上 下
21 / 31

その二十一 極悪令嬢に鉄槌を

しおりを挟む
 次の日、僕とニーナは学園内で走り回っていた。
 当然ソニアと関係のありそうな人物で、話のできそうな人物を探すためだ。まずはソニアとよく一緒にいる人物たちを聞き出す、ここで役に立つのが王子と言う立場だ。
 色々と強引に聞き出す、パワハラ? 知らんな。

 この間も僕とニーナは一緒に活動する、不謹慎だけど皆と何かをすると言う事が何故か楽しい。
 ただ初日は空振りに終わる、流石はソニア本当にこういった事には頭が回る。

「王子、今日は成果無しですね」
「まあまだ初日だ、ソニアは普段は頭悪いが悪事に関してだけは頭が回るからね。簡単には尻尾を出さないさ」

 初日は僕たちもだが、ユリアーナにライネスの方も成果は無かったようだ。
 地味にだがソニアの攻撃はクレアを蝕んでいっている、根も葉もない噂をばら撒いているのだった。

「まったく、人を使って根も葉もない噂を流すとはやる事が嫌らしい」
「ええ、まったくですわ」

 ライネスとユリアーナも噂の事は聞いてたらしい。
 僕たちが顔を合わせて話していると意外な人物が僕たちの所に来た。

「兄さんに皆さんも少しいいかな?」
「アル? どうしたんだい?」

 弟のアルファスがやってきた。

「兄さんたちが今日ソニア関係の事を調べてるのを見かけてね、俺も協力したいと思ったんだ」
「そいつは願っても無い事だけど何故だい?」
「兄さんの婚約者の事を悪く言いたくはないけど、ソニアは許せない」
「あぁ、ソニアの事は別に何と言っても構わないよ。ぶっちゃけ僕もアイツは好きになれないからね」

 弟が加わってくれるなら、下級生達にもアクションが起こしやすくなる、断る理由は無いな。

「それで何があって、僕たちに協力しようと思ったんだい?」

 僕が尋ねるとアルは少し照れたような顔をしてから真面目な顔になる。

「実は俺と同じクラスにも水の巫女候補がいてね」

 巫女候補三名もいたんだ、完全に知らない情報だ。
 アルがそう言うって事はその巫女候補に関する問題だろうね。

「あ、聞いたことありますよ。確か下級生のカレンさんでしたっけ? 男爵家のお嬢さんだったはずですね」

 ニーナは知っていたようだ。

「ああ、ニーナの言う通りその巫女候補カレンの事なんだ」
「何となく弟王子のいいたいことがわかった気がするんだ」
「あら? 偶然ですわねライネス、私もわかった気がしますわ」

 まあ、ここにきて巫女候補とソニアで分からない方がおかしいよな。
 分かるけどやはりそこはアルの口から聞くとしよう。

「で、そのカレンって子がどうしたんだい?」

 僕が先を促すとアルは頷き話し出す。

「ああ、そのカレンなんだけど。クレアさんみたいにソニアの嫌がらせを受けてるんだ」
「人をいたぶるのが純粋に好きだったソニアらしくないな、水の巫女を狙いに行ってるのか……」

 僕の呟きを聞いた、ライネスが口を開いた。

「か、カナード王子……純粋に人をいたぶるのが趣味って人としてどうなんだい?」
「クズですわね」
「はい、最低最悪のクソ野郎です!」
「兄さんの婚約者じゃなかったら、すぐに叩き切ってやるところだよ!」

 本当に人望が無いなソニア、婚約者の僕もどうやって追放しようか考えてるくらいだし仕方ないね。
 そして日に日にやつれていくクレア、見ているだけで辛くなるな。
 僕たちはクレアを励まし激励する。

