21 / 40
転校生
しおりを挟む
夏休みが終わり、いよいよ今日から二学期が始まった。久しぶりに制服を着ると堅っ苦しさを感じる。クラゲのキーホルダーの付いた学校指定のカバンを肩にかけながら電車に乗る。車内にはすでに多くの生徒が並んでいる。夏休みの出来事を話している人や旅行自慢をしている生徒など様々。
俺は一人降りるホームの窓際に立ってそれらの話に聞き耳を立てていた。
学校の最寄り駅に着くとすぐには学校に行かず、外の階段付近で人を待つ。その間スマホのニュースなどを閲覧していた。
「裕二くん!」
スマホをずっと見ていて彼女の気配に気づかなかった俺は手に持っていたスマホを滑らせた。それを見ていた彼女が両手で器を作ると俺のスマホをキャッチした。
「ごめん、ありがとう」
「こちらこそ、脅かす気はなかったの、ごめんね」
挨拶もしないでお互いに謝罪の言葉を口にする。彼女からスマホを受け取ると俺たちは学校の方に歩いて行く生徒の中に紛れ込んだ。
「じゃあ、またお昼に屋上な」
「うん、忘れないでね」
俺は自分の教室の前で彼女と別れると教室の中に入った。
「おはよう」
教室にいるみんなに挨拶すると男子がスマホを携えて集合した。
「裕二くんや、この写真の説明をしてもらおうか」
クラスメイトの一人がスマホの画面を俺に見せてくる。そこに写っているのは町中を歩く俺と純恋だった。
「え~っと・・・」
「言い逃れはできないぞ」
本当にその通りだった。学校帰りにたまたまならまだ誤魔化しようがある。たまたま会ったからとか、用事があったからとか。でもお互い私服で町を歩いている。たまたま会ったなんて嘘にしか聞こえない。
「さ~、どうなんだい」
これ以上誤魔化す必要はないと俺は判断した。別に隠したいわけではないし、さっきも教室まで二人で上がって来た。隠す気があるなら通学路を一緒に歩いたらはしない。だから俺は目の前の男子に言い放った。
「付き合っているよ」
その答えに目の前の男子がドミノのように倒れて行った。
「おはよう、ってどうした?」
後から入って来た大智が目の前の光景に疑問を投げる。
「裕二が鬼条さんと付き合ってるって・・・」
「ああ、そんなことか」
それを聞いた大智はなんでもない顔をした。
「俺、結構前から知ってたぞ」
「いつから!」
その答えにほかの男子ではなく、俺が聞いてしまった。大智は首を傾げながら思い出そうとしている。
「確か期末テストん時だったな。俺、家がこの辺だから勉強しに図書館に行ったら二人で向かい合って勉強してた時だな」
「その時はまだ付き合っていなかった」
「でも好きだっただろ?」
俺は無言で頷いた。
「何があった、お前ら?」
担任が教室に入って来て俺の前に倒れている男子を不思議そうに見つめる。
「いえ、なんでもないです」
「そうか、なら席に着け。ちょっと早いがホームルームを始める」
その言葉に倒れていた男子がしおれながらも席に着いた。
「今日は始業式の後、ロングホームルームをして終わりだ。連絡事項はない。だが・・・」
そこで担任は廊下の方を見た。
「今日は編入生を紹介する。入ってきてくれ」
その言葉に入り口のドアが開く。みんなが声も上げず入って来る生徒を見ている。
ショートボブの金髪の髪に可愛らしい大きな目、プルンと弾力のある唇。身長は低い女の子が教壇に上がった。担任は白いちょうくを手にすると彼女の名前らしきものを書き始めた。
「今日から同じクラスになる小野鬼おのき優佳ゆうかさんだ。東京から引っ越して来たそうだ。仲良くしてやれ」
担任の簡単な紹介の後、彼女も礼をして自己紹介をした。
「小野鬼優佳です。優佳って気軽に呼んでください。よろしくお願いします」
笑顔で話し終えた彼女に拍手が贈る。彼女はクラスを一望する。皆が拍手する中、俺と彼女の目が合うと彼女はそれから担任に「空いている席に着いて」と言われるまで目を逸さなかった。俺はそんな彼女を不思議そうに見ていた。
ホームルームが終わると女子が一斉に小野鬼さんの元に集まった。転校生あるあるだ。彼女は女子に全方面から囲まれた。男子も彼女に近付こうとするが外周にいる女子に拒まれていた。
「何で東京から来たんだろうな?」
席に座って一連の流れを見ていると大智が前から歩いてきていた。
「さぁ、家庭の事情だろう」
「そうだろうけどさ」
俺たちは彼女に直接聞かず想像を膨らませた。俺たちが聞かなくても今集まっている女子が聞いているだろうし、その話はいずれ俺の耳にも届くだろから。
俺は一人降りるホームの窓際に立ってそれらの話に聞き耳を立てていた。
学校の最寄り駅に着くとすぐには学校に行かず、外の階段付近で人を待つ。その間スマホのニュースなどを閲覧していた。
「裕二くん!」
スマホをずっと見ていて彼女の気配に気づかなかった俺は手に持っていたスマホを滑らせた。それを見ていた彼女が両手で器を作ると俺のスマホをキャッチした。
「ごめん、ありがとう」
「こちらこそ、脅かす気はなかったの、ごめんね」
挨拶もしないでお互いに謝罪の言葉を口にする。彼女からスマホを受け取ると俺たちは学校の方に歩いて行く生徒の中に紛れ込んだ。
「じゃあ、またお昼に屋上な」
「うん、忘れないでね」
俺は自分の教室の前で彼女と別れると教室の中に入った。
「おはよう」
教室にいるみんなに挨拶すると男子がスマホを携えて集合した。
「裕二くんや、この写真の説明をしてもらおうか」
クラスメイトの一人がスマホの画面を俺に見せてくる。そこに写っているのは町中を歩く俺と純恋だった。
「え~っと・・・」
「言い逃れはできないぞ」
