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第四章 再建準備編

第六十五話 アーシアさんとランチ

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 次の日になったので私はアルティアさんを迎えに孤児院に向かう事にします。
 昨日のうちにバウス達には今日の事を話してあるのでバウス達はシェンナ、コリーを連れて馬車で魔王領の方に向かっております。

「お、おはようございます」
「おはようございます」

 相変わらずアルティアさんは人見知りです、私も前までは少し人と接するのは苦手でしたがマナカさんのおかげで昔ほどは苦手ではなくなりました、ですがアルティアさんはまだ少しどもってしまうようです。

「そ、それで今日はギルドに向かうんですね?」
「はい、ガリアスさんが言ってた事が本当なら冒険者の数が減っているはずです」
「か、確認ですね」
「はい、アーシアさんに会ってみようと思っています」

 アーシアさんは優秀で本部に勤めていたが、優秀がゆえに地方に飛ばされてきた方です。
 そのアーシアさんならガリアスさんに協力もされてると思っておりますので、会って確認すべきと思います。

「わ、わかりました。ではさっそく向かいましょう」

 私達は早速冒険者ギルドに向かいます。
 ギルドの付近は少し前まで賑わっていたのですが今は前ほどの活気が無いように見えます。

「つ、つい先月まではもっと、か、活気があったのに……」
「ガリアスさんの言ってた事は本当ですね」
「じ、上級の冒険者を王都の本部に集めてるという、は、話ですね」
「ええ、そうです」

 私達はギルドに入っていきます。
 ギルド内も人が少なく以前より閑散としています。
 カウンターではクエスト受注の仕事をするアーシアさんの姿を発見できました。
 テキパキと仕事をこなして行くあたりやはり優秀な方のようですね、そして区切りがついたようでアーシアさんが私たちの姿を見かけるとカウンターから出てこちらに向かってきました。

「あはようございます、アルティアさんにマウナさんでしたね?」
「ええ、そうです」
「今日は二人だけですか? あなた方のパーティーがこの街に残ってくれてるのは重畳ですね」

 やはりガリアスさんの言っていたことは本当のようですね。
 私は確証を得るためにアーシアさんに話しかけました。

「今日は人が少ないんですね」
「ええ、ですから貴女方が残ってくれるのは有難いんですよ、難易度の高い依頼もこなしてくれそうですからね」
「ですが、私達はまだペナルティで依頼を受ける事が出来ないんですよね」

 あと二ヶ月近くは依頼が受けれません、残念な事です。

「お昼は空いてますでしょうか? 私はもう少ししたらお昼休憩になります。そこで詳しく話しませんか?」

 アーシアさんからのお誘いです、これは受けるべきですね。

「そうですね。では、お食事の話を受けましょう」
「わ、わかりました」
「では、どこで食事しますか?」
「く、熊の干物亭で、い、いいですよね?」

 妥当ですね、あそこなら少し込み入った話も可能です。
 熊の干物亭かムッカのどちらかになりますが、食事もとなると熊の干物亭ですね。

「熊の干物亭ですね、わかりました。では休憩の時熊の干物亭に向かいます。あと三十分程度なのですぐに行けると思います」
「で、では私達は先に、む、向かう事にしましょう」
「では、アーシアさん後程」

 私達は熊の干物亭に向かう事にしました、先に行き奥の席を確保しておくことにします。
 私達が奥の席を取り少ししたらアーシアさんが来たので此方である事を知らせます。

「おまたせしました」
「わ、ワタシ達も少し前に、き、来たところなので大丈夫です」
「熊の干物亭はあまり来たことがありませんね」

 ならばショーユメニューを勧めるべきですね。

「オススメはシューユを使ったメニューですよ」
「冒険者の間で流行っている料理ですね、なるほど熊の干物亭で出されている料理でしたか」

 私達はそれぞれがショーユを使ったメニューを頼みます。私はバターショーユで焼いた魚です、これを考えた人は神です。

「おまちどうさん」

 料理が運ばれてきます、この香ばしい香りがたまりません。
 シェリーさんとアニタちゃんがテーブルに料理を並べていきます。

「何という良い香り」

 アーシアさんもこの香りにご満悦ですね。
 私達は食事を開始すると共に現在のギルドの状況を聞きます。

「実際、ギルドはいまどうなってるんですか?」

 私がストレートに聞きます。
 アーシアさんが舌鼓を打っておりましたが、少しだけ真剣な目をすると。

「その聞き方……やはりあなた達には話しておくべきですね」

 私達は先に食事を済ませると、改めてアーシアさんが口を開きます。

「まだ完全ではありませんが、冒険者ギルドはほぼセンネルに掌握されています。ギルドの新しい運営にセンネルの息がかかった貴族が就任しています」
「こ、ここでそんな事を話しても、だ、大丈夫なんですか?」

 今更ですがアルティアさんの心配はごもっともです。

「問題は無いでしょう、センネルという男は正直無能です。このコルリス支部はそこまで重要視はされていませんので監視はそこまで厳しくは無いですね」
「それで実際の所ギルドで何が起きてるのですか?」

 改めて私はアーシアさんに尋ねます、するとアーシアさんは現在のギルドの状況を語ってくれます。

「まずは、人員の大幅な入れ替えですね。これは皆さん既に気付いていることですね。ギルド本部に言い方は悪いですが有能とは言えない方を集めており、やり手の方々を地方へと追いやっています」

 まず最初に気付いた点ですね。

「そして最近は不思議と王都の辺りでの依頼が増えていますね、しかも割と難易度の高い長期任務です」
「なるほど、ガリアスさんがどうやら上位の冒険者を王都に集めているという話をしていましたが、どうやら本当なようですね」
「も、目的はなんでしょね?」

 狙いがイマイチわかりません、王都を襲撃するクエストなんてものを依頼として出すわけにもいかないはずです。

「そうですね、おそらくは地方から有力な冒険者を遠ざけたいのではないでしょうか?」
「王都付近に集めたいではなく、地方から遠ざけたいという事ですね」
「た、確かによく、わ、分かりませんね」

 実に謎です、センネルの協力者が誰か分からないと予測が出来ません。
 アーシアさんが協力者についても話してくれます。

「あとは最近はギルド本部で、黒装束の人物を見たという人が増えていますね」
「そ、それはあからさまですね」
「ええ、冒険者には見えないそうです。暗殺者やその類に見えるとの事ですが。堂々としている所から誰もが恰好以外を怪しんでいないそうですね」

 確かにコソコソしていれば怪しいですが、堂々としているとそういう人だと思うようになりますね。

「おそらくセンネルの協力者の連絡係だと思います」
「黒装束の使いですか……」
「盗賊ギルドのような闇ギルドの可能性が高いですね、もはやギルドを殆ど掌握した今隠す必要が無くなってるのかもしれません」
「……ご、後手に回ってしまいますが、セ、センネルが何かアクションを、お、起こしてくれると逆に、や、やり易いですね」

 アルティアさんの言う通りです、何でもいいのでアクションを起こしてくれると逆にやりやすいです。
 ただし手遅れになってしまう可能性もあるので少しだけのアクションが好ましいですね。

「最後にここだけの話ですが、どうやらご禁制のアイテムの裏取引が行われてるようですね」
「禁止アイテム……ソ、ソースフェールとかですか?」
「ええ、その辺りも流れてるようです」

 ギルドを掌握したのは闇市や闇オークションのためでしょうか? 判断材料が少ないですね。

「金儲けのための闇オークションがセンネルの目的ですかね?」
「闇ギルドが関わるなら可能性は高いですね」

 もう少し様子を見るしかないですね。一応、マナカさんにも教えておきましょう。
 アーシアさんは席を立ちあがると代金を机に置きます。

「すいません、そろそろ時間ですので支払いを頼んでもよろしいでしょうか?」
「あ、は、はい。かまいませんよ」

 アーシアさんは仕事に戻る時間のようですね。

「すいません。また何か分かったらお教えしますね。ガリアスさんにもそう言われてますからね」
「ええ、アーシアさんもお気を付けて」
「それでは失礼します」
「は、はい。お気をつけて」

 こうしてアーシアさんとの昼食は終わりました。

 ――
 ――――

 この後、私達はアルティアさんの孤児院に行き私が前にアルティアさんに話したことを院長のバーバラさんと直接話して本日は終わりです。
 明日は魔王城に戻ることにします。

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