27 / 40
湖畔のひととき 1
しおりを挟む
イルディオスの屋敷を包む森の中には、小さな湖がある。
淡く乳白色がかった碧が美しい湖には木々が映り込み、差し込む陽射しが水面に澄んだ輝きを連ねる。湖のほとりは緑の匂いが濃く、息を深く吸うとそれだけで涼やかさが喉を通って心地がいい。
湖を囲うように咲きこぼれるのは、蝶が羽を広げたような小さな花弁が縦に連なる花だ。
紫と薄紅、白色の花穂を持つ植物は背が低く、風に吹かれてさやさやと揺れる度に濃淡の異なる色彩が綾なして、目を楽しませる。
静けさに包まれた湖は美しく、人気がない。王弟の所有する敷地でなかったら、さぞかし王都で注目を集めただろう。
ボンネットの縁を飾るフリルの影で目を細めたアドリーシャは、ふと視線を感じた。
愛馬を労るように撫でながら、イルディオスがこちらを見ている。木々の間から射す光に照らされて、銀の髪が淡く輝きを帯びているのがきれいだった。
この一瞬を、色褪せない絵画の中に閉じ込めておけたらいいのに。そんな他愛のないことを思って、アドリーシャは手綱を握る手に力を込めた。
イルディオスは周囲を見回して、いつもならアドリーシャの傍に付いているはずのエティケが虫除けの香を焚いており、騎士たちが周辺に目を配り、あるいは敷物を広げているのに不思議そうな顔をする。そうしてするりと馬上から降りると、駆け寄ってきたエブロに手綱を預けて、アドリーシャへと手を差し出した。
アドリーシャは、イルディオスに手を預けると馬を下りた。編み上げ靴でさくりと草を踏めば、土の感触が柔らかく足裏を押し返す。
いまこの瞬間ほど、ボンネットを被っていて良かったと思ったことはない。礼儀正しく腰を支えてくれていたイルディオスの手が離されると、アドリーシャはドレスの裾を整える。
「ゆっくり走らせたつもりだったが、頬が少し赤いな」
「……すぐに落ち着きます」
ここまで乗せてきてくれた白馬を撫でてねぎらうと、鼻先をすり寄せられる。こそばゆさに、アドリーシャはくすくすと笑った。
つんつんと鼻先でつつかれたと思ったら、白馬がぴくりと身を引いた。手綱を握るイルディオスが白馬を促して、エブロの方へと向かわせる。何か面白いことでもあったのか、エブロはにやにやと笑って二頭の馬を引き連れていった。
「気持ちいいですね。ここはいつ来ても涼やかです」
「それは良かった。去年の夏は随分ぐったりしていただろう。ここならアドリにも負担にならないと思って」
ペルスィコの実といい、イルディオスの中で去年の夏は余程印象深かったらしい。
アドリーシャは眉を下げて、そんなにか弱くありませんと首を振る。イルディオスは、本気で言っているのだろうか? とでも言いたげな顔をした。
書類仕事を早めに済ませたが、もうお昼時だ。馬を走らせたこともあって、少食のアドリーシャもいつもよりお腹が空いていた。
イルディオスの後をついて向かった木陰は、居心地良く過ごせるよう調えられている。
敷物の上には薄型のクッションが置かれて、トランク型のバスケットを広げたエティケが、皿やカトラリーを並べている。エティケはアドリーシャが腰を下ろすと、日除けの幕の角度を調整した。
イルディオスはグラスと輪切りにした果物と香草が漬けられた果実水が詰められた瓶を取り出して、アドリーシャの分を注いでくれる。
口の中で甘い実を転がしたアドリーシャは、薄切りの肉とチーズ、野菜を挟んだバゲットを食べやすいように切ったエティケの腰元を見て唇をほころばせた。そこに佩かれた剣の鞘には、贈ったばかりの柄飾りが揺れている。
「今日から付けさせていただいています。随分自慢しましたので、エブロには呆れられましたが」
「そうなの? 我ながら、エティケに似合うものになったと思うわ」
エティケのよく鍛えられた手のひらが、絹糸を固く編み込んだ柄飾りをすくい取る。
細く編んだ絹糸を更に編み込んだ柄飾りは、規則的に組み合わされた臙脂と淡い茶が目を惹く。結び目を留める玉を白にしたことで、絹糸の色が一層きりりと引き立っていた。ほんの少し長めに取った房は、きっとエティケが剣を収めるときに優美に揺れることだろう。
「アドリ様は手先が器用でいらっしゃいますね。異なる編み方が組み合わされていて凝っていますし、とても気に入りました」
良かったわと微笑んで、アドリーシャはバゲットを一口食べる。燻製にした鶏肉と野菜に染みたソースとよく合うチーズの組み合わせが、食欲をそそる味付けだ。
エティケはバゲットに齧り付いたまま自分を見つめる主の目をやんわりと受け止めて流すと、優れた体幹を窺わせるしなやかさで立ち上がった。
「他の者たちが船を浮かべようとしていますので、食事がてら見て参ります。先頃手入れしたばかりですので、お二人にもお乗りいただけるかと」
「エティケはここで一緒に食べないの?」
「はい。ゆっくりお過ごしください」
エティケが去ると途端に静けさが押し寄せて、葉擦れの音が大きくなった気がした。
ふたりがいるのは木陰で、騎士たちは少し離れたところで食事をしている。時折警護の目が向けられるのを感じるが、声を潜めずとも話の内容が伝わらない距離だ。漏れ聞こえてくる騎士たちの会話も、仲が良さそうだということしかわからない。
「皆、楽しそうですね」
「湖に行くと言ったら、我先にと志願してきたくらいだからな。……エティケに柄飾りをあげたんだな」
