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お祭り編 1

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あれから毎晩電話をするようになった。時間的にはお互いが落ち着いた9時過ぎが多い。俺は用がないときはほとんど家にこもっていた。時々大智などから誘いがあれば一緒に遊んだりをする毎日だった。

 それは鬼条さんも同じでクラスの子とどこどこ行った、とかそういう話を多く聞いた。もちろん俺たち二人で出かけることもした。水族館みたいに遠いところには行ったりしなかったが、学校近くや俺の住んでいる町、彼女の住んでいる町もまわってみたりした。

 そんな日々を送っているとあっとゆう間に夏休みも残すところあと一週間になっていた。宿題は彼女と通話で話しながら進めた。時々テレビ電話でお互いの顔を見ながら話したりもした。

「あと一週間か」

「そうだね、早いよね」

「もう一か月欲しい」

「それは無理だよ。それにもう一か月休んだらまたもう一か月休みが欲しくなるよ」

「それもそうだな」

 彼女の言うことは一理あった。確かにもう一か月もらったらまた一か月休みが欲しくなるに決まっている。期限があるから夏休みは貴重なんだろうから。

「宮岡くん、夏の最後にもう一つ思い出作らない?」

「何かあるの?」

「うん、私の町のお祭り。一緒に回らない?」

「お祭りか~」

 確かに今年は祭りにはいっていない。去年までは俺の町にもあったんだが、開催に伴うお金が足りないと今年はやらないことになった。もしかしたら来年もその先もなくなるかもしれないが。

「花火も上げるからどうかな」

「花火か、いいね行こうよ。いつやるの?」

「夏休み最終日なんだけど空いてる?」

「大丈夫、用事もないし、鬼条さんのおかげで宿題は全部終わっているから」

「そっか。宿題を教えてよかった」

「集合時間とかはどうする?」

「それは前日に決めよう。毎日こうして電話しているんだし」

「そうだな」

 彼女に返事を伝えると電話の向こうで聞き覚えのある声が聞こえた。

「純恋、風呂空いたぞ」

 低い男の人の声。たった一度しか会っていないけど今でも思い出せる怖い顔だち。彼女のお父さんのこえだった。

「うん、今行く・・・ごめんね、今からお風呂入って来る」

「まだ入っていなかったんだ」

「今日は家族で外出してたから帰りが遅くなっちゃって」

「そっか、それはいいね。こっちは家族でどこかってこと少ないから」

「そうなんだ。あ!また呼んでる。そろそろ切るね」

「うん、温まっておいで」

「そうする。じゃあまた明日」

「また明日」

 彼女との電話を切ると手に持っていた漫画を読むことに集中した。かの借りおもしろいじゃん。大智に返した後自分で買うかな、まだ13巻だし。
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