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あの後俺は同行してきた看護婦に案内され、病院内にある医師専用の寮に泊まる事となった。
そして次の日。
405号室の患者_昨日の華河信孝という患者の様子を見に、病室へ足を運ぶ事となった。
病室の戸を開けると、華河が元気良く挨拶をしてきた。
「あ、サトル!おはよー!」
「おう、おはよう」
病室をざっと見渡すが、同室に入院していると聞いたもう1人の患者が見当たらなかった。
「おい華河。お前と同じ病室のやつ、今はいないのか?」
疑問に思い、同室患者である華河に聞けば分かるかもしれないと思ったが、
「北河くん?知らない。今日は起きた時からいなかったよ」
そうか、と素っ気ない返事を返した後、しばらく沈黙が流れる。何か話題は無いものか、と思っていると、ふと、昨日聞こうと思っていた事を思い出した。
昨日中庭で歌っていた事だ。どうしても気になって、今日聞こうと考えていたのをすっかり忘れていた。
「なぁ、華河」
「なぁにー?」
「お前、昨日中庭で歌ってただろ?なんであそこで歌ってたんだ?」
看護婦に聞けば、毎回満月の夜に必ず歌っているのだという。理由を聞こうとしても、「内緒」と言われ、いつもはぐらかされるのだと言っていた。
「んーとね、サトルにはね、トクベツに教えたげる!俺ね、歌が何よりも大好きなんだ!
でも俺の奇病、満月の次の日に記憶無くなっちゃうから、せっかく覚えた歌も、ぜーんぶ忘れちゃうの。だから、せめてその時までは覚えてる歌ぜんぶ歌ってたいんだ!
中庭で歌ってる理由はね、神様にお願いしてるの。どうか忘れさせないでって。昔読んだ本にね、神様にお願いする時に歌ってるとこがあったんだ。それで、そうして神様にお願いすれば、覚えてられるかなって。そんな理由!」
「…そうだったのか」
「うん、これは内緒だからね!」
カルテには奇病がどのような症状なのか、とかしか書かれていなかったから、初めて聞いたものだった。後でメモでもしておくか、そう思っていた時、病室の戸が音を立てて開いた。
そして次の日。
405号室の患者_昨日の華河信孝という患者の様子を見に、病室へ足を運ぶ事となった。
病室の戸を開けると、華河が元気良く挨拶をしてきた。
「あ、サトル!おはよー!」
「おう、おはよう」
病室をざっと見渡すが、同室に入院していると聞いたもう1人の患者が見当たらなかった。
「おい華河。お前と同じ病室のやつ、今はいないのか?」
疑問に思い、同室患者である華河に聞けば分かるかもしれないと思ったが、
「北河くん?知らない。今日は起きた時からいなかったよ」
そうか、と素っ気ない返事を返した後、しばらく沈黙が流れる。何か話題は無いものか、と思っていると、ふと、昨日聞こうと思っていた事を思い出した。
昨日中庭で歌っていた事だ。どうしても気になって、今日聞こうと考えていたのをすっかり忘れていた。
「なぁ、華河」
「なぁにー?」
「お前、昨日中庭で歌ってただろ?なんであそこで歌ってたんだ?」
看護婦に聞けば、毎回満月の夜に必ず歌っているのだという。理由を聞こうとしても、「内緒」と言われ、いつもはぐらかされるのだと言っていた。
「んーとね、サトルにはね、トクベツに教えたげる!俺ね、歌が何よりも大好きなんだ!
でも俺の奇病、満月の次の日に記憶無くなっちゃうから、せっかく覚えた歌も、ぜーんぶ忘れちゃうの。だから、せめてその時までは覚えてる歌ぜんぶ歌ってたいんだ!
中庭で歌ってる理由はね、神様にお願いしてるの。どうか忘れさせないでって。昔読んだ本にね、神様にお願いする時に歌ってるとこがあったんだ。それで、そうして神様にお願いすれば、覚えてられるかなって。そんな理由!」
「…そうだったのか」
「うん、これは内緒だからね!」
カルテには奇病がどのような症状なのか、とかしか書かれていなかったから、初めて聞いたものだった。後でメモでもしておくか、そう思っていた時、病室の戸が音を立てて開いた。
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