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その二十六 まもなくか

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 そして更に一月ほど経った、ついに巫女が決まる日に近づいた、巫女選定の日は十一月の最終日の三十日である。うん暦が元の世界この場合安住祥子がいた世界だね、そこと全く同じなんだ。
 最終日には最後まで残った候補が街中央の神殿に集まり、最後まで巫女の刻印が残った者が巫女となる。この日の付近になると巫女候補が複数いた場合は、徐々に刻印が消えて候補から外れていく。

「ソニアも流石に大人しくしているな」
「そうですわね」

 僕がそう言うとユリアーナが応えた、そしてライネスが。

「しかしこのまま大人しくしてるような玉なのかい? ソニアって子は?」

 もっともな話だ、だがソニアもこれには干渉することはできない。クレアはリタイアすることなく今に至るし、カレンも復活している。残る方法はそれこそ暗殺なんて手段しかない。

「ソニアでもこれ以上はどうしようもないと思うよ、あとやるとしたら暗殺なんて手段しかない」
「物騒な話だね、しかしカナード王子そのソニアは暗殺なんかするタイプかな?」
「最近のアイツならやりかねないから怖いけど、そこは一応警備の者を増やすように掛け合っておいたよ」
「流石はカナード王子だ、ではおいそれ手は出せないね」
「そう願いたいね」

 校内にあるカフェに皆で向かう途中アルが慌てた様子で走ってきた。様子からしてただ事ではないようだ。

「あ、兄貴! ちがった兄さん! 始まったようだ!」
「ん? 何が?」

 アルは息を整えてから話し出した。

「せ、選定の第一弾だよ。カレンの巫女の印が消えたんだ。まずはカレンが候補から外れたと言う事だよ」

 アルの報告にこの場にいた人間が全部驚いた顔をする、カレンが候補から落ちたと言う事は残りはクレアとソニアと言う事になる、カレンという少女を詳しく知らないけどソニアより酷いと言う事はないだろう、そのカレンが落ちてソニアが残ったのは実に良くない。

「ソニアが残ってると言う事か……最悪だな」
「こうなると、クレア君とソニアで選定が始まるということか、厄介なのが残ったね」

 ライネスの言う通りソニアが残ったのはよろしくない、だがカレンは脱落したことによりソニアのターゲットからは外れたはず、そしてクレア一人を狙ってくるだろう、それはそれでこちらもやりやすい。

「とりあえずカレンは巫女候補でなくなったのならば、ソニアに狙われることはなくなっただろうね」
「後はクレアさんが巫女になってくれる事を祈るだけですわね」
「そうだね」

 念のためにクレアと一緒に帰るべきだろう、もし何かあるとしたら下校時の寮に着くまでの間になるだろう。
 ニーナとクレアに声をかけよう。

「ニーナ、クレア! どうだい? 今日は一緒に帰らないかい?」

 僕が声をかけると二人が寄ってきた、クレアの方も前にあんなことがあったがすでに吹っ切れているようでこちらも助かる。

「私はいつでも王子と共にありますよ!」
「はい、私も大丈夫です」

 二人がそう言うと、ライネスとユリアーナにアルまでこちらにやってきた。

「兄さん、それなら皆で帰ろう、もしクレアさんが襲われても人が多い方がいい。俺も剣には多少自信があるからね」
「あ、ボクは戦力として期待しないでくれたまえよ」

 アルは実際、剣の腕は割と立つ方だ、ライネスはぶっちゃけ僕以下である。

「私も戦力に数えないでくださいましよ、護身術程度ならできますがクレアさんを護って戦うとか無理ですのよ。いやしかし、いざという時は私が身を挺してでもクレアさんを護りますわよ」
「ふっふっふ。王子、いざという時はこの短剣が火を噴きますよ!」

 ユリアーナも期待はしないでおこう、流石に身を挺してまで護ることは避けたい。ニーナは最初から戦力として考えています。アルとニーナがいるなら簡単にはやられないだろう。

「皆さん、本当にありがとうございます。わたしなんかの為に」

 改めてクレアがお礼を言う、最近は常にお礼を言ってる気がするな。

「クレア君、気にしないでくれ。クレア君が巫女になることはボクたちのためでもあるんだしね」

 ライネスの言う通り、彼女が巫女になることは国のためでもあるのだ。
 というかクレアが巫女になってくれないと、国は滅ぶ、いやマジで割とシャレにならないレベルで。

「よし、それでは行こうか」

 僕は皆にそう告げると歩き出す。
 校内から出て少しするとアルとニーナが僕の方に来て耳打ちする。

「王子、前を向いたままでお願いします」
「二人ずっと、ついて来てる。一人は背筋がいい、背中か腰にでもナイフを隠し持ってると思う」

 どうやら、一緒に帰って正解だったみたいだ。

「通り魔を装って、街中で襲撃するつもりのようですね」
「たしかに、ここから寮までに裏道とか人通りの少ない道はほぼ無いからね」
「兄さんの命で、人通りの少ない道には巡回の兵士が回ってるからね、やるなら街中になる」
「ソニアのヤツ本当に襲撃まで考えてたか」

 僕たちはクレア達にも襲撃者がいる事を伝える、クレアは驚き不安な顔をするがニーナとアルが頷き安心させる。

「ニーナ、あの二人は簡単に制圧できそう?」
「ほぼ素人ですから大丈夫ですよ、学校の教官より強い事は無いと思います」

 大丈夫といううちの付き人、いつの間にそこまで強くなったんだ?

「アル、何かあったときの為にすぐに対処できるよう、ニーナを影に隠しながら後ろの方へ移動してくれるかい?」
「わかったよ」

 アルはすぐにでも剣を抜けるようにさり気なく柄に手を添える。

「ニーナはアルや僕たちの陰に隠れて、次の曲がり角に身を潜めて、あの二人を制圧してほしい」
「わかりました!」

 小柄な体を生かしアルたちを障害物にし隠れるニーナ。ほんとニーナお前は何者なんだ?
 僕はユリアーナとライネスに作戦を伝え、さり気なく三人でクレアと襲撃者の間に入り込む。チラっと後ろを見ると忌々しそうな雰囲気を出す襲撃者。
 ニーナは既に陰に潜んでおり、アルも警戒する。ニーナが失敗した場合すぐに動けるようにだ。
 僕は二人のように戦うことはできないので、いざという時は自身を盾にするつもりだ、ここを守り切れば、おそらくは僕たちの勝ちだろう。
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