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漆黒よりも深い翼 2
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「アドリ、手をこちらに」
「あ、はい」
ぎくしゃくとイルディオスの腕に手を添えたアドリーシャは、いつもはほとんど手のひらしか触れない腕の厚みに、ひそやかに胸を騒がせる。
教師の手拍子に合わせてゆっくりと踏み出した一歩が遠く感じられたのは一瞬で、音の連なりに合わせてステップを踏むうちに、身体のこわばりが解けていく。
足下に注意を払っていたイルディオスは、数小節も経たないうちに軽く頷いたかと思うと、それからはもうほとんど床を見なかった。
「思い出した、剣舞とよく似ているんだったな。音を聞いて身体を乗せれば良い」
イルディオスはさらりとそんなことを言って、アドリーシャの身体をくるりと回した。
ドレスの裾をふわりと翻して戻ったアドリーシャの身体は、柔らかく受け止められる。まるで、大切な贈り物のように。
背が高いのは知っていたが、こうして踊っていると、すぐ傍にある身体のあたたかさが伝わってきて意識せずにはいられない。着痩せするのか、近づいては離れるイルディオスの胸板は目で見るよりも厚くて、手を添えているから腕の筋肉がどのような形をしているのかもわかってしまう。
それに、イルディオスのリードは優しい。身長差があるのに腕の角度やステップの歩幅は自然で、何の違和感も感じなかった。
すぐ近くで視線を交わしながら柔らかく手を握られて、優しく背を支えられていると、どうしようもなく胸が高鳴ってしまう。触れられているところから、鼓動の早さが伝わっていなければいい。
なんだか、とアドリーシャは思う。こうしていると、勘違いしてしまいそうになる……。
こみ上げた思いを飲み下して、意識して笑みを浮かべた。
「忘れていただなんて、嘘でしょう? とてもお上手です」
「どうやら、俺は合格点をもらえたらしいな」
「私の父は長らく祭司官だったものですから、母と踊るのもどこかぎこちなくて、練習に付き合ってもらう度に微妙な気持ちになってしまって……。剣に優れた方は、踊りも得意なのですか?」
「そんなことはない。エブロはすこぶる下手だ。あいつは壊滅的に気遣いができないからな」
イルディオスは大真面目な顔で、ご婦人方から人気を集めるエブロがたまに気まぐれを起こして夜会で踊ると、その度に恋文が減ると教えてくれる。
笑ったアドリーシャは、ふと、イルディオスとの近さを感じて無意識に背を引いた。けれども、背に添えられた手のひらに身体を引き寄せられて、どきりとする。
離れると却って踊りにくくなるぞと笑ったイルディオスの何でもない様子に、アドリーシャは意識しているのは自分だけなのだと気づいてしまった。途端に、イルディオスと踊ることに浮かれていた心がさみしく冷えていく。惑った爪先がイルディオスの靴を踏んで、アドリーシャは小さく叫んだ。
「あっ、」
立ち止まろうとした身体はだが、ふわりと持ち上げられた。そのまま柔らかく床に降り立った爪先は、イルディオスに促されてステップを踏む。遅れて、広がったドレスの裾がつぼんだ。まるで初めからそうであったかのように。
「兄上は、ダンスは男側の技量が大事だと言っていた。つまり、アドリは何度だって俺の足を踏んでもいい。ただ俺の技量が不足していただけだ」
「極論ではありませんか? あの、痛みは」
「全然気にしなくて良い。アドリは軽いな」
ごく当然のように微笑まれてしまえば、アドリーシャは礼を言うほかはない。
こういうとき、イルディオスは謝罪を受けると困ったような顔をする。イルディオスは、アドリーシャが謝ったり遠慮をしすぎたりすると、決まって自分を下げるなと諭すのだ。
「……もし、成人の宴で緊張して足がもつれてしまっても、助けてくださいますか?」
「もちろん。俺がそうしないはずないだろう?」
そう、わかっている。イルディオスはいつだって、アドリーシャを尊重して、大切にしようとしてくれる。問題は、アドリーシャがそこにただ一人にだけ向けられた愛情を欲しがってしまうということだ。
曲が終わりを告げて、ふたりは静かに足を止めた。優しく手が離されて、互いに礼を取る。
教師の褒める声を聞きながら、アドリーシャは手のひらに残る温もりをできるだけ長く留めていたくて、そっと指を握り込む。ほんの少しだけ、夢を見ることを自分に許していたかった。
――そんなふうに、甘い夢を見てしまった報いだろうか。
