奇病患者は綺麗に歌う

まこと

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2話

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看護婦について行き、中庭に向かう。
中庭に向かう途中で、何やら微かに歌声が聞こえてくる。ひょっとすると、声や歌に関するような奇病かもしれない。そう警戒しながら歩く。
そして中庭の入口に着き、多少警戒しながら、看護婦に中庭へと続く戸を開けてもらった。

その瞬間だった。

中庭から聞こえてくる歌声に聞き惚れそうになった。だってそれは___









___とても綺麗だったから

気が付けばその綺麗な歌声にすっかり聞き惚れてしまっていた。
そして、背景の欠けた箇所1つ無い満月も相まって、まるで小説や漫画の世界に迷い込んだかのような
錯覚すら感じさせた。

いつの間にかその歌は終わっていた。
歌が終わると同時に、病院中から拍手の音が鳴り響く。それにつられ、鷹村も拍手をしていると、看護婦と鷹村の存在に気付いた声の主は、鷹村達に自ら近付き、話しかけてきた。

「看護婦さん、こんばんわー。ねぇ、この人だれ?俺の知らない人?」

「今晩は、華河くん。彼は新しくあなたの部屋の担当医になった、鷹村覺さんよ。ほら、ちゃんと挨拶しなさい」

「えっと、サトルっていうの?こんばんわ、サトル!俺は華河信孝ってゆーんだ。よろしくね!」

鷹村は彼の姿を間近で見て、驚愕した。彼の右目からは、幾つもの花が咲いていたのだ。
これまでにも似たような症状の患者は見た事があったが、ここまで大きく咲いているのは初めて見たのだ。

「あ、あぁ、よろしくな」

そう返すと、華河はまるで純粋無垢な子供のように
笑ってみせた。

「へへ、よろしくねサトル」



これが、彼と初めて会った時の事だった。
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