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消し屋のダル

シンデレラストーリー

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「あのさ消し屋、珍しいじゃないか、今までに仕事を見せてって頼んでもずっと相手にしてくれなかったのにさ。」

「…嫌なら帰っでも良いんだが?」

「そうじゃないよ。
 ただ、何か引っ掛かるだけだよ。」

「…エイジヒル、着いたら時間を稼げ。」

「何で?」

「……早く着き過ぎるからだ。」

「あぁ、フルエが面倒くさくて早くでちゃったのね?」

「………そう言う所だ。」

「何で0時とかそんな遅くに引き受けたの?」

「……0時は、私が決めた。
……仕事のポリシーだ。
……シンデレラだ。」

「あのさ、シンデレラってどんな話か知ってる?」

「…深夜0時に魔法が解ける。
 後は蛇足だ。」

「いや、間違ってないけどさぁ。」

「…我々の同士が出て来て噴飯物の魔法の小道具を使う。
 どこで手に入れた?
 人間世界か? ゴーストツリーモールか?」

「妖精が魔法使うとか夢見過ぎだし、ガラスの靴履くと危ないとかキモいよな確かに。」

「……童話にツッコミを入れる様な惨めな妖精にはなるな。」

「お前が言うなよ。」

「……私はリスペクトしている。
 あの理不尽な妖精をな。」

「実際、あんな魔法使いみたいな妖精いるのかな?」

「…人間から見たら我々も魔法使いみたいな者だろうな。」

「僕からみたら、人間のがよっぽど魔法使いだけどな。
 ところで、木の組合の1番さんとか、人間界に居るウタ様とか大妖精と呼ばれる妖精は何が凄いんだ?」

「…….1番は、ゴーストツリーの開拓と組合の設立、街の管理、凄いのは実績だ。
 ウタ様は、特殊な環境で巨大化、莫大な妖素の塊でほとんどの妖精を感知出来る……音の妖精の姿を見る事も出来るらしい。
 何より、現地の人間からは神として崇められていると言う。」

「詳しいな。
 現実主義の君でもウタ様の知識は超人的だな。」

「…まだ常識の範囲内だ。」

「感知センサーを調節することで消えたり現れたり自由自在らしいな。」

「!…………………そうなのか?」

「わからんけど、聞いたことある。
 だってさ、ほとんどの妖精が見えたら、この世は妖精風呂だろ?」

「……そうか……そうだな.……」

 しばらくして、ダルとエイジヒルは、石焼きめだかに着いた。

 時間は、23時をそこそこ超えていた。 辺りは、真っ暗で、周りの店も全て閉まっている。見慣れた繁華街でも不気味な異世界に見える。

「…エイジヒル、時間稼ぎ任したぞ。」

「あのさ、さっきから思ってんだけどさ、別に外で時間潰してから行けば良いんじゃない?」

「……せっかくお前を連れて来たんだ。
 役に立て。」

「わかったよ。 ちょっと言ってやりたいことあるからちょうどいいや。」

「…かまわん。」

 ダルは、石焼きめだかの扉を開いた。


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