踊りの授業が終わった後、イルディオスの執務室でお三時をいただいたアドリーシャは、いつものように隣に腰掛けた。ただいつものように力を宥めようとしたそのとき、ぐらりとイルディオスの身体が傾いで、あっという間もなく翼が現れる。
「殿下!」
倒れ込んできた身体を支えると、ひどく熱かった。さっきまで、本当にさっきまで穏やかに笑んでいたというのに、触れたところから伝わる呼気は荒い。
ぐっと大きく横に広げられた翼が花瓶をなぎ倒し、二度、三度羽振くたびに机の上に置かれたものが落ちる音がした。
人を呼ぼうと首を巡らせたアドリーシャは、息を呑む。
先程まで確かにイルディオスの執務室にいたはずなのに、辺りは暗闇に包まれていた。底のない暗がりには濃淡があり、脈打つように震えては入り交じる。
――ふうん? お前たちは、まだ番っていないのだな。いったい何をやっているのだか。
呆れ。苛立ち。嘲り。慨嘆。
そして、何やら面白がるような響きが入り交じった不思議な声は、アドリーシャの頭の中に直接響いてくる。とろけるように甘いのに、ひどく刺々しくもある声だ。息が細るような畏れがこみ上げて、身体が芯の芯まで冷えていく。
ひくりとアドリーシャの喉が鳴ったとき、身体にかかる重みがふっと軽くなった。
「……お前は、誰だ。いったい何が目的だ」
ゆっくりと身を起こしたイルディオスは、大丈夫だと囁いてアドリーシャから身体を離した。暗がりを見つめる横顔はまだ苦しそうで、肌の上を汗が幾筋も流れ落ちる。
イルディオスは力を振るおうとしたのだろう。翼をはためかせようとして、翼がぴたりと動きを止めていることに瞬いた。イルディオスは素早く腰元に手を回すが、屋敷内では剣を佩いていない。舌打ちしたイルディオスはアドリーシャを庇うように前に出て、何も見えない暗がりを睨みつける。
突如として、暗闇が切って落とされる。
まるで鋭い剣筋で一閃されたかのように波打ちながら暗闇が落ちると、いつもの見慣れた執務室が現れた。
は、とイルディオスが呼気を吐いたとき。
ふたりの頭上で、ばさりと翼が羽振く音が立った。
見上げた先には、漆黒の――否、漆黒よりも深く暗いのに、どこか星の海のように目映い闇を湛えた鳥がいた。鳥はふたりの頭上を二度ほど旋回すると、未だ警戒を解かないイルディオスの左肩に舞い降りた。その瞬間、イルディオスの翼が静かに溶け消える。
――お前は、いったいなぜ兄を殺さないのだ? せっかく我が直々に兄殺しの運命をやったのに。
鳥の囁きは軽やかに甘く、無邪気で酷薄な響きをしていた。
「あ、はい」
ぎくしゃくとイルディオスの腕に手を添えたアドリーシャは、いつもはほとんど手のひらしか触れない腕の厚みに、ひそやかに胸を騒がせる。
教師の手拍子に合わせてゆっくりと踏み出した一歩が遠く感じられたのは一瞬で、音の連なりに合わせてステップを踏むうちに、身体のこわばりが解けていく。
足下に注意を払っていたイルディオスは、数小節も経たないうちに軽く頷いたかと思うと、それからはもうほとんど床を見なかった。
「思い出した、剣舞とよく似ているんだったな。音を聞いて身体を乗せれば良い」
イルディオスはさらりとそんなことを言って、アドリーシャの身体をくるりと回した。
ドレスの裾をふわりと翻して戻ったアドリーシャの身体は、柔らかく受け止められる。まるで、大切な贈り物のように。
背が高いのは知っていたが、こうして踊っていると、すぐ傍にある身体のあたたかさが伝わってきて意識せずにはいられない。着痩せするのか、近づいては離れるイルディオスの胸板は目で見るよりも厚くて、手を添えているから腕の筋肉がどのような形をしているのかもわかってしまう。
それに、イルディオスのリードは優しい。身長差があるのに腕の角度やステップの歩幅は自然で、何の違和感も感じなかった。
すぐ近くで視線を交わしながら柔らかく手を握られて、優しく背を支えられていると、どうしようもなく胸が高鳴ってしまう。触れられているところから、鼓動の早さが伝わっていなければいい。
なんだか、とアドリーシャは思う。こうしていると、勘違いしてしまいそうになる……。
こみ上げた思いを飲み下して、意識して笑みを浮かべた。
「忘れていただなんて、嘘でしょう? とてもお上手です」
「どうやら、俺は合格点をもらえたらしいな」
「私の父は長らく祭司官だったものですから、母と踊るのもどこかぎこちなくて、練習に付き合ってもらう度に微妙な気持ちになってしまって……。剣に優れた方は、踊りも得意なのですか?」
「そんなことはない。エブロはすこぶる下手だ。あいつは壊滅的に気遣いができないからな」
イルディオスは大真面目な顔で、ご婦人方から人気を集めるエブロがたまに気まぐれを起こして夜会で踊ると、その度に恋文が減ると教えてくれる。
笑ったアドリーシャは、ふと、イルディオスとの近さを感じて無意識に背を引いた。けれども、背に添えられた手のひらに身体を引き寄せられて、どきりとする。
離れると却って踊りにくくなるぞと笑ったイルディオスの何でもない様子に、アドリーシャは意識しているのは自分だけなのだと気づいてしまった。途端に、イルディオスと踊ることに浮かれていた心がさみしく冷えていく。惑った爪先がイルディオスの靴を踏んで、アドリーシャは小さく叫んだ。
「あっ、」
立ち止まろうとした身体はだが、ふわりと持ち上げられた。そのまま柔らかく床に降り立った爪先は、イルディオスに促されてステップを踏む。遅れて、広がったドレスの裾がつぼんだ。まるで初めからそうであったかのように。
「兄上は、ダンスは男側の技量が大事だと言っていた。つまり、アドリは何度だって俺の足を踏んでもいい。ただ俺の技量が不足していただけだ」
「極論ではありませんか? あの、痛みは」
「全然気にしなくて良い。アドリは軽いな」
ごく当然のように微笑まれてしまえば、アドリーシャは礼を言うほかはない。
こういうとき、イルディオスは謝罪を受けると困ったような顔をする。イルディオスは、アドリーシャが謝ったり遠慮をしすぎたりすると、決まって自分を下げるなと諭すのだ。
「……もし、成人の宴で緊張して足がもつれてしまっても、助けてくださいますか?」
「もちろん。俺がそうしないはずないだろう?」
そう、わかっている。イルディオスはいつだって、アドリーシャを尊重して、大切にしようとしてくれる。問題は、アドリーシャがそこにただ一人にだけ向けられた愛情を欲しがってしまうということだ。
曲が終わりを告げて、ふたりは静かに足を止めた。優しく手が離されて、互いに礼を取る。
教師の褒める声を聞きながら、アドリーシャは手のひらに残る温もりをできるだけ長く留めていたくて、そっと指を握り込む。ほんの少しだけ、夢を見ることを自分に許していたかった。
――そんなふうに、甘い夢を見てしまった報いだろうか。
踊りの授業が終わった後、イルディオスの執務室でお三時をいただいたアドリーシャは、いつものように隣に腰掛けた。ただいつものように力を宥めようとしたそのとき、ぐらりとイルディオスの身体が傾いで、あっという間もなく翼が現れる。
「殿下!」
倒れ込んできた身体を支えると、ひどく熱かった。さっきまで、本当にさっきまで穏やかに笑んでいたというのに、触れたところから伝わる呼気は荒い。
ぐっと大きく横に広げられた翼が花瓶をなぎ倒し、二度、三度羽振くたびに机の上に置かれたものが落ちる音がした。
人を呼ぼうと首を巡らせたアドリーシャは、息を呑む。
先程まで確かにイルディオスの執務室にいたはずなのに、辺りは暗闇に包まれていた。底のない暗がりには濃淡があり、脈打つように震えては入り交じる。
――ふうん? お前たちは、まだ番っていないのだな。いったい何をやっているのだか。
呆れ。苛立ち。嘲り。慨嘆。
そして、何やら面白がるような響きが入り交じった不思議な声は、アドリーシャの頭の中に直接響いてくる。とろけるように甘いのに、ひどく刺々しくもある声だ。息が細るような畏れがこみ上げて、身体が芯の芯まで冷えていく。
ひくりとアドリーシャの喉が鳴ったとき、身体にかかる重みがふっと軽くなった。
「……お前は、誰だ。いったい何が目的だ」
ゆっくりと身を起こしたイルディオスは、大丈夫だと囁いてアドリーシャから身体を離した。暗がりを見つめる横顔はまだ苦しそうで、肌の上を汗が幾筋も流れ落ちる。
イルディオスは力を振るおうとしたのだろう。翼をはためかせようとして、翼がぴたりと動きを止めていることに瞬いた。イルディオスは素早く腰元に手を回すが、屋敷内では剣を佩いていない。舌打ちしたイルディオスはアドリーシャを庇うように前に出て、何も見えない暗がりを睨みつける。
突如として、暗闇が切って落とされる。
まるで鋭い剣筋で一閃されたかのように波打ちながら暗闇が落ちると、いつもの見慣れた執務室が現れた。
は、とイルディオスが呼気を吐いたとき。
ふたりの頭上で、ばさりと翼が羽振く音が立った。
見上げた先には、漆黒の――否、漆黒よりも深く暗いのに、どこか星の海のように目映い闇を湛えた鳥がいた。鳥はふたりの頭上を二度ほど旋回すると、未だ警戒を解かないイルディオスの左肩に舞い降りた。その瞬間、イルディオスの翼が静かに溶け消える。
――お前は、いったいなぜ兄を殺さないのだ? せっかく我が直々に兄殺しの運命をやったのに。
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