本当にその通りだった。学校帰りにたまたまならまだ誤魔化しようがある。たまたま会ったからとか、用事があったからとか。でもお互い私服で町を歩いている。たまたま会ったなんて嘘にしか聞こえない。
「さ~、どうなんだい」
これ以上誤魔化す必要はないと俺は判断した。別に隠したいわけではないし、さっきも教室まで二人で上がって来た。隠す気があるなら通学路を一緒に歩いたらはしない。だから俺は目の前の男子に言い放った。
「付き合っているよ」
その答えに目の前の男子がドミノのように倒れて行った。
「おはよう、ってどうした?」
後から入って来た大智が目の前の光景に疑問を投げる。
「裕二が鬼条さんと付き合ってるって・・・」
「ああ、そんなことか」
それを聞いた大智はなんでもない顔をした。
「俺、結構前から知ってたぞ」
「いつから!」
その答えにほかの男子ではなく、俺が聞いてしまった。大智は首を傾げながら思い出そうとしている。
「確か期末テストん時だったな。俺、家がこの辺だから勉強しに図書館に行ったら二人で向かい合って勉強してた時だな」
「その時はまだ付き合っていなかった」
「でも好きだっただろ?」
俺は無言で頷いた。
「何があった、お前ら?」
担任が教室に入って来て俺の前に倒れている男子を不思議そうに見つめる。
「いえ、なんでもないです」
「そうか、なら席に着け。ちょっと早いがホームルームを始める」
その言葉に倒れていた男子がしおれながらも席に着いた。
「今日は始業式の後、ロングホームルームをして終わりだ。連絡事項はない。だが・・・」
そこで担任は廊下の方を見た。
「今日は編入生を紹介する。入ってきてくれ」
その言葉に入り口のドアが開く。みんなが声も上げず入って来る生徒を見ている。
ショートボブの金髪の髪に可愛らしい大きな目、プルンと弾力のある唇。身長は低い女の子が教壇に上がった。担任は白いちょうくを手にすると彼女の名前らしきものを書き始めた。
「今日から同じクラスになる小野鬼おのき優佳ゆうかさんだ。東京から引っ越して来たそうだ。仲良くしてやれ」
担任の簡単な紹介の後、彼女も礼をして自己紹介をした。
「小野鬼優佳です。優佳って気軽に呼んでください。よろしくお願いします」
笑顔で話し終えた彼女に拍手が贈る。彼女はクラスを一望する。皆が拍手する中、俺と彼女の目が合うと彼女はそれから担任に「空いている席に着いて」と言われるまで目を逸さなかった。俺はそんな彼女を不思議そうに見ていた。
ホームルームが終わると女子が一斉に小野鬼さんの元に集まった。転校生あるあるだ。彼女は女子に全方面から囲まれた。男子も彼女に近付こうとするが外周にいる女子に拒まれていた。
「何で東京から来たんだろうな?」
席に座って一連の流れを見ていると大智が前から歩いてきていた。
「さぁ、家庭の事情だろう」
「そうだろうけどさ」
俺たちは彼女に直接聞かず想像を膨らませた。俺たちが聞かなくても今集まっている女子が聞いているだろうし、その話はいずれ俺の耳にも届くだろから。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
それでも、精いっぱい恋をした。
花泳
恋愛
はるき、工業高校
バイクとメシが大好きな
鉄くさい作業着女子
あかね、付属高校
最近楽しいことは何もない
進路に迷える優等生
「明日も、がんばろうな」
交わるはずないと思っていた2本の線は、ひょんなことから寄りかかるように揃いはじめた。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
あなたが望んだ、ただそれだけ
cyaru
恋愛
いつものように王城に妃教育に行ったカーメリアは王太子が侯爵令嬢と茶会をしているのを目にする。日に日に大きくなる次の教育が始まらない事に対する焦り。
国王夫妻に呼ばれ両親と共に登城すると婚約の解消を言い渡される。
カーメリアの両親はそれまでの所業が腹に据えかねていた事もあり、領地も売り払い夫人の実家のある隣国へ移住を決めた。
王太子イデオットの悪意なき本音はカーメリアの心を粉々に打ち砕いてしまった。
失意から寝込みがちになったカーメリアに追い打ちをかけるように見舞いに来た王太子イデオットとエンヴィー侯爵令嬢は更に悪意のない本音をカーメリアに浴びせた。
公爵はイデオットの態度に激昂し、処刑を覚悟で2人を叩きだしてしまった。
逃げるように移り住んだリアーノ国で静かに静養をしていたが、そこに1人の男性が現れた。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※胸糞展開ありますが、クールダウンお願いします。
心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。イラっとしたら現実に戻ってください。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
宇相先輩は素行不良で言い訳ばかりするけど、そんな彼が大好きですっ!
みすたぁ・ゆー
恋愛
第一印象は最悪……。でも私、宇相先輩が好きになっちゃいましたっ!
高校1年生の比企胡桃(ひきくるみ)は風紀委員の仕事をしている時に素行不良な3年生の宇相百八(うそうひゃくや)とトラブルになった。百八は遅刻の常習犯で、ケンカばかりしているとの噂がある。
胡桃は完全に彼に目を付けられてしまい、不穏な空気が漂う。
そして胡桃はある日の放課後、体育倉庫の裏でちょっとした出来事に巻き込まれてしまい……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる