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文化祭準備 5
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文化祭の準備は着々と進んでいった。前日の今日は教室を迷路にする作業だけで終わる。机を二個ほど重ねて壁を作り、それに段ボールで張り付けていく。また窓からの光をさえぎるため窓ガラスに大量の段ボールが隙間なく敷き詰め、それを隠すためにカーテンを使っている。教室内は電気をつけないと真っ暗な状況になっている。
設計図に従いながら作業をする中、小野鬼さんの顔を見るとあの日の会話を思い出してしまう。彼女はそんな素振りを見せることなく、いつものように笑顔を振りまいていた。
道具はあらかじめ作っていたので展示の方は簡単に済んだ。そして今はファッションショーをしている。コスプレは全員がするのはさすがに費用が掛かるのでやりたいという人のみが参加することになっている。俺は最初参加する予定ではなかったのだが、あまりにもコスプレをしたいという人間が少なかったので参加することにした。
コスプレをするのはクラスの男子と女子の計8人。今回は顔のメイク抜きでのお披露目となった。男子はフランケンシュタイン、狼男、13日の金曜日で有名なジェイソン、そして俺は吸血鬼をすることに。上下黒の服に内側が赤で外側が黒のマントを羽織っている。最初は学ランにマントでもという案だったのだが、それでは変だとコスプレ用の服を買った。女子はゾンビのナースと魔法使い、貞子と雪女となった。
もらったお金を少しオーバーしたのでクラスのみんなで少しずつ出した。
「コスプレ組は主に脅かす側ね、それ以外の人は受付や広告配り、宣伝を当日頑張ってほしい。じゃあ、今日は以上で解散。明日は早めに来てくれ」
実行委員長の言葉を閉めに解散した。俺は来ていた衣装を素早く脱ぐと同じ班のメンバーに別れを告げて昇降口に向かった。
昇降口に着くと下駄箱近くの柱を背にスマホを操作している純恋が待っていた。
「お待たせ」
声をかけると彼女はスマホをポケットに入れて前を向いた。
「ううん、待ってないよ」
俺たちは革靴に履き替えると一緒に学校を出た。
「久しぶりだね、一緒に帰るの」
「何かと準備のせいでお互い時間が合わなかったもんな」
ここ1週間は昼休みは変わらないが帰りは先に帰っててとメッセージを送る日々だった。
「文化祭ってなんで一日だけなんだろうね」
「学校の都合だから仕方ないけどさ、他校では二日する場所もあるらしいよ」
「いいな~」
文化祭の話をしながら帰っているとなか、俺は今日も彼女に尋ねた。
「それでそろそろ教えてくれてもいいんじゃないか」
「何を?」
「出し物のことだよ」
彼女はあ~、とわざとらしく声を上げる。この一週間、彼女に出し物を聞くと話題を変えられた。まぁ、噂で彼女のクラスの出し物を知っているのだが、本人の口から聞きたいという気持ちがあるので聞いている。
「え~と、その~・・・そういえばお化け屋敷の方はどんな感じ?」
「す~み~れ~」
「はい、ごめんなさい。ちゃんと言います」
さすがにこれ以上は無理と彼女も判断したのだろう。彼女は露骨に肩を落とすと白状した。
「・・・メイド、ヒツジ喫茶」
「で、いつシフトが入っているの」
「そんなの絶対言えない!」
「そっかー、朝の10時からかー」
「なんで知ってるの!私言ってないよね」
彼女は何も言っていない。彼女は、だ。移動教室で三組を通った時に彼女といつも一緒にいる子が通りすがり際に俺に紙を渡したことは秘密と書かれていたので黙っておく。
「風の噂だよ」
「絶対嘘!」
彼女はぼそぼそと数人の名前を口に出すとため息をついた。
「知られているんならもういいや。私も覚悟しておく」
「何の?」
「裕二くんにあの恥ずかしい格好を見せる覚悟」
「いる?」
「いるの!ほかの人ならいいけど、裕二くんだけにはいるの」
両頬に手を当てながら恥ずかしがっている彼女を見ると自然と微笑んでしまった。明日が楽しみだ。
設計図に従いながら作業をする中、小野鬼さんの顔を見るとあの日の会話を思い出してしまう。彼女はそんな素振りを見せることなく、いつものように笑顔を振りまいていた。
道具はあらかじめ作っていたので展示の方は簡単に済んだ。そして今はファッションショーをしている。コスプレは全員がするのはさすがに費用が掛かるのでやりたいという人のみが参加することになっている。俺は最初参加する予定ではなかったのだが、あまりにもコスプレをしたいという人間が少なかったので参加することにした。
コスプレをするのはクラスの男子と女子の計8人。今回は顔のメイク抜きでのお披露目となった。男子はフランケンシュタイン、狼男、13日の金曜日で有名なジェイソン、そして俺は吸血鬼をすることに。上下黒の服に内側が赤で外側が黒のマントを羽織っている。最初は学ランにマントでもという案だったのだが、それでは変だとコスプレ用の服を買った。女子はゾンビのナースと魔法使い、貞子と雪女となった。
もらったお金を少しオーバーしたのでクラスのみんなで少しずつ出した。
「コスプレ組は主に脅かす側ね、それ以外の人は受付や広告配り、宣伝を当日頑張ってほしい。じゃあ、今日は以上で解散。明日は早めに来てくれ」
実行委員長の言葉を閉めに解散した。俺は来ていた衣装を素早く脱ぐと同じ班のメンバーに別れを告げて昇降口に向かった。
昇降口に着くと下駄箱近くの柱を背にスマホを操作している純恋が待っていた。
「お待たせ」
声をかけると彼女はスマホをポケットに入れて前を向いた。
「ううん、待ってないよ」
俺たちは革靴に履き替えると一緒に学校を出た。
「久しぶりだね、一緒に帰るの」
「何かと準備のせいでお互い時間が合わなかったもんな」
ここ1週間は昼休みは変わらないが帰りは先に帰っててとメッセージを送る日々だった。
「文化祭ってなんで一日だけなんだろうね」
「学校の都合だから仕方ないけどさ、他校では二日する場所もあるらしいよ」
「いいな~」
文化祭の話をしながら帰っているとなか、俺は今日も彼女に尋ねた。
「それでそろそろ教えてくれてもいいんじゃないか」
「何を?」
「出し物のことだよ」
彼女はあ~、とわざとらしく声を上げる。この一週間、彼女に出し物を聞くと話題を変えられた。まぁ、噂で彼女のクラスの出し物を知っているのだが、本人の口から聞きたいという気持ちがあるので聞いている。
「え~と、その~・・・そういえばお化け屋敷の方はどんな感じ?」
「す~み~れ~」
「はい、ごめんなさい。ちゃんと言います」
さすがにこれ以上は無理と彼女も判断したのだろう。彼女は露骨に肩を落とすと白状した。
「・・・メイド、ヒツジ喫茶」
「で、いつシフトが入っているの」
「そんなの絶対言えない!」
「そっかー、朝の10時からかー」
「なんで知ってるの!私言ってないよね」
彼女は何も言っていない。彼女は、だ。移動教室で三組を通った時に彼女といつも一緒にいる子が通りすがり際に俺に紙を渡したことは秘密と書かれていたので黙っておく。
「風の噂だよ」
「絶対嘘!」
彼女はぼそぼそと数人の名前を口に出すとため息をついた。
「知られているんならもういいや。私も覚悟しておく」
「何の?」
「裕二くんにあの恥ずかしい格好を見せる覚悟」
「いる?」
「いるの!ほかの人ならいいけど、裕二くんだけにはいるの」
両頬に手を当てながら恥ずかしがっている彼女を見ると自然と微笑んでしまった。明日が楽しみだ。
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