「皆さん有難うございます、皆様方が味方してくれるだけでも助かります」
「何をおっしゃってるの、困った人を見捨てれるほど私達は落ちぶれてないのよ」

 力なく笑うクレアとそれを励ますユリアーナ達。
 ニーナが僕の手をぎゅっと握った。

「見てるのが辛いですね王子、早く何とかしないといけないですね」
「ああ、その通りだね。クレアのためにも、アルが言ってたカレンって子のためにも早くソニアをどうにかしよう」

 そう返し僕もニーナの手を握り返す。
 アルを加え、僕たちは明日も頑張ろうと改めて心で誓うのだった。

 ――
 ――――

「お嬢様、こちらが纏めた資料でございます」

 初老の男がうやうやしく頭を下げ、数枚の紙をソニアに渡していた。

「ボバハハ、流石ですね仕事が早い」
「恐れ入ります」

 ソニアは紙に目を通しつつ初老の男に尋ねた。

「そうだホプキンス、メリンダ姉さまの方はどうなってます?」
「メリンダ様なら大丈夫でしょう。ソニア様が水の巫女になられた後はきっと御協力してくださるかと思います」

 ホプキンスと呼ばれた男は意地の悪そうな顔でソニアの質問に答える。

「メリンダ姉さまは我が姉ながら、心配になってしまうほどのお人よしですからね」
「あぁ、そうそう。ソニア様のおっしゃっていたカホス男爵の息子の件ですが」
「ん? あぁ、私の足の裏を舐める係のボンクラですか?」

 ホプキンスの次の報告を聞き、紙から目を離しホプキンスの方を向くソニア、ニタニタとしたいやらしい表情でソニアはホプキンスに報告を促した。

「はい、カホス男爵への援助を打ち切るように指示しました所『何でもするので援助を続けてください』との色よい返事を頂くことが出来ました」
「ボバハハハハ! 愉快ですね。実際にその場にいられなかったことを残念に思います」
「ですが、これでソニア様が巫女になられた時の味方がまた増えましたな」
「良き国造りのためには仲間は多い方がいいですからね」

 二人の笑い声がこだまする。そしてソニアの部屋の扉の前で凍り付く人物がいた。

(……ソニアは何を誰と喋っているの? カホス男爵? 良き国造り? ニュアンスからして言葉の通りの意味ではないのでしょう)

 綺麗な長い金髪の女性、ソニアの姉のメリンダであった。
 彼女はソニア達の会話を聞き立ち尽くしていた、元々恐ろしかった妹が何か得体のしれない化け物のように思えていた。

(心を入れ替えたなんて言ってたけど、あれは嘘だったの?)

 部屋の中で誰かが立ち上がる音がした、メリンダははっとなり急いでドアの前から移動した。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

転生モブは分岐点に立つ〜悪役令嬢かヒロインか、それが問題だ!〜

みおな
恋愛
 転生したら、乙女ゲームのモブ令嬢でした。って、どれだけラノベの世界なの?  だけど、ありがたいことに悪役令嬢でもヒロインでもなく、完全なモブ!!  これは離れたところから、乙女ゲームの展開を楽しもうと思っていたのに、どうして私が巻き込まれるの?  私ってモブですよね? さて、選択です。悪役令嬢ルート?ヒロインルート?

ヒロイン気質がゼロなので攻略はお断りします! ~塩対応しているのに何で好感度が上がるんですか?!~

浅海 景
恋愛
幼い頃に誘拐されたことがきっかけで、サーシャは自分の前世を思い出す。その知識によりこの世界が乙女ゲームの舞台で、自分がヒロイン役である可能性に思い至ってしまう。貴族のしきたりなんて面倒くさいし、侍女として働くほうがよっぽど楽しいと思うサーシャは平穏な未来を手にいれるため、攻略対象たちと距離を取ろうとするのだが、彼らは何故かサーシャに興味を持ち関わろうとしてくるのだ。 「これってゲームの強制力?!」 周囲の人間関係をハッピーエンドに収めつつ、普通の生活を手に入れようとするヒロイン気質ゼロのサーシャが奮闘する物語。 ※2024.8.4 おまけ②とおまけ③を追加しました。

