。妻に政略結婚の相手以外の感情はもっていないが離婚するのは面倒くさい。幼馴染みに妻へのあてつけにと押しつけられた偽の恋人役のカレンと出会い、リオは二度と人を好きにならないと捨てた心をとりもどしていく。
本編十二話+番外編三話。
【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
私達、政略結婚ですから。
黎
恋愛
オルヒデーエは、来月ザイデルバスト王子との結婚を控えていた。しかし2年前に王宮に来て以来、王子とはろくに会わず話もしない。一方で1年前現れたレディ・トゥルペは、王子に指輪を贈られ、二人きりで会ってもいる。王子に自分達の関係性を問いただすも「政略結婚だが」と知らん顔、レディ・トゥルペも、オルヒデーエに向かって「政略結婚ですから」としたり顔。半年前からは、レディ・トゥルペに数々の嫌がらせをしたという噂まで流れていた。
それが罪状として読み上げられる中、オルヒデーエは王子との数少ない思い出を振り返り、その処断を待つ。
告白されてもうれしくない
Rj
恋愛
いつも友人のケビンの恋ばなを聞かされてきたステイシー。ケビンが同僚のポーラに失恋したとたん、ケビンから好きだと告白される。ずっとケビンから好きだといわれる瞬間をまっていたステイシーだが、わきおこったのは怒りのみ。告白されても嬉しくないなんて。
一話完結だったものに一話加え全二話になりました。(3/11変更)
いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!
夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。
しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。
ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。
愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。
いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。
一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ!
世界観はゆるいです!
カクヨム様にも投稿しております。
※10万文字を超えたので長編に変更しました。
政略結婚の鑑
Rj
恋愛
政略結婚をしたスコットとティナは周囲から注目を浴びるカップルだ。ティナはいろいろな男性と噂されるが、スコットの周りでは政略結婚の鑑とよばれている。我が道をいく夫婦の話です。
全三話。『一番でなくとも』に登場したスコットの話しです。未読でも問題なく読んでいただけます。
旦那様は大変忙しいお方なのです
あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。
しかし、その当人が結婚式に現れません。
侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」
呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。
相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。
我慢の限界が――来ました。
そちらがその気ならこちらにも考えがあります。
さあ。腕が鳴りますよ!
※視点がころころ変わります。
※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。
殿下が恋をしたいと言うのでさせてみる事にしました。婚約者候補からは外れますね
さこの
恋愛
恋がしたい。
ウィルフレッド殿下が言った…
それではどうぞ、美しい恋をしてください。
婚約者候補から外れるようにと同じく婚約者候補のマドレーヌ様が話をつけてくださりました!
話の視点が回毎に変わることがあります。
緩い設定です。二十話程です。
本編+番外編の別視点
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる