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第三章 昇格試験と国の特産物
第四十五話 お嬢様三分クッキング
しおりを挟む「はーい、皆さまごきげんよう」
ワタクシは元気よく挨拶をしながら召喚の間に入っていきます、本日は一旦コルリスに戻る事にしましたので、転送陣のある部屋に来ましたわ
「――マナカ、一番遅い」
「ナルリアちゃんが起こしに来てくれればきっと一番ですわよ」
「――む」
「ナ、ナルリアちゃん来たのついさっきよね」
「――今日も良い天気」
行き成りアルティアさんから目を逸らし、明後日の方向を見てますわね、しかも今日は曇ってますわよ。
まったく何をしていることやら。
「それでは皆さん揃ったようですね」
マウナさんがワタクシ達が揃ったのを確認すると転送陣を起動させます
またあの感覚を経験せねばならないなんて、まあ慣れるしかないですわよねぇ……
皆様が順番に転送陣に入っていきます、仕方ないのでワタクシも転送陣へ。
「では、モルテまた後は頼みました、また近いうちに戻ってきます」
「は、仰せのままに」
こうしてワタクシ達はコルリスへと戻りましたわ。
――
――――
「なかなか面白い体験ができたわねぇ」
「は、はい。ショーユ作りは、す、凄かったです」
「醤油はねかせるともっと美味しくなりますわよ」
「麹菌は大量に置いておきました」
さて、戻ってまずは何をしましょうか? ギルドへ挨拶か、シェリーさんへ醤油を置いてもらうように交渉するかこのどちらかがまずは妥当ですわね。
「マナカさん今からどうします?」
「まずはシェリーさんに醤油を、その後ギルドに結果を聞きに行きましょうか、皆様もそれでよろしくて?」
ワタクシの提案に全員が賛同してくれました。ではさっそくまずはシェリーさんに会いに行きましょう。
ワタクシ達は一階の食堂の方へ向かいます。
流石にこの時間はお客はあまりおりませんわね、この街にも何件か宿はありますが、食堂も兼任している場所は少ないので、ここはいつもご飯時には人が多く集まってきますわ。
さて、アニタちゃんがテーブルを拭いている姿を発見しましたわ。
「アニタちゃん、ごきげんよう」
「ごきげんよう、マナカさん」
「シェリーさんはおります?」
「奥にいると思うよ、呼んでこようか?」
「ええ、お願いしますわ」
ワタクシがそう言うとアニタちゃんはカウンターの方へ歩いていきました、少ししたらシェリーさんがワタクシ達の所へやってきます。
「あら? 戻ってきたのね、何か用事かしら?」
「ええ、シェリーさんにお願いがありますのよ、コレを見てくださるかしら?」
ワタクシは瓶に入った醤油をシェリーさんに見せますと、シェリーさんは顔をしかめます、何故でしょうか?
「何この黒い水、毒じゃないわよね?」
「失礼な、これは醤油と言うワタクシの国の立派な調味料ですわよ」
「まあ、この国には無い調味料ですもの、シェリーちゃんのような反応になるわよねぇ」
「で、でもこのショーユを使った料理は、お、おいしかったです」
ベティ、アリティアの支援砲が効いたようですわね。
「へぇ、ショーユねぇ、で、このショーユがどうかしたのかしら?」
食いつきましたわね、醤油の虜になるがいい!!
「こちらの調味料を使った料理を試しにここに置いてほしいのですわ、醤油がこの世界の人に受け入れられるかのテストですわね」
「んー、それは構わないけど使った事のない調味料の料理なんて作れないわよ」
「そこは大丈夫ですわ、このワタクシが簡単なレシピを伝授いたしますわ。そうですわね一度味わっていただくとよろしいかと」
「そうですね、シェリーさんもこの味を知ったら病みつきになりますよ」
「マナカさんもマウナさんもそう言うのなら」
「うふふ、お任せアレ。実はワタクシ料理もできますのよ、という事で少しお待ちになってくださいまし、材料を買ってきますわ。そのあと厨房をお借りしますわね」
ワタクシはそういうとささっと材料を買いに行きますわ、メニューは『鶏の照り焼き』ですわー
――
――――
三十分後。
ワタクシは現在熊の干物亭の厨房に立っておりますわ……
と言うか実は初めてシェリーさんのお父様を見るのですが……身長約一九五センチくらいあり左目に眼帯をしており刀傷みたいなの付いていますわ、元冒険者とは聞いておりましたが……うん、厨房に引っ込んでて正解ですわねこの人、見た目めっちゃ怖いんですのよ。
「マナカさんだったねうちの宿にずっと泊ってくれてるそうじゃないか、お初にお目にかかるシェリーとアニタの父のランジスと言うよろしくな」
「ええ、こちらこそよろしくお願いしますわ、では厨房をお借りしますわね」
「ああ、今はそこまで忙しくないから遠慮なく使ってくれ、何やら特別な調味料を使った料理を作るそうだね、俺も楽しみにしているよ」
「ご期待に沿えるよう頑張りますわ」
ワタクシはジュアージの袖をまくると準備した食材を取り出しますわ今回準備したのはこちら!
コケクックのもも肉(鶏肉もも肉)! そして、みりん!……と言いたいのですがこの世界にみりんが無かったので代用品を、それは日本酒と思ったがそれも無かったので、ワインと砂糖で代用しますわ、そして塩とサラダ油ですわ。
さてまずは鶏肉は塩をふり、しばらくおいて水気をふく。
ワインのアルコールを飛ばしてそこに砂糖を入れて砂糖のざらつきが無くなるまで混ぜますわ。
そして、フライパンに油少々を熱し、水気をふいた鶏肉の皮目を下にして入れ、時々転がしながら蓋をして中弱火で4~5分焼く。
鶏肉をひっくり返し、蓋をして中まで火を通す。
余分な油を取り、醤油、みりんの代用品、油を適量(ワタクシの感覚なので適当)をまわし入れ、中強火で焼きながら汁を絡めて完成ですわね。
厨房を醤油の焼ける香ばしい匂いが支配しますと、喉を鳴らす音が聞こえますわね
「――マナカの料理はじめて」
「マナカさん本当に色々と器用ですよね」
「嗅いだ事の無い香ばしい匂いだな、これは食欲をそそる匂いだ」
外にいたシェリーさんとアニタちゃんも厨房にやってきましたわ
「凄く良い匂いが漂ってきたのだけど、これマナカさんが作ったの?」
「ええ、ワタクシが作った鶏の照り焼き……おっと、この世界ではコケクックですわね、コケクックの照り焼きですわ」
「――えへん!」
何故ナルリアちゃんがしたり顔なのでしょうか? 謎ですが冷めないうちに皆さまに食べていただきましょう。
そう思い私は照り焼きを人数分に切り分けお皿に乗せテーブルへと運びます、ナルリアちゃんとアニタちゃんもワタクシの後に付いてお皿を運びます。
皆にお皿が行き渡ったのを確認します。
「では召し上がってくださいな」
ワタクシがそう言うと皆さまがコケクックの照り焼きを食べ始めますわね、米田中尉は相変わらずホラーな食べ方ですわね……
皆様は一心不乱に照り焼きを口にして食べておりますわね。
「「「ごちそうさまでした」」」
「おそまつさまですわ」
皆様が食べ終わるのを待ってからワタクシはシェリーさんとランジスさんに尋ねます。
「さて、それではこの醤油を使った料理を食べていただきましたがどうでしたか?」
「あぁ、思ったほどのコクは無いけど香ばしく香りが良い、皮もパリッと焼けていて美味いと思うよ」
「私も同じ意見ね」
ふむ、流石は食堂をやってるだけありますわね、ランジスコクの薄さを指摘しますか
「ええ、申し訳ありませんがこれは試作品でしてコクを出すにはもっと時間が必要なのです」
「ほぉ、それでこの味なのか凄いな」
「寝かした醤油はもっと美味しいのですわ」
二人は興味津々ですわね、これならば交渉はほぼ間違いなく成功でしょう。
「それでは改めてお願いしたいのですが、この熊の干物亭でこの醤油を使った料理をお客さんに提供していただきたいのです」
「なるほど、俺は構わないぞレシピさえ幾つか教えてくれればここのメニューに加えても構わない」
「私もこの味なら文句は無いわね」
うふふ、予定通りですわね、ワタクシの交渉にマウナさんも安どの表情を見せております、アニタちゃんも醤油メニューが増えるのを喜んでいるようですわね。
「ありがとうございますわ、これで醤油の宣伝になりますわね。とりあえずは今持っている分の半分をお渡ししますわ」
「ああ、お願いするよ」
こうして熊の干物亭に醤油を使ったメニューが増える事となりましたわ
参考としてワタクシが醤油を使ったレシピを五品ほどとと考えている醤油の相場を伝えておきます。
これで目的の一つは達成ですわね、次は冒険者ギルドですわね。
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