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忘れられない瞳 1
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――イルディオスにとって、飢えと渇き、それから幻覚は、物心ついた頃からずっと当たり前のように傍にある存在だった。
イルディオスの朝は、日の光や風ではなく頭痛を伴う幻覚で始まる。
目の奥から頭の奥まで貫く痛みは、幾千日くり返してもイルディオスを苛むことを忘れてくれない。がちりと噛んだ奥歯を軋らせながら身を起こし、ちかちかと明滅する幻覚の中で焦点を定める。そうして、ゆっくりと深呼吸をしてから、痛みを噛み殺しつつ鍛錬場へと向かうのだ。
剣を振るいながら感じるのは、身のうちで暴れ回る光だ。
そう、光。それはイルディオスの苦しみの源であり、彼が人の身には過ぎた力を持つ証左だった。
光は、目を閉じるとすぐ傍で瞬いている。何色とも判じがたい、ただひたすらに輝きだけを凝らせたそれは爛々と息づいて彼を見つめ返すのだ。まるで、抗えるものなら抗ってみせろと言わんばかりに。
彼が抗いきれなかったときや力を振るうとき、身の内の光は影に濡れた翼となって現れ出でた。
彼に生まれつき与えられた力は強大だが、身体が疲労すると幾許か温和しくなった。汗が滴り落ちるほど剣を振るい続ければ、暫時痛みや幻覚から逃れられる。
とはいえ、光が息を潜めてくれているのはほんのわずかな間のことである。
目映い光は体内で暴れ回り、イルディオスの肉を食い破らんとばかりに四肢を駆け巡る。強烈なまでの飢餓感とともに押し寄せるその痛みを、いったいどんな言葉で表せばいいだろう。胃の腑を指で掻き回されるような痛み? それとも、地面を這いずり回りながら血反吐を吐くような煩悶?
イルディオスの力はここ数代においても稀なる強さであったから、両親は神殿に寄付を積み、果実探しを急がせた。祭司長や力ある者たちが、口を揃えて気の毒がったせいもある。果実が見つからねば早々に気が狂ってしまうだろう、と。
幼い頃はとりわけ自分に与えられた運命を恨み、羨みのまなざしで撫でられるたびにすべてをかなぐり捨てててやりたい衝動にかられたものだった。何にも知らないくせに、と。寝台の上で一人孤独にのたうち回っている時の惨めさは、筆舌に尽くしがたい。
どうして自分が。どうして、こんな風に生まれついてしまったのか。
何が力ある者だ。イルディオスの力は戦闘向きで土地を癒やす性質のものではなかったから、それこそ戦でもなければ役に立たない。
父母は嘆き悲しみ、兄は諦めるなと声をかけ続けてくれたが、イルディオスはいつ死んでもかまわないとさえ考えていた。
――この世に生まれ落ちてからずっと、苦しみに苛まれてきたのだ、それならば、この力とともに心中してやろう。
果実がいなくても、生きてはいける。ただ生き存えているだけならば。
イルディオスの人生は光と痛みと幻覚に覆い尽くされていて、それ以上を望もうとは思えなかった。
二十歳を超えてもなお正気を保っているイルディオスを人々は褒めそやしたが、果たして自分が本当に正常な精神を保っているのか疑わしかった。
何せ、彼のもとにはいつ何時も幻惑が訪れて、頭の上で水盆をひっくり返されたかのように弟神の記憶を浴びさせられる。弟神が兄神を慕う思い出も弟神が兄神のまなざしを欲しがってその先にいた娘を屠る記憶だって、飽きるほど眺めてきた。
(俺はとうに狂っていて、自分を正常だと信じている愚か者なのかもしれない)
息を細らせながら一日を終え、また目覚めては命があるのだと苦笑して、苦しみと共に浅い眠りに浸されて一日を終える。
そんな日々をくり返しているうちに、イルディオスは二十五になった。
ほとんど眠ることさえできなくなった彼は、弟神から神託が下ったという報せが届いたとき、朦朧とする意識の中で三度問い直したものだ。乳兄弟のエブロに何度も身体を揺さぶられて初めて、現実だという実感が滲み始めたことをよく覚えている。
いつしか望むことすらやめてしまった彼の果実は、ヴァルダノの長い歴史でも類を見ないことに、貴族の娘だった。
屋敷の離れで存在を隠匿されていたと聞いてしまったならば、イルディオスも重い腰を上げざるをえなかった。果実の生家は、敬虔と評判高いヒュミラ家である。それだけで、いったいどんな扱いをされているのか推し量れよう。
