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その十七 よーしたまには買い物だその2

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「親父さん、アレ残ってます?」

 ニーナは元気よく親父に品物を催促していた、すると親父は店の奥から箱に入った五〇センチほどの短剣を持ってきた。

「コイツのことだろ?」

 親父さんはそういうとニーナに箱を手渡す、ニーナは箱の蓋を開け中身を取り出した。
 刃の長さは三〇センチほどで、煌めくような銀色の刀身をしたいかにも高そうな短剣であった。

「これですよ! 王子見てください。この透き通るような銀の刀身を、そしてこの柄の宝石」
「あ、あぁ。見事なつくりだね」

 短剣の刀身に頬ずりしてるよ、ニーナ……君はどこに向かってるんだ?

「こいつは良い品ですよ王子、お嬢ちゃんなんて一目惚れしちゃいましてね」
「へぇ、どうすごいんだい?」

 僕が尋ねると親父とニーナは目を輝かせ短剣の説明を始める。
 ミスリル銀がどうとか、宝石は雷の魔石で相手を痺れさせるのがどうたら、三〇分ほど説明されたが半分は右から左へ抜けていった。どうやら凄い武器らしい。

「……といった短剣なんですよ!」
「そ、そうか。ではそれを買おう。親父さんこいつはいくらなんだい?」
「はい、金貨二五枚です」

 え? パンピーの年収とほぼ同じ値段だと? 吉田君の包丁よりマシだが高いなおい!

「たっか!」
「カナード王子、そいつは熟練の冒険者でもなかなか手に入れれない良品ですからね」
「そ、そうなんだ」

 冒険者に転生じゃなくて良かった……

「いやー、まあ確かにニーナ嬢ちゃんが惚れるのもわかる一品ですよ」
「はいー、私もこの短剣に呼ばれてるような気がするほど気になってたんですよ」
「そ、そうなのか。わかった金貨二五枚だね」

 僕はサイフから金貨を取り出し親父に渡す。
 親父は金貨を受け取ると数を数える、その間もニーナは短剣を持って眺めて変な顔をしている。

「丁度ですね、毎度あり」

 ここでの買い物を済ませ店を出る、ニーナはホクホク顔だった。

「これで王子を確実に護ることができますね!」
「はは、期待しているよ」

 少し喉が渇いたので、お茶でも飲んでいこうとニーナに提案する。

「いいですねー、王子とお茶、ふふふ」
「では、適当にそれっぽそうなカフェに入るとしよう」

 僕は近場の少し洒落た作りのお店に目を止める。店構えは雰囲気がよさそうだ。

「よし、ニーナあそこの店にしよう」
「わかりました!」

 僕たちは店の方に向かった、扉をくぐるとチリンチリンと鈴の音が響く。お店の中もなかなか洒落た作りのカフェだった。

「いらっしゃいませー」

 給仕の女性が僕たちの方へ向かってやってきた。

「あれ?」
「あ」

 給仕の女性はクレアであった、どうやらここで働いているようだ。

「や、やあ。奇遇だね」
「カナード王子……」

 クレアも僕たちを見て驚いていた、そしてチラっとニーナの方を向くと……ムスーっと膨れていた。

「と、とりあえず席にご案内しますね」

 そそくさと歩いていくクレアの後を僕たちはついていくことにした、席に案内するとクレアは
 注文を聞いてきた

「ご注文は何にいたしましょう?」
「僕はコーヒーをアイスで」
「私はレモネードでお願いします!」

 ニーナが何故か勝ち誇った顔で注文した、何故勝ち誇る? 僕とニーナの注文をメモするクレア。うん給仕の服が似合っていて可愛いな。
 他の男性客もチラチラとクレアを見ている、分かるぞその気持ち。

「でも、なんでクレアさんここで働いてるんですか?」

 ニーナが聞くとクレアは苦笑いをして答えてくれた。

「うちは騎士と言っても貧乏でして……お小遣いは自分で稼がないといけないんですよ」
「そういえば前も言っていたな」

 クレアは前にも言っていたなそんなことを。しかしこれで確定した、この世界はゲームに瓜二つだが決定的に違う世界なんだと。ゲーム内ではクレアはアルバイトなんてしていないし貧乏騎士でもここまでではなかった。
 どうやら世界線が違うというべきかな。そうなるとクレアと結ばれなくてもいいのかな?
 僕はふと目の前の少女を見ながらそう思っていた。

「だがソニアがいる限り、明るい未来は無いな……」
「「?」」

 ぼくの呟きに二人の少女は不思議な顔をしていた。

「カナード王子何かあったんですか?」
「王子何か言いましたか?」
「いや、何でもないよ」

 ゲームとここまで違うとなると、もう先の事は分からないと言っていいだろう、ゲーム知識のアドバンテージはないって事になるね、そうなるとソニアをどうやって対処するか? ただゲーム関係なしにアイツと一緒になったら破滅すると思う。
 そうなると協力者が欲しいな、ただどうやって協力を仰ぐかだなぁ。たとえ破滅しなくてもアレが嫁さんは嫌だよ、性格も容姿も最悪だし、アレは無い。
 クレアは厨房にオーダーを通し、少ししてからこちらに注文の品を持ってきてくれた。
 そして注文の品を持ってきたクレアはニーナと談笑している、そんな少女二人を僕は眺めていた。

「やはり慣れてる人がいいなぁ……」
「王子、独り言多いですよ」
「さっきもですけどカナード王子大丈夫ですか?」
「……あぁ、うん。疲れてるのかも」

 口に出す癖でもあったのか? 安住祥子時代にもたまに口に出してた事があったなぁ、注意しよう。
 色々と考える事が増えたかな、二人の少女を眺めつつコーヒーを口に運んだ……あまり美味しくないなこのコーヒー……
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