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終章 勇者侵攻
第七十四話 虎狩りその後
しおりを挟むさて、ザルバ達を尋問しないといけませんわねぇ。
ワタクシ達は今、冒険者ギルドの一部屋に集まっております。
厳重に拘束された灰色の虎のメンバーに対しての尋問ですわ、本来なら警備兵の仕事ですが今は街があんな状態で、警備の者も火事場泥棒など取り締まるために総出ですのよ。
そこで捕まえたワタクシ達と元ギルマスのガリアスさんにアーシアさん、警備兵の中の記録係が立ち合いの元で尋問という名の素敵拷問タイムの始まりですのよ。
まあ、ワタクシにそんな趣味はないのですけど。
「さて、お前たち何をしたかわかってるのか? 紅蓮孔雀の卵の捕獲は禁止されてるのは知ってるはずだ」
ガリアスさんが、代表で尋問をしますわ。
「ああ、知ってるさ。だが五〇〇万リシェの依頼となればやるだろ?」
「そんな事のためにこの街をこんなにしたのか?」
ガリアスさんが怒気を込めてザルバに言います、しかし悪びれた様子もなくザルバがいいました。
「結果、こうなっただけだ」
「なんだと!」
ザルバの言葉にカッとなったガリアスさんが、ザルバの髪を掴んで上を向かせますわね。
「お前たちのうかつな行動で、どれだけの人に迷惑がかかったかわかってるのか!」
「知らねぇな!」
「死者も出てるんだぞ!」
ガリアスさんは怒りを露わにしておりますわね、冷静なワタクシも正直怒りを抑えられそうもありません、ですがここは冷静にいかねばなりません。
「ガリアスさん、今は抑えましょう。まずは黒幕を聞きださないと」
アーシアさんが冷淡な声でガリアスさんを諫めます。
ガリアスさんも少し落ち着くと、アーシアさんの言葉に頷きました。
「そ、そうだな」
「ガリアスさん、単刀直入に誰に依頼されたか聞くのがよろしいかと思いますわ」
ワタクシも意見しますわ、さっさと吐かせてこいつ等には償わせねばなりませんものね。
「と、いう事だ。時間が勿体ない、さっさと誰がお前たちに紅蓮孔雀の卵を、何のために持ってこいと言ったのか言え」
「商品の調達だよ」
「商品だと?」
割と素直に話し出しますわねぇ。
「噂になってる闇市の商品だな?」
「ああ、正確にはオークションだがな。紅蓮孔雀の卵なら確実に五〇〇万以上の値が付く」
「なるほど、な。そうなると黒幕はやはりセンネルか……」
「なんだ調べがついてるんじゃないか」
くっくと笑うザルバ、どうも諦めてるようですわねぇ。
「やけに素直に話しますのね?」
ワタクシが声をかけると、ザルバはワタクシの方に顔を向けます。
「どうせ俺たちは終わりだからな。まあ、死なばもろともってヤツだな」
「なるほど、実に分かりやすいシンプルな理由ですわね」
「ああ、まあ。運が良けりゃ減刑になるかもってのもあるんだがな」
こういった時は仲間意識の薄さが助かりますわね。
「減刑になるかはワタクシ達が考える事ではありませんわね」
「そうだな、刑を決めるのは俺達じゃない。が、一応素直に答えた事は伝えてやろう」
「ああ、そうしてくれ」
ん? あっさりと終わってしまいましたわね? 良い事ではあるのですが……なんといいますか拍子抜けすぎて逆にどうしよう、そんな感じですわね。
そして、逆に何か引っかかるのですのよね。
「意見具申よろしいでしょうか?」りかいして
「あら? 中尉どうされました?」
中尉も何か気になっているようですわね。
そして喋るキノコである中尉を見て、ザルバ一行も目を見開いて驚いた表情で中尉を見ておりますわね。
「は! 気になる事があります」
「気になる事ですの?」
「はい、以前も申し上げた事であります。自分にはどうもセンネルとやらが一人で行ってるようには思えないのであります」
「あぁ、言っておりましたわね。センネルはそこまで優秀じゃないと」
なるほど、そのことをザルバ達に聞こうという訳ですわね。
「まあ、センネルは優秀ではないな」
「えぇ、アイツって無能よねぇ」
「はい、ぶっちゃけバカですね。金と権力だけの無能です」
ガリアス、ベティにアーシアさんまで加わって無能の主張しておりますわね。
ここまで言われるという事は相当無能なようですわね。
「ザルバとやらに聞きたいのでありますが」
「お、おう。なんだ?」
「お前たちに直接指示していたのは、センネルで間違いはないのかと?」
ザルバは少し考えると。
「そう言えば、最近はセンネルのヤツに直接会う事は無かったな。大体は使者がやってきてソイツが指示を出してたな」
「なるほどであります」
それだけを聞くと中尉は納得したようですわね……多分、納得してるはず。
「自分の考えが正しければ、この街を攻するために紅蓮孔雀の卵を奪わせたのではないかと思います」
中尉の言葉に全員が耳を傾けます。
「コルリスの街から戦力である冒険者を引き上げさせ、街に大ダメージを与える。ここまでが目的であったのでしょう」
「中尉どういうことだ?」
「は、自分は最初センネルのクーデターが目的だと思っておりましたがこの線は消えました。ザルバ達の話でクーデターの線は無いと思っております」
センネルの単独犯ではないと言いたいようですわね。
「ザルバ達の話を聞くと、どうも使者とやらがセンネルに入れ知恵をしてるように思えるのです。情報が少ないため使者がどこの者かは分かりませんが、おそらくですが自分の予想ではチヨルカンではないかと思うのです」
「チヨルカンですか、魔王領の三分の一を奪い、私の国を滅茶苦茶にした小国……」
「おそらくでありますが、チヨルカンの狙いはこの国の王都かと思います」
コルリスを沈黙させておけば進軍が楽になるということですわね……ん?
「中尉、お待ちになって」
「なんでありましょう?」
「チヨルカンがエルハリス王都を攻めるなら、不毛の地を通るかファーレ魔王領を通らねばなりませんのよ?」
「おそらくでありますが、魔王領襲撃はチヨルカンの威力偵察であったのではないでしょうか?」
五年も前に威力偵察って意味わかりませんわね……
「そしてその結果、魔王領は脅威でないと思っているのでしょう。むしろ占領して前線基地にでもするつもりなのでしょう」
「五年間も舐められていたって事ですのね」
「舐めているというよりは、五年前の襲撃で威力偵察と共に勝手に魔王領が潰れる判断をしていたと思われます」
否定できませんわね……ワタクシが召喚されなければそうなってたかも知れませんものね……
「う……否定できませんね。マナカさんがいなければそうなっていたかもしれません」
マウナさん自分で言ってて悲しくなっておりますわね。
さて、何をもって中尉がチヨルカンが黒幕と思ったのでしょうか?
「で、実際に中尉はどうしてチヨルカンが動いてると思いましたの?」
「タイミングであります。センネルの活動が活発になってきたのと、サルジーンのクーデターであります」
「あらぁ? 何でクーデターなのよ?」
「ベティさんの言う通りですわね、何故クーデターなのかしら?」
時期は確かに合いますが、理由は不明ですわねぇ。
「クーデターはおそらくチヨルカンの安全確保と戦力増加の意味合いがあるのではないでしょうか?」
「クーデターが成功した瞬間を狙ってサルジーンを吸収し戦力を増やすと言ったとこですの?」
「おそらく」
「そして、増やした戦力でファーレ魔王領を占領し、魔王領を前線基地にしエルハリス王都を目指すのがチヨルカンの狙いと目的という事ですの?」
小国が大国を攻め落とすための秘策にしてはお粗末な気もしますわね。
「流石にそれでは戦力が足りないのではなくって?」
ワタクシがそう言うと、中尉が答えます。
「そのためのセンネルではないのでしょうか?」
「それだけでも足りないような気もしますわね」
「チヨルカンには勇者がいるのでありましたな」
「はい、勇者を擁しているから、周りからは手を出されないというのがチヨルカンですね」
勇者がいるから無茶が可能ということですのね……
「勇者を中心とした戦力なら、エルハリスを落とすことも可能かもしれないな」
ガリアスさんは中尉の発言に頷いておりますわね。
「ならば、次はセンネルでもぶっ飛ばして真実を聞き出しましょう」
「お嬢ちゃん、待てって。下手すりゃ他の上位冒険者を相手にすることになっちまうから、落ち着けよ」
拳を掌に打ち付けて気合を入れてたところ、ガリアスさんが止めてきます。
「とりあえず、この事は国王に報告してある。何か手を打ってくれるはずだ」
「ふーむ、ワタクシが直接ぶっ飛ばしたいのですが……」
「とりあえず、今日は休んでくれ。俺たちは街の方を手伝ってくる」
「ええ、そうさせていただきますわ」
取り合えず、今日はワタクシ達はここで休むことにしましたわ。
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