俺を襲ったのは優等生だった

加藤 忍

文字の大きさ
上 下
26 / 40

買い物デート 1

しおりを挟む
二学期が始まって一週間が過ぎた。小野鬼さんも学校やクラスに馴染んできた。自分から女子のグループに入ったりもしているのが時々見られる。

 学校案内をした次の日の朝は大変だった・・・ということはなかった。クラスの男子の数人が俺たちの後をつけて来ていたらしく、何もなかったことが明らかにされたからだ。尾行していたことはどうかと思うが、変に問題にされるよりはましな方かもしれない。

 幸いなことにそいつらはこの町の人間らしく、駅方面に向かっていた俺たちの後はつけていなかったらしい。もしつけられていたらと思うと冷や汗をかいてしまいそうになる。

「ようやく明日だね」

 いつもより雲が多い天気だが、今日も俺たちは屋上に来ていた。純恋はとてもうれしそうに言ってくる。

 明日は土曜日、彼女と買い物に行くと先週約束した日だ。

「どこまで行く?」

「そうだな・・・やっぱりショッピングモールが妥当な気がする。純恋がいつもどこで服を買っているのかわからないけど、あそこなら似合う服の一着や二着ぐらいはあるだろうし」

 あまり服には興味がある方ではないのでどこにどんな服屋があるのか俺にはわからない。もしかしたらこの付近にも服の専門店はあるだろうけど。

 そこまで考えた後ふと疑問に思った。

「そういえば京都に行ったんだよね?」

「うん、行ってきたけどそれがどうかしたの?」

「あっちの方がブランドの服が多いんじゃない?向こうでは何か買ったの?」

 俺が聞くと彼女は首を振った。

「おばあちゃん家、京都は京都でも田舎の方だから。服屋とか見て回るほどの店はないんだ」

「そんなに奥なの?」

「うん。小さいころは山に登ったり川に入ったりするのが好きだったけど、この齢になるとさすがにね。田んぼばっかりで何にもない場所だよ」

「そうなんだ」

 どうしてもこういった建物ばかりの場所に住んでいると田舎は少しあこがれてしまう。空気がおいしいとか、自然豊かでのどかとか。

「それで明日は・・・クシュン!」

 彼女は口もとを手で覆いながらくしゃみをした。

「大丈夫?」

「うん、大丈夫くしゃみが出ただけだから」

「気を付けた方がいいよ、今年はどうやら夏風邪が流行っているみたいだから」

 ニュ―スによると今年は去年よりも暑く、クーラーを使っている部屋とそうでない部屋の温度差が激しいところが多いらしい。クラスの方もクーラーをガンガンに使っている。しかし今日は曇っているので外にいてもそれほど熱いとは感じない。どちらかというと肌寒い方だ。だから二人で寄り添って腰を下ろしている。右側だけ彼女の温もりを感じる。

「うん、気を付ける。それで明日はいつも通り車内で会う?」

「そうしようか。一回駅を降りるのもあれだし。それとも各自で現地集合する?」

「ううん、少しでも早く会いたいから車内でいい」

「わかった。明日9時25分の電車に乗るから純恋はその七分後の電車に乗って来て。前から二番目の車内にいるから」

「わかった」

 話がまとまるとタイミングを見計らったようにチャイムが鳴る。

「教室戻ろうか」

「うん」

 俺たちは地面に置いていた弁当箱を手に取ると各自の教室に戻った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

リンデンヴェール〜乙女は吸血鬼から求愛される〜

城間ようこ(リンデンヴェール完結)
恋愛
幼い頃に親に捨てられ、施設で育った少女・和泉千香は『一般人』と『吸血鬼』が存在する世界で両者が共に学ぶ女子校に奨学生として通い、演劇部で吸血鬼の帝の血筋を引く直系の吸血鬼である宮牙美矢乃と組んで演劇に邁進する……が、美矢乃は一般人と吸血鬼が結ぶ『契り』をこれでもかと迫り続けている。 二人の過去、現在、頭を抱える千香とお構い無しの美矢乃の未来は? 恵まれずに育ち普通に生きたい一般人の千香、千香と共に生きたい吸血鬼の帝直系の令嬢である美矢乃の青春ラブファンタジー!

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

夫と息子は私が守ります!〜呪いを受けた夫とワケあり義息子を守る転生令嬢の奮闘記〜

梵天丸
恋愛
グリーン侯爵家のシャーレットは、妾の子ということで本妻の子たちとは差別化され、不遇な扱いを受けていた。 そんなシャーレットにある日、いわくつきの公爵との結婚の話が舞い込む。 実はシャーレットはバツイチで元保育士の転生令嬢だった。そしてこの物語の舞台は、彼女が愛読していた小説の世界のものだ。原作の小説には4行ほどしか登場しないシャーレットは、公爵との結婚後すぐに離婚し、出戻っていた。しかしその後、シャーレットは30歳年上のやもめ子爵に嫁がされた挙げ句、愛人に殺されるという不遇な脇役だった。 悲惨な末路を避けるためには、何としても公爵との結婚を長続きさせるしかない。 しかし、嫁いだ先の公爵家は、極寒の北国にある上、夫である公爵は魔女の呪いを受けて目が見えない。さらに公爵を始め、公爵家の人たちはシャーレットに対してよそよそしく、いかにも早く出て行って欲しいという雰囲気だった。原作のシャーレットが耐えきれずに離婚した理由が分かる。しかし、実家に戻れば、悲惨な末路が待っている。シャーレットは図々しく居座る計画を立てる。 そんなある日、シャーレットは城の中で公爵にそっくりな子どもと出会う。その子どもは、公爵のことを「お父さん」と呼んだ。

平凡な高校生活を送る予定だったのに

空里
恋愛
高校生になり数ヵ月。一学期ももうそろそろ終わりを告げる頃。 僕、田中僚太はクラスのマドンナとも言われ始めている立花凛花に呼び出された。クラスのマドンナといわれるだけあって彼女の顔は誰が見ても美人であり加えて勉強、スポーツができ更には性格も良いと話題である。 それに対して僕はクラス屈指の陰キャポジである。 人見知りなのもあるが、何より通っていた中学校から遠い高校に来たため、たまたま同じ高校に来た一人の中学時代の友達しかいない。 そのため休み時間はその友人と話すか読書をして過ごすかという正に陰キャであった。 そんな僕にクラスのマドンナはというと、 「私と付き合ってくれませんか?」 この言葉から彼の平凡に終わると思われていた高校生活が平凡と言えなくなる。

処理中です...