神託を授かった祭司官とともに向かった先で、出迎えに立ったヒュミラ伯爵家の当主は洗練された挙措で膝を突き、娘は離れの地下室にいると告げた。当主は泣き噎ぶ妻を抱き寄せると、侍従を呼んで案内をするように言いつける。
――大丈夫だ、もうあの娘に煩わされることもなくなる。
――あの娘のせいで、ヒュミラ家が悪く言われてしまうわ。
――だが、当代で最もお力の強い王弟殿下の果実だ。
「何言ってるんですかね、あれ」
エブロの呟きに、いつもは双子の兄の軽口を窘めるエティケでさえ頷いた。
「貴族の家から果実が出た例はありませんからね。三年前、ヒュミラ伯爵家に招かれた祭司官が神殿に戻る途中で死んだのも、そういうことでしょう」
血生臭い話の内容とは裏腹に祭司官はのほほんと微笑んで、早く行きましょうと促した。
離れは暗く、侍従が困惑しながら侍女の名を呼んでもただ暗闇が応えるばかりだった。
外套越しに感じる冷えた空気に、イルディオスは眉を顰める。一歩足を進めるごとに、名残の冬が透明な波となって押し寄せてくるように思われた。
怒りを溜めていくイルディオスからヒュミラ家の侍従は気まずげに目をそらし、足早に地下室へ案内するとそそくさと立ち去った。
「私が先に検めます。少々お待ちを」
イルディオスは頷いて、永遠にも思われるほど長くも短い間、息を潜めるようにして佇んでいた。
ややあって、祭司官に呼ばれたイルディオスは、逸る気持ちを堪えながら一歩踏み出した暗がりに、小さく瞬く光を見つけた。
訝しむよりも先に、ぐらりと一度、頭の芯を揺らすほどに強い目眩に襲われる。幻覚に慣れた身体が、反射的にぐっと腹の底に力を入れた。
イルディオスの果実だという娘は、何か眩しい光を前にしたように手のひらを顔の前にかざしている。それで、どうしようもなく分かってしまった。彼女は、この身の内に息づく凶暴な力を感じ取っているのだと。
その瞬間胸に押し寄せたのは、得体の知れない後悔と息を潜めてこちらを見つめる――否、目の前の果実を見つめる光であり翼であるものが湛えた、隠しきれない歓喜の念だった。
床に膝を突いたイルディオスは、ふと。こちらを見つめるまなざしに違和感を覚えた。
娘は清潔なドレスを纏ってはいるが、痛々しいほど痩せ細っている。だのに、その表情や瞳は悲惨な境遇にいっそ不釣り合いなまでに荒んでいなかった。
きっと、静謐という概念を凝らせたらこうなるのだろう。
淡い金の睫毛に縁取られた瞳は、見つめれば見つめた分だけ心が吸い込まれてしまいそうなまでに澄んでいた。
イルディオスが惹かれたのは、その色や形ではない。
見つめた瞳の最奥、幾重もの帳をかき分けた先に彼女の意思があることを窺わせるのに、やすやすとそこへはたどり着けないと思わされる……。
そうした得体の知れない静けさが、イルディオスの目を奪って離さなかった。
――後にも先にも、イルディオスはアドリーシャほど澄んだ瞳の持ち主を知らない。
イルディオスの朝は、日の光や風ではなく頭痛を伴う幻覚で始まる。
目の奥から頭の奥まで貫く痛みは、幾千日くり返してもイルディオスを苛むことを忘れてくれない。がちりと噛んだ奥歯を軋らせながら身を起こし、ちかちかと明滅する幻覚の中で焦点を定める。そうして、ゆっくりと深呼吸をしてから、痛みを噛み殺しつつ鍛錬場へと向かうのだ。
剣を振るいながら感じるのは、身のうちで暴れ回る光だ。
そう、光。それはイルディオスの苦しみの源であり、彼が人の身には過ぎた力を持つ証左だった。
光は、目を閉じるとすぐ傍で瞬いている。何色とも判じがたい、ただひたすらに輝きだけを凝らせたそれは爛々と息づいて彼を見つめ返すのだ。まるで、抗えるものなら抗ってみせろと言わんばかりに。
彼が抗いきれなかったときや力を振るうとき、身の内の光は影に濡れた翼となって現れ出でた。
彼に生まれつき与えられた力は強大だが、身体が疲労すると幾許か温和しくなった。汗が滴り落ちるほど剣を振るい続ければ、暫時痛みや幻覚から逃れられる。
とはいえ、光が息を潜めてくれているのはほんのわずかな間のことである。
目映い光は体内で暴れ回り、イルディオスの肉を食い破らんとばかりに四肢を駆け巡る。強烈なまでの飢餓感とともに押し寄せるその痛みを、いったいどんな言葉で表せばいいだろう。胃の腑を指で掻き回されるような痛み? それとも、地面を這いずり回りながら血反吐を吐くような煩悶?
