77 / 114
終章 勇者侵攻
第七十五話 田中から牡丹餅ですわ!
しおりを挟むザルバを捕まえてから二日が経ちました。昨日はワタクシ達も街の復興を手伝いをしておりましたわ。
そして、そのついでに数名の方に魔王領への引っ越しを勧めておきます。
「マウナさんにマナカさん、本当にいいのか?」
先日魔王領に来ないかと声をかけたうちの一人、熊の干物亭のランジスさんがワタクシ達の所に来ております。
「はい、我が魔王領にて支援をさせていただきたく思います」
「マウナさんの領で宿を営んでいただけるのなら、建物はこちらで用意いたしますわ。それは先日仰ったとおりですわよ」
「確かにここでの宿は、ああなっちまったからなぁ」
「皆さまには世話になっておりますので、ワタクシとマウナさんからの恩返しですわ」
ええ、この大惨事。せめてワタクシ達に関わった人だけでも恩返しの意味も込めて、魔王領の移住を勧めておりますのよ、ここの国王に怒られそうですけど気にしませんわー。
人間の住民も欲しいですからね。
「わかった、その言葉に甘えさせてもらおう」
「ええ、是非そうしてくださいな」
宿屋ゲットだぜー!
「ゴブリン達を復興手伝いのために呼びましょうか?」
「いまはやめておきませんこと? 討伐されますわよ」
マウナさんの提案を却下します
そんなこんなでワタクシ達も復興の手伝いをしております。
――
――――
そしてさらに二日が経ったところ、ギルドに兵士が入ってきましたわ。
「失礼する、ガリアス殿はおられるか?」
兵士がガリアスさんを探してるようですわね。
「ガ、ガリアスさんですか? よ、呼んできましょうか?」
ワタクシ達と治療をしていた、アルティアさんが奥に向かって行きましたわ。
ワタクシもアースヒールなる魔法を覚えましたのよ!
まあ、体力が徐々に回復していく魔法なんですけどね、しかも大地に体の部分を付けていないといけないという制限付きの魔法ですわ、ようするにベッドに寝てると意味のない魔法ですわね……
アルティアさんが向かってから、五分ほどするとガリアスさんと一緒に戻ってきましたわね。
「ああ、待たせたな」
兵士はガリアスさんに手紙を渡すと。
「ガリアス・バーステンとマウナ・ファーレ一行は至急王城に来たれし。国王が今回の事でお礼がしたいとの事、そして話がしたいそうだ」
「私がエルハリス王に?」
「田中から牡丹餅……棚から牡丹餅ですわね」
何という幸運。国王と謁見ですわよ。
これは同盟することも可能ですわね。
「あらぁ、国王とか懐かしいわねぇ」
「え、え? ベ、ベティさん。こ、国王に会った事あるんですか?」
「えぇ、昔ちょっとねぇ」
「――国王って誰?」
「この国で一番偉い人でありますな」
「――おお」
一行という事は彼等もですわね、そりゃそうですわね。皆様頑張っていましたものね。
「マウナさん、これはまたとないチャンスですわよ」
「は、はい。そうですねうまく同盟できれば……」
「ええ、魔王領の恩恵は大きいですわよ」
では兵士とガリアスさんに、ワタクシ達全員も参加することを伝えます。
「それでは、すぐにでも出発したいがどうか?」
「わかった、準備するから少し待ってくれ」
「了解s他、では二時間後にここで」
「ワタクシ達もそれでよろしいですわよ」
こうしてワタクシ達とガリアスさんは、王都に向かうことになりましたわ。
――
――――
ここはとある部屋。
小太りの男とハゲた男が椅子に座って酒をあおっていた。
するとそこに兵士が入ってきた。
「報告します!」
「なんだ? あと、お前たちなんでいつもノックもせずに勝手に入ってくるんだ?」
小太りの男が文句を言うが兵士は無視して話を続ける。
「サルジーン王都陥落しました」
「思ったより時間がかかったが、まあ誤差範囲だな」
小太りの男は、可もなく不可もなくといった顔で報告を聞いていた。
そして極めて冷たい声で指示を出す。
「では、サルジーンの貴族、兵士諸君に革命軍全員を処刑しろ」
「全員ですか?」
「そうだ、反発されて反乱でもされたら面倒だ。そして死体は全部ゾンビ兵として運用する、簡易ソースフェールをありったけ用意しろ」
「わ、わかりました!」
「国民どもは強制労働者として鉱山にでも連れていけ」
「は!」
報告に来た兵士は敬礼すると部屋から出て行った。
「概ね予想通りか」
「ああ、そしてそろそろセンネル達が動くはずだ」
「思った以上に兵士がいたからな、少してこずったがその分ゾンビ兵が多く手に入るからな」
男二人が話していると慌ただしく兵士が一人やってきた。
「緊急の報告です!」
「どうした?」
ハゲ男の大臣が返事をする。
「は! コルリスに大量の紅蓮孔雀が発生し被害を拡大しています。街は壊滅状態との事」
兵士の報告に二人は目を丸くする。
「バカな! 予定より一ヶ月は早いじゃねぇか!」
「無能だと思ったが、下の者を制御しておくこともできないほどの無能だったか」
「……報告御苦労下がってよいぞ」
大臣が兵士をさがらせると、二人は同時にため息をついた。
「センネルのバカめ、もう少し役に立つと思ったが……」
「どうするのだ?」
「仕方ない、今ここでセンネルから俺たちの事、いやこの国の事がエルハリス国王の耳に入るのほうが不味い」
小太りの男が言うと大臣は頷く。
「すると、センネルは粗末するしかないか」
「ああ、そうだな」
センネルを始末する事を大臣が提案すると男は頷いた。
「暗部を動かせ、確実に消すために上位者を向かわせろ」
「そう言えば、暗部が数名逃げ出したようだな」
大臣の発言に男は目を丸くする。
「この国って逃げる相手に寛容すぎないか? 普通は追っ手を差し向けたりするだろ」
「ああ、儂もそう思ってはいるんだが」
「とにかく、センネルは確実に消すんだよ、しかも急げ」
「うむ、了解した。では儂は暗部の者に話をしてくる」
大臣は部屋を出て行った。
「あの大臣、良く考えると割と俺の部屋に入り浸ってるよな……」
小太りの男は酒をグイっと人のみすると呟いた。
「仕方ない予定を早めるしかないか……サルジーンの方を急がせるか」
0
お気に入りに追加
75
あなたにおすすめの小説
神よ願いを叶えてくれ
まったりー
ファンタジー
主人公の世界は戦いの絶えない世界だった、ある時他の世界からの侵略者に襲われ崩壊寸前になってしまった、そんな時世界の神が主人公を世界のはざまに呼び、世界を救いたいかと問われ主人公は肯定する、だが代償に他の世界を100か所救いなさいと言ってきた。
主人公は世界を救うという願いを叶えるために奮闘する。
英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜
駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。
しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった───
そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。
前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける!
完結まで毎日投稿!
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる