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22 アオちゃんと出会った場所
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お昼を食べてから僕はアオちゃんとゆまは姉ちゃんと三人で出掛けた。
行き先は特にない。天気がいいからなんとなくのブラブラお出掛けだ。
「ふふ、ナッちゃんとデート、久しぶりだね」
とは、ゆまは姉ちゃんの御言葉。
春休みに畑に行って冬の間に食べきれなくって悪くしたお漬け物を残雪の上に撒いたのがデートならこれもそうなのだろうけど。
「ね、ね、ナッちゃん、お姉ちゃんの服どう?」
ゆまは姉ちゃんはせっかくのデート(?)だからってじいちゃん家に置きっぱなしだった白いワンピースを着て、頭には麦わら帽子をかぶっている。
「うん、よく似合ってるよ。なんだかお嬢様って感じがする」
「ふふふ、ナッちゃんに褒めてもらっちゃった。今日は来て正解だったなぁ」
ゆまは姉ちゃんが微笑みながらくるりとその場で一回転するとふわりとスカートが広がった。
うん、本当に似合ってるよ。たとえワンピースが押し入れから出したばっかりで樟脳臭くっても、麦わら帽子が畑に出掛ける直前だったじいちゃんから強奪してきたヤツだったとしてもね。
セミの声がミンミンと響き渡る木々に囲まれた道を僕たちはエミおばさんの家の方角に向かって歩く。
ってかさ、道なんて家から出て南か北にしかないんだもん。目的も無いと何となく日の当たる方角に歩き出しちゃうよね。
アオちゃんは歩くのが遅いから、自分で歩いたり僕が抱っこしたりを繰り返す。
自分の興味を惹かれたモノなんかが目につくと僕の腕をペンペンって叩いて「降ろして」って合図を送る。
さっそくアオちゃんが僕の腕を叩く。なにを見つけたのかな?
地面に降ろしてあげるとポテポテって走り出した。
けど、進行方向にゆまは姉ちゃんが居るのに気がつくとビクッて一瞬止まって、姉ちゃんを大回りで回避する。
午前のベアハッグのおかげでアオちゃんはどうやらゆまは姉ちゃんに苦手意識を持ってしまったみたいなんだ。
「アオちゃ~ん、そんなあからさまに避けられるとお姉ちゃん悲しいな~。おんなじナッちゃんLOVE同盟の同志として仲良くしようよ~」
「キュッ、キュッ、キュッ」
アオちゃんを追い掛けるゆまは姉ちゃんにアオちゃんは必死で気がついていない様に振る舞っている。
それでもめげてないゆまは姉ちゃんはさすがだと思う。
アオちゃんが見つけたお宝はキレイな石だった。
真ん丸くって黒い石、水を掛けて磨けばもっとキレイになるだろう。
「キュッ、キュー♪」
ちっちゃい手に持っていろんな角度から石を眺めるアオちゃん。
丸い石はどこから見ても丸いと思うんだけど、アオちゃんの感覚では違うんだろうな。
「キュー♪」
「ホラ、みて」って石を持ち上げるアオちゃん。だけど見せようとした相手がゆまは姉ちゃんだとわかって硬直した。
「キュッ、キュッ、キュッ」
再び大回りして慌てて僕の側まで駆け寄ってきて「ホラ、みて」って僕にもう一度同じ動作を繰り返した。
「うん、アオちゃんステキなの見つけたね。ここらへんは川が無いから丸い石はなかなか無いんだよ。ゴツゴツの石のほうが多いんだ」
「でしょー」ってにっこりと笑うアオちゃん。
しばらく眺めてから僕に「仕舞っておいて」って差し出してきたから持っていたアオちゃんの移動用兼宝物仕舞う用のトートバッグに入れておいた。
アオちゃんのコレクションにもう一品宝物が増えた。
神社との分かれ道。ぼくたちは神社に向かう坂をのぼった。
「ふぅ、神社なんて何時ぶりかしら」
ゆまは姉ちゃんは鳥居までたどり着くとそんなことを言った。
姉ちゃんはあんまり神社には来ない。じいちゃん家に遊びに来てもたいてい家でゲームやマンガをしてゴロゴロしてることが多いからね。
後は僕で遊んでたり。
結界は相変わらずみたいで、潜り抜けると少し涼しくなった気がする。
「ここでアオちゃんに出会ったんだ。あのときのアオちゃんはまだ卵の状態で、僕の目の前で尻尾が生えて羽化したんだよ」
手水鉢を指してゆまは姉ちゃんにアオちゃんと出会った時の話をする。
「へぇ、運命の出会いだったのね。お姉ちゃんももしナッちゃんが卵の状態でここに居たら必ずお持ち帰りしたでしょうね」
なんだかトンチンカンなことを言ってゆまは姉ちゃんは手水鉢の裏の草むらをがさごそ漁り始めた。
姉ちゃん、僕はそんなところに居ないし、そもそも卵で生まれてもいないからね。
そしてアオちゃんは僕と初めて出会った時の話を聞いて「えっ? ぼくってこんなとこにいたの? ナッちゃんのこどもなんだとおもってたよ」って感じで目を円くして驚いた顔をしていた。
アオちゃん、キミ覚えてないんだね。それに僕は卵生じゃないし、卵を産みもしないんだってば。
その日は夕暮れまで神社で遊んだ。
社の裏まではいかなかったけど、境内で宝物を探したり、木々の隙間から見える山の向かうに何があるかなんかを話したりしてのんびりと過ごしたんだ。
その時に気がついたんだけど、ゆまは姉ちゃんは社の裏を全然気にしてなかったんだ。
僕たちは神社のそこらじゅうを散策したんだけど、裏手にまわろうとするとなぜだかゆまは姉ちゃんはクルッて向きを変える。
目的地の直前で突然逆に歩き出す自分の行動の不自然さにすら気がついていない。
じいちゃんが言ってた。結界はあっちに通じる穴の存在を知らない人間に対して気付かせない様にしてるって。
ええ、と、認識阻害? そーゆー効果をもたらすって。
これも魔法の力なのかな?
行き先は特にない。天気がいいからなんとなくのブラブラお出掛けだ。
「ふふ、ナッちゃんとデート、久しぶりだね」
とは、ゆまは姉ちゃんの御言葉。
春休みに畑に行って冬の間に食べきれなくって悪くしたお漬け物を残雪の上に撒いたのがデートならこれもそうなのだろうけど。
「ね、ね、ナッちゃん、お姉ちゃんの服どう?」
ゆまは姉ちゃんはせっかくのデート(?)だからってじいちゃん家に置きっぱなしだった白いワンピースを着て、頭には麦わら帽子をかぶっている。
「うん、よく似合ってるよ。なんだかお嬢様って感じがする」
「ふふふ、ナッちゃんに褒めてもらっちゃった。今日は来て正解だったなぁ」
ゆまは姉ちゃんが微笑みながらくるりとその場で一回転するとふわりとスカートが広がった。
うん、本当に似合ってるよ。たとえワンピースが押し入れから出したばっかりで樟脳臭くっても、麦わら帽子が畑に出掛ける直前だったじいちゃんから強奪してきたヤツだったとしてもね。
セミの声がミンミンと響き渡る木々に囲まれた道を僕たちはエミおばさんの家の方角に向かって歩く。
ってかさ、道なんて家から出て南か北にしかないんだもん。目的も無いと何となく日の当たる方角に歩き出しちゃうよね。
アオちゃんは歩くのが遅いから、自分で歩いたり僕が抱っこしたりを繰り返す。
自分の興味を惹かれたモノなんかが目につくと僕の腕をペンペンって叩いて「降ろして」って合図を送る。
さっそくアオちゃんが僕の腕を叩く。なにを見つけたのかな?
地面に降ろしてあげるとポテポテって走り出した。
けど、進行方向にゆまは姉ちゃんが居るのに気がつくとビクッて一瞬止まって、姉ちゃんを大回りで回避する。
午前のベアハッグのおかげでアオちゃんはどうやらゆまは姉ちゃんに苦手意識を持ってしまったみたいなんだ。
「アオちゃ~ん、そんなあからさまに避けられるとお姉ちゃん悲しいな~。おんなじナッちゃんLOVE同盟の同志として仲良くしようよ~」
「キュッ、キュッ、キュッ」
アオちゃんを追い掛けるゆまは姉ちゃんにアオちゃんは必死で気がついていない様に振る舞っている。
それでもめげてないゆまは姉ちゃんはさすがだと思う。
アオちゃんが見つけたお宝はキレイな石だった。
真ん丸くって黒い石、水を掛けて磨けばもっとキレイになるだろう。
「キュッ、キュー♪」
ちっちゃい手に持っていろんな角度から石を眺めるアオちゃん。
丸い石はどこから見ても丸いと思うんだけど、アオちゃんの感覚では違うんだろうな。
「キュー♪」
「ホラ、みて」って石を持ち上げるアオちゃん。だけど見せようとした相手がゆまは姉ちゃんだとわかって硬直した。
「キュッ、キュッ、キュッ」
再び大回りして慌てて僕の側まで駆け寄ってきて「ホラ、みて」って僕にもう一度同じ動作を繰り返した。
「うん、アオちゃんステキなの見つけたね。ここらへんは川が無いから丸い石はなかなか無いんだよ。ゴツゴツの石のほうが多いんだ」
「でしょー」ってにっこりと笑うアオちゃん。
しばらく眺めてから僕に「仕舞っておいて」って差し出してきたから持っていたアオちゃんの移動用兼宝物仕舞う用のトートバッグに入れておいた。
アオちゃんのコレクションにもう一品宝物が増えた。
神社との分かれ道。ぼくたちは神社に向かう坂をのぼった。
「ふぅ、神社なんて何時ぶりかしら」
ゆまは姉ちゃんは鳥居までたどり着くとそんなことを言った。
姉ちゃんはあんまり神社には来ない。じいちゃん家に遊びに来てもたいてい家でゲームやマンガをしてゴロゴロしてることが多いからね。
後は僕で遊んでたり。
結界は相変わらずみたいで、潜り抜けると少し涼しくなった気がする。
「ここでアオちゃんに出会ったんだ。あのときのアオちゃんはまだ卵の状態で、僕の目の前で尻尾が生えて羽化したんだよ」
手水鉢を指してゆまは姉ちゃんにアオちゃんと出会った時の話をする。
「へぇ、運命の出会いだったのね。お姉ちゃんももしナッちゃんが卵の状態でここに居たら必ずお持ち帰りしたでしょうね」
なんだかトンチンカンなことを言ってゆまは姉ちゃんは手水鉢の裏の草むらをがさごそ漁り始めた。
姉ちゃん、僕はそんなところに居ないし、そもそも卵で生まれてもいないからね。
そしてアオちゃんは僕と初めて出会った時の話を聞いて「えっ? ぼくってこんなとこにいたの? ナッちゃんのこどもなんだとおもってたよ」って感じで目を円くして驚いた顔をしていた。
アオちゃん、キミ覚えてないんだね。それに僕は卵生じゃないし、卵を産みもしないんだってば。
その日は夕暮れまで神社で遊んだ。
社の裏まではいかなかったけど、境内で宝物を探したり、木々の隙間から見える山の向かうに何があるかなんかを話したりしてのんびりと過ごしたんだ。
その時に気がついたんだけど、ゆまは姉ちゃんは社の裏を全然気にしてなかったんだ。
僕たちは神社のそこらじゅうを散策したんだけど、裏手にまわろうとするとなぜだかゆまは姉ちゃんはクルッて向きを変える。
目的地の直前で突然逆に歩き出す自分の行動の不自然さにすら気がついていない。
じいちゃんが言ってた。結界はあっちに通じる穴の存在を知らない人間に対して気付かせない様にしてるって。
ええ、と、認識阻害? そーゆー効果をもたらすって。
これも魔法の力なのかな?
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