イルディオスの力はここ数代においても稀なる強さであったから、両親は神殿に寄付を積み、果実探しを急がせた。祭司長や力ある者たちが、口を揃えて気の毒がったせいもある。果実が見つからねば早々に気が狂ってしまうだろう、と。
幼い頃はとりわけ自分に与えられた運命を恨み、羨みのまなざしで撫でられるたびにすべてをかなぐり捨てててやりたい衝動にかられたものだった。何にも知らないくせに、と。寝台の上で一人孤独にのたうち回っている時の惨めさは、筆舌に尽くしがたい。
どうして自分が。どうして、こんな風に生まれついてしまったのか。
何が力ある者だ。イルディオスの力は戦闘向きで土地を癒やす性質のものではなかったから、それこそ戦でもなければ役に立たない。
父母は嘆き悲しみ、兄は諦めるなと声をかけ続けてくれたが、イルディオスはいつ死んでもかまわないとさえ考えていた。
――この世に生まれ落ちてからずっと、苦しみに苛まれてきたのだ、それならば、この力とともに心中してやろう。
果実がいなくても、生きてはいける。ただ生き存えているだけならば。
イルディオスの人生は光と痛みと幻覚に覆い尽くされていて、それ以上を望もうとは思えなかった。
二十歳を超えてもなお正気を保っているイルディオスを人々は褒めそやしたが、果たして自分が本当に正常な精神を保っているのか疑わしかった。
何せ、彼のもとにはいつ何時も幻惑が訪れて、頭の上で水盆をひっくり返されたかのように弟神の記憶を浴びさせられる。弟神が兄神を慕う思い出も弟神が兄神のまなざしを欲しがってその先にいた娘を屠る記憶だって、飽きるほど眺めてきた。
(俺はとうに狂っていて、自分を正常だと信じている愚か者なのかもしれない)
息を細らせながら一日を終え、また目覚めては命があるのだと苦笑して、苦しみと共に浅い眠りに浸されて一日を終える。
そんな日々をくり返しているうちに、イルディオスは二十五になった。
ほとんど眠ることさえできなくなった彼は、弟神から神託が下ったという報せが届いたとき、朦朧とする意識の中で三度問い直したものだ。乳兄弟のエブロに何度も身体を揺さぶられて初めて、現実だという実感が滲み始めたことをよく覚えている。
いつしか望むことすらやめてしまった彼の果実は、ヴァルダノの長い歴史でも類を見ないことに、貴族の娘だった。
屋敷の離れで存在を隠匿されていたと聞いてしまったならば、イルディオスも重い腰を上げざるをえなかった。果実の生家は、敬虔と評判高いヒュミラ家である。それだけで、いったいどんな扱いをされているのか推し量れよう。
神託を授かった祭司官とともに向かった先で、出迎えに立ったヒュミラ伯爵家の当主は洗練された挙措で膝を突き、娘は離れの地下室にいると告げた。当主は泣き噎ぶ妻を抱き寄せると、侍従を呼んで案内をするように言いつける。
――大丈夫だ、もうあの娘に煩わされることもなくなる。
――あの娘のせいで、ヒュミラ家が悪く言われてしまうわ。
――だが、当代で最もお力の強い王弟殿下の果実だ。
「何言ってるんですかね、あれ」
エブロの呟きに、いつもは双子の兄の軽口を窘めるエティケでさえ頷いた。
「貴族の家から果実が出た例はありませんからね。三年前、ヒュミラ伯爵家に招かれた祭司官が神殿に戻る途中で死んだのも、そういうことでしょう」
血生臭い話の内容とは裏腹に祭司官はのほほんと微笑んで、早く行きましょうと促した。
離れは暗く、侍従が困惑しながら侍女の名を呼んでもただ暗闇が応えるばかりだった。
外套越しに感じる冷えた空気に、イルディオスは眉を顰める。一歩足を進めるごとに、名残の冬が透明な波となって押し寄せてくるように思われた。
怒りを溜めていくイルディオスからヒュミラ家の侍従は気まずげに目をそらし、足早に地下室へ案内するとそそくさと立ち去った。
「私が先に検めます。少々お待ちを」
イルディオスは頷いて、永遠にも思われるほど長くも短い間、息を潜めるようにして佇んでいた。
ややあって、祭司官に呼ばれたイルディオスは、逸る気持ちを堪えながら一歩踏み出した暗がりに、小さく瞬く光を見つけた。
訝しむよりも先に、ぐらりと一度、頭の芯を揺らすほどに強い目眩に襲われる。幻覚に慣れた身体が、反射的にぐっと腹の底に力を入れた。
イルディオスの果実だという娘は、何か眩しい光を前にしたように手のひらを顔の前にかざしている。それで、どうしようもなく分かってしまった。彼女は、この身の内に息づく凶暴な力を感じ取っているのだと。
その瞬間胸に押し寄せたのは、得体の知れない後悔と息を潜めてこちらを見つめる――否、目の前の果実を見つめる光であり翼であるものが湛えた、隠しきれない歓喜の念だった。
床に膝を突いたイルディオスは、ふと。こちらを見つめるまなざしに違和感を覚えた。
娘は清潔なドレスを纏ってはいるが、痛々しいほど痩せ細っている。だのに、その表情や瞳は悲惨な境遇にいっそ不釣り合いなまでに荒んでいなかった。
きっと、静謐という概念を凝らせたらこうなるのだろう。
淡い金の睫毛に縁取られた瞳は、見つめれば見つめた分だけ心が吸い込まれてしまいそうなまでに澄んでいた。
イルディオスが惹かれたのは、その色や形ではない。
見つめた瞳の最奥、幾重もの帳をかき分けた先に彼女の意思があることを窺わせるのに、やすやすとそこへはたどり着けないと思わされる……。
そうした得体の知れない静けさが、イルディオスの目を奪って離さなかった。
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