「はい。籠で柄飾りを作ることになったと、お聞き及びでしたでしょう?」
「聞いてはいたが、実際に見たのは今日が初めてだ」
先程の会話を聞いていたはずのイルディオスが柄飾りのことを訊ねるものだから、アドリーシャは困惑する。そうして、ふと。いまこうしてふたりでいるのに、イルディオスがかつて付けていた柄飾りのことを思い出すのは嫌だと考えてしまった。
急いた心が、いやな考えを追い出すように唇を開かせる。
「今日は、どうして湖に出かけようと思われたのですか?」
何かを言いさしたイルディオスは一度口を閉じ、そうだなと呟く。
「このところ、アドリとゆっくり過ごせていなかっただろう。春は慌ただしかったしな」
春に国境で行われたイレンザ公国との会談に際して、イルディオスはユーゴウスの不在を守るために宮殿に詰めることとなった。
ユーゴウスから暫時王権の一部を預かったイルディオスは、グレイシアを助けて政務を行う傍ら、王都の警護を指揮していた。お三時に一度戻ってくる以外はほとんど宮殿に泊まり込みだったものだから、アドリーシャはイルディオスが倒れるのではないかと心配でならなかった。
「茶会もあるし、アドリが好きな店でここからここまで全部くれ、というやつをしても良かったんだが、あまり必要そうでなかったから」
さらりと言われた言葉に、アドリーシャはぱちりと瞬いた。
淡く乳白色がかった碧が美しい湖には木々が映り込み、差し込む陽射しが水面に澄んだ輝きを連ねる。湖のほとりは緑の匂いが濃く、息を深く吸うとそれだけで涼やかさが喉を通って心地がいい。
湖を囲うように咲きこぼれるのは、蝶が羽を広げたような小さな花弁が縦に連なる花だ。
紫と薄紅、白色の花穂を持つ植物は背が低く、風に吹かれてさやさやと揺れる度に濃淡の異なる色彩が綾なして、目を楽しませる。
静けさに包まれた湖は美しく、人気がない。王弟の所有する敷地でなかったら、さぞかし王都で注目を集めただろう。
ボンネットの縁を飾るフリルの影で目を細めたアドリーシャは、ふと視線を感じた。
愛馬を労るように撫でながら、イルディオスがこちらを見ている。木々の間から射す光に照らされて、銀の髪が淡く輝きを帯びているのがきれいだった。
この一瞬を、色褪せない絵画の中に閉じ込めておけたらいいのに。そんな他愛のないことを思って、アドリーシャは手綱を握る手に力を込めた。
イルディオスは周囲を見回して、いつもならアドリーシャの傍に付いているはずのエティケが虫除けの香を焚いており、騎士たちが周辺に目を配り、あるいは敷物を広げているのに不思議そうな顔をする。そうしてするりと馬上から降りると、駆け寄ってきたエブロに手綱を預けて、アドリーシャへと手を差し出した。
アドリーシャは、イルディオスに手を預けると馬を下りた。編み上げ靴でさくりと草を踏めば、土の感触が柔らかく足裏を押し返す。
いまこの瞬間ほど、ボンネットを被っていて良かったと思ったことはない。礼儀正しく腰を支えてくれていたイルディオスの手が離されると、アドリーシャはドレスの裾を整える。
「ゆっくり走らせたつもりだったが、頬が少し赤いな」
「……すぐに落ち着きます」
ここまで乗せてきてくれた白馬を撫でてねぎらうと、鼻先をすり寄せられる。こそばゆさに、アドリーシャはくすくすと笑った。
つんつんと鼻先でつつかれたと思ったら、白馬がぴくりと身を引いた。手綱を握るイルディオスが白馬を促して、エブロの方へと向かわせる。何か面白いことでもあったのか、エブロはにやにやと笑って二頭の馬を引き連れていった。
「気持ちいいですね。ここはいつ来ても涼やかです」
「それは良かった。去年の夏は随分ぐったりしていただろう。ここならアドリにも負担にならないと思って」
ペルスィコの実といい、イルディオスの中で去年の夏は余程印象深かったらしい。
アドリーシャは眉を下げて、そんなにか弱くありませんと首を振る。イルディオスは、本気で言っているのだろうか? とでも言いたげな顔をした。
書類仕事を早めに済ませたが、もうお昼時だ。馬を走らせたこともあって、少食のアドリーシャもいつもよりお腹が空いていた。
イルディオスの後をついて向かった木陰は、居心地良く過ごせるよう調えられている。
敷物の上には薄型のクッションが置かれて、トランク型のバスケットを広げたエティケが、皿やカトラリーを並べている。エティケはアドリーシャが腰を下ろすと、日除けの幕の角度を調整した。
イルディオスはグラスと輪切りにした果物と香草が漬けられた果実水が詰められた瓶を取り出して、アドリーシャの分を注いでくれる。
口の中で甘い実を転がしたアドリーシャは、薄切りの肉とチーズ、野菜を挟んだバゲットを食べやすいように切ったエティケの腰元を見て唇をほころばせた。そこに佩かれた剣の鞘には、贈ったばかりの柄飾りが揺れている。
「今日から付けさせていただいています。随分自慢しましたので、エブロには呆れられましたが」
「そうなの? 我ながら、エティケに似合うものになったと思うわ」
エティケのよく鍛えられた手のひらが、絹糸を固く編み込んだ柄飾りをすくい取る。
細く編んだ絹糸を更に編み込んだ柄飾りは、規則的に組み合わされた臙脂と淡い茶が目を惹く。結び目を留める玉を白にしたことで、絹糸の色が一層きりりと引き立っていた。ほんの少し長めに取った房は、きっとエティケが剣を収めるときに優美に揺れることだろう。
