シスターレナに叱られたい!

雛山

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懺悔其の二十九 クズ妹

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 アタシが懺悔室に来るとすでに誰かがいるようだ。
 誰もいない場所に必死で祈りをささげているようだ、どうやら懺悔室を教会の方と簡易買いしているのかな?

 後ろ姿からその人物は小太りで背は低め、どうやら女性、オバちゃんのようだ。
 アタシはここじゃなく教会の方に向かうようにと言うべく、オバちゃんに声をかけようとしたが……

「宝くじが当たりますように、当たりますように、当たりますように……キエーーー!」
「……!」

 行き成りキエーって叫ぶなよ! アタシは身体をビクっとさせて声にならない悲鳴を上げてしまった。
 しかし、祈りかと思ったら……欲望丸出しの願いかよ。

「まったく、姉さんのパチンコ癖にも困ったものだよ」

 どうやらこのオバちゃんには姉がいるようで困ったヤツらしい。
 アタシはそーっとカーテンの裏へと向かう事にした。

「まったく、毎日パチンコばかりして……あげくに自分の娘の結婚資金に手を出して……情けない人だよ」

 自分の娘の結婚資金に手を出してまで、パチンコしてるなんてふざけたヤツもいるもんだ。

「しかも、ひと様の家のお金にも手を出そうなんて、我が姉ながら情けないったらありゃしないよ」

 とんでもないクソ野郎がいたもん……あれ? なんか半年近く前に聞いたことのある話だぞ?

「私が安西やすにしさんと話を付けたから良かったものを、そうじゃなければ警察に捕まってたところだよ」

 あのパチンカーのクズオバちゃんの妹かよこの人。
 しかし、独り言多いな。
 アタシはしばらく無言で妹オバちゃんの話……いや独り言に耳を傾ける。

「まったく、いつからああなっちまったんだろうねぇ……あ、昔からか」

 どうやら昔から、ああだったみたいだな。

「しかし、親はあんななのに娘は良い子に育ったもんだよ、あの子まで母親に似なくて良かったよ」

 あー、娘は真面目に育ったのか。アタシとは逆だね親を反面教師としたか。

「なんであの姉から、あんなに良い子が生まれたんだろうね。パチンコばかりして何もしないクズの母親を嫌な顔もせずによく支えてるよ」

 立派な娘さんじゃないか、そんな娘の結婚資金にまで手を出してたと思うと今更ながらに腹が立つってもんだね。

「あんな人じゃ、夫が逃げ出しても文句は言えないよ」

 旦那は逃げたようだな。そんな立派な娘がいるのに旦那の方もダメな奴だったみたいだね。
 アタシの両親みたいじゃないか。

「そう言えば、あのバカ姉は弟にも金を借りようとしてたね。パチンコする資金にするためだとかで、誰があんな人に貸すものかい」

 まったく自分の姉弟にも迷惑かけてるのかあのパチンカーオバちゃんは、もっとキツク説教しとくべきだったな。
 どうやら姉の借金かなんかを返すに宝くじが当たらないかな? って事みたいだったな。

「しかし、私も働けど何故か借金が減らないんだよねえ」

 なんだよ、この妹オバちゃんも借金あるのかよ……姉のための借金だったら泣ける話だが。

「やっぱ、あそこで単勝で四番に賭けとくべきだったんだよ。そうすれば借金少しは返せれたんだよ」

 ん?

「次の夏の二歳馬も単勝で行こう、馬単は当たったことが無いんだよねぇ」

 このオバちゃん……競馬鹿かよ!
 姉はパチンカスで妹は競馬鹿だったか……てことは借金て、そういう事かよ。
 少し同情してたのがバカみたいじゃないか。

「いやいや、三連単いけば逆転じゃないかい?」

 三連単とか馬単も当たった事ないなら絶対にやめとけよ。
 ってそうじゃねぇよ!

「お前も、姉貴と一緒だろうが!」
「ぎゃー!」

 アタシは最後まで聞いていようと思ったが、ついつい突っ込んでしまった。
 アタシが急にカーテンの向こうから顔を出したので、妹オバちゃんはビックリしたのか汚い悲鳴と共にひっくり返っている。
 少しすると妹オバちゃんは起き上がってきた。

「なんだい、びっくりしたね」
「なんかずっと聞いてりゃ、姉の事ボロクソ言って」

 妹オバちゃんは、だってしょうがないでしょみたいな顔をする。

「なんだいシスター、聞いてたのかい人が悪いね。しかししょうがないじゃないか」
「姉がパチンコでアンタが競馬で借金って、同レベルだろ」
「何言ってんだい、私は娘の結婚資金に手出したりしないよ」

 まあ、確かに。それは一理あるか。

「じゃあ、アンタはその辺り潔癖なんだな?」
「当然だよ、私は独り身だからね、自分の親のカードで金借りるくらいしかしないよ」

 成る程それじゃ娘の金は使えないな……ん?

「親のカードってお前やっぱ同レベルだろうが!」
「何言ってんだい! なんだから当然の権利だろ」
「見てるつもりって、要するに見てないんじゃねぇかよ!」
「そうともいうわね」

 とんでもないクズ姉妹だなこいつら?

「親が泣くぞ、いいから真面目に働いてさっさと借金返せ」
「なんだい説教臭いシスターだね」
「ここは教会の懺悔室だからな、説教くらいするさ」
「懺悔室? なんでそんなもんがここにあるんだい」
「教会だからだよ」

 何言ってるんだこの妹オバちゃんは……

「いいから、競馬とか宝くじに頼らずに借金ちゃんと返すんだぞ」
「ぎゃーぎゃーうるさいねぇ、わかったよ仕方ないなあ。この安西さんところから拝借したカードで返すよ」

 ぶつぶつ言いながら妹オバちゃんは懺悔室から出ていこうとする。
 しっかし、またカードか……って安西さんのかよ! お前等どんだけ安西さん嫌いなんだよ!

「まてや! 他人のカードで金借りて借金返すんじゃないよ!」

 アタシは妹オバちゃんの襟首をつかんで椅子に座らせる。
 そして妹オバちゃん睨みつける。

「ちょっとそんな怖い顔しないどくれよ……」
「いいや、前にアンタの姉もここに来たが、お前たちは腐ってやがる! 徹底的に説教してやるから覚悟するんだね」
「なんで、あんたみたいな小娘に説教されなきゃいけないんだい!」

 アタシは妹オバちゃんを無理やり立たせる。

「お前たちはクズだ! どうしようもないクズだ、いいかアタシがこれからアンタを最底辺の蛆虫から普通の蛆虫にまで鍛え直すから覚悟するように!」
「嫌だよ勘弁しとくれよ」
「やかましい! 口でクソを垂れる前にサーと言え!」

 アタシはオバちゃんのケツにタイキックを入れる。

「ぎゃー!」
「誰が叫んでいいといった!」

 ――
 ――――

 こうしてアタシのフルメタル式説教が開始された、その日は約半日にわたり妹オバちゃんの悲鳴が残月に木霊していた……あれ? そう言えば女性の場合はサーじゃなくマムか、今更だからいっか。

「サー! 真面目に働きますー! サー」
「声が小さい! もう一度!」

 …………
 ……

「だ……ず……げ……で」
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