【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜

鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。 誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。 幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。 ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。 一人の客人をもてなしたのだ。 その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。 【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。 彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。 そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。 そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。 やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。 ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、 「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。 学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。 ☆第2部完結しました☆

モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~

咲桜りおな
恋愛
 前世で大好きだった乙女ゲームの世界にモブキャラとして転生した伯爵令嬢のアスチルゼフィラ・ピスケリー。 ヒロインでも悪役令嬢でもないモブキャラだからこそ、推しキャラ達の恋物語を遠くから鑑賞出来る! と楽しみにしていたら、関わりたくないのに何故か悪役令嬢の兄である騎士見習いがやたらと絡んでくる……。 いやいや、物語の当事者になんてなりたくないんです! お願いだから近付かないでぇ!  そんな思いも虚しく愛しの推しは全力でわたしを口説いてくる。おまけにキラキラ王子まで絡んで来て……逃げ場を塞がれてしまったようです。 結構、ところどころでイチャラブしております。 ◆◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◆  前作「完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい」のスピンオフ作品。 この作品だけでもちゃんと楽しんで頂けます。  番外編集もUPしましたので、宜しければご覧下さい。 「小説家になろう」でも公開しています。

【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った

五色ひわ
恋愛
 辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。真実を確かめるため、アメリアは3年ぶりに王都へと旅立った。 ※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

【最終章】どうやら俺はただのモブではなかったらしい、フラグは折る為にある!

砂月ちゃん
ファンタジー
申し訳ありません、しばらく不定期掲載になります。 乙女ゲームでただのモブだったはずの主人公。 だが、どうやら違ったらしい。 同盟国ユイナーダ王国で起こった出来事の所為でドミノ倒しで物語に巻き込まれて行きます。 国立ユイナーダ学園高等部⑦から数年後、同盟国で起こったもう一つの【爵位簒奪事件】の顛末とその後の冒険譚。 前作を読まなくても、本作だけで読める作品になっています。 やがて主人公はあの学園へ! 《フラグクラッシャー》のスキル持ちの主人公は幸せになれるのか? 初の転生物です。 ほぼ現地民視点で書いています。 現地民からしたら、《乙女ゲームヒロイン》も《召喚勇者パーティー》も、常識ある彼等にとっては迷惑な存在でしかない。 【乙女ゲーム】も【王道RPG】もぶち壊し、今作の主人ジョンことジョナサン(ネイサン)は今日も行く! (ジョナサンの愛称がネイサンだったので変えました。 本当にモブ視点な話しが入ります。 たまに猫神様達のお話しも入ります (=^ェ^=) ☆最終章 卒業式はやっぱりたいへん編 すっかり忘れていたけど、ここ乙女ゲームの世界だったよ! 騒動の元の第一王子の元側近達が、何やら企んでいるらしい。 異世界から遊びに来たお稲荷様のお使いや、ある理由で移住希望の大神(狼)等、これまでのコネを使って陰謀を阻止して、無事卒業式を迎えられるのか? ネイサン学院最後の大奮闘! 小説家になろう様、カクヨム様でも投稿しています。 カクヨム版は小説家になろう版、アルファポリス版と多少異なります。 カクヨム版 https://kakuyomu.jp/works/16816452220602333543/episodes/16816452220602337644

【完結】悪役令嬢のトゥルーロマンスは断罪から☆

白雨 音
恋愛
『生まれ変る順番を待つか、断罪直前の悪役令嬢の人生を代わって生きるか』 女神に選択を迫られた時、迷わずに悪役令嬢の人生を選んだ。 それは、その世界が、前世のお気に入り乙女ゲームの世界観にあり、 愛すべき推し…ヒロインの義兄、イレールが居たからだ! 彼に会いたい一心で、途中転生させて貰った人生、あなたへの愛に生きます! 異世界に途中転生した悪役令嬢ヴィオレットがハッピーエンドを目指します☆  《完結しました》

処理中です...