「アドリ様は手先が器用でいらっしゃいますね。異なる編み方が組み合わされていて凝っていますし、とても気に入りました」
良かったわと微笑んで、アドリーシャはバゲットを一口食べる。燻製にした鶏肉と野菜に染みたソースとよく合うチーズの組み合わせが、食欲をそそる味付けだ。
エティケはバゲットに齧り付いたまま自分を見つめる主の目をやんわりと受け止めて流すと、優れた体幹を窺わせるしなやかさで立ち上がった。
「他の者たちが船を浮かべようとしていますので、食事がてら見て参ります。先頃手入れしたばかりですので、お二人にもお乗りいただけるかと」
「エティケはここで一緒に食べないの?」
「はい。ゆっくりお過ごしください」
エティケが去ると途端に静けさが押し寄せて、葉擦れの音が大きくなった気がした。
ふたりがいるのは木陰で、騎士たちは少し離れたところで食事をしている。時折警護の目が向けられるのを感じるが、声を潜めずとも話の内容が伝わらない距離だ。漏れ聞こえてくる騎士たちの会話も、仲が良さそうだということしかわからない。
「皆、楽しそうですね」
「湖に行くと言ったら、我先にと志願してきたくらいだからな。……エティケに柄飾りをあげたんだな」
「はい。籠で柄飾りを作ることになったと、お聞き及びでしたでしょう?」
「聞いてはいたが、実際に見たのは今日が初めてだ」
先程の会話を聞いていたはずのイルディオスが柄飾りのことを訊ねるものだから、アドリーシャは困惑する。そうして、ふと。いまこうしてふたりでいるのに、イルディオスがかつて付けていた柄飾りのことを思い出すのは嫌だと考えてしまった。
急いた心が、いやな考えを追い出すように唇を開かせる。
「今日は、どうして湖に出かけようと思われたのですか?」
何かを言いさしたイルディオスは一度口を閉じ、そうだなと呟く。
「このところ、アドリとゆっくり過ごせていなかっただろう。春は慌ただしかったしな」
春に国境で行われたイレンザ公国との会談に際して、イルディオスはユーゴウスの不在を守るために宮殿に詰めることとなった。
ユーゴウスから暫時王権の一部を預かったイルディオスは、グレイシアを助けて政務を行う傍ら、王都の警護を指揮していた。お三時に一度戻ってくる以外はほとんど宮殿に泊まり込みだったものだから、アドリーシャはイルディオスが倒れるのではないかと心配でならなかった。
「茶会もあるし、アドリが好きな店でここからここまで全部くれ、というやつをしても良かったんだが、あまり必要そうでなかったから」
さらりと言われた言葉に、アドリーシャはぱちりと瞬いた。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす
まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。
彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。
しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。
彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。
他掌編七作品収録。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。
【収録作品】
①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」
②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」
③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」
④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」
⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」
⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」
⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」
⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
真実の愛は、誰のもの?
ふまさ
恋愛
「……悪いと思っているのなら、く、口付け、してください」
妹のコーリーばかり優先する婚約者のエディに、ミアは震える声で、思い切って願いを口に出してみた。顔を赤くし、目をぎゅっと閉じる。
だが、温かいそれがそっと触れたのは、ミアの額だった。
ミアがまぶたを開け、自分の額に触れた。しゅんと肩を落とし「……また、額」と、ぼやいた。エディはそんなミアの頭を撫でながら、柔やかに笑った。
「はじめての口付けは、もっと、ロマンチックなところでしたいんだ」
「……ロマンチック、ですか……?」
「そう。二人ともに、想い出に残るような」
それは、二人が婚約してから、六年が経とうとしていたときのことだった。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる