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74 トロールの集落
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トロールの集落の朝は早い。
それは客人として居る僕らもまた同様である。各々が手に桶を持って河原まで行くからだ。
河原でひとりとひと桶の水を汲む。それが一日でひとりが使える水の量だそうなのだ。
そしてそれは僕ら客人も例外ではない。
朝の冷たい河に両手を浸して僕たちはそれぞれの桶に水を汲んだ。
アオちゃんのだけは僕が代わりに汲んだが。
ちなみに普段は自由気ままなトロールの子どもも与えられた仕事はしっかりとこなす。サボると恐いママからの拳骨が降ってくるからだ。
ともあれその水を利用し今日一日の料理から手洗い、更のは沐浴までを賄わなければならず決して多いとは言えない量でしかないのだ。
僕たちはトロールから干魚と干飯、それに僅かな野菜を貰いそれを鍋に入れ火に掛けた。
暫くするとクツクツと沸き出したので、そこへさらにさやえんどうに似た野菜をチョッピリ放り込んだ。
このさやえんどうみたいなモノは塩分を多量に含んでおり、この地でのトロールの塩分の大半をこれで賄っているのだと世話をしてくれたトロールは話してくれた。
斯くして出来上がった干魚と飯の粥、これが今日の一品である。
これを三分の一食べ朝食とし、もう三分の一を昼に食べ、残りと二枚のクラッカーに似たクッキーで夕食とする。
ちなみに昨日の夕食はマジでヤギ(勿論ヨウタロウさんじゃくって集落で飼っていたただのヤギ)だったけど、アレは本当にハレの日しか出ないお御馳走だったみたいだね。
ヤギの肉や初めて見る果物やなんかが出た。(生っぽいお肉でちょっとドン引きしたけど、食べてみるとスッゴく美味しかった)
夜はもう日暮れとともに寝床に着く。
寝床と言っても布団は寝藁であったり家畜と共に寝たり、はたまた雑魚寝であったりなのだが… 僕らは三人で寝藁のなかで寝ていた。
まぁなんの楽しみもない毎日であったお陰でS字オニやらカゴメカゴメやらと言った素朴な遊びがおおいにトロールたちにウケた。
日々の作業の合間にS字オニを子どものトロールたちと楽しみ、カゴメカゴメをし僕たちはトロールの集落にどんどんと馴染んでいったんだ。
後はアオちゃんが飛ぶのもウケたっけ。
僕の腕から翼を広げて飛び出し、宙でもって一回転、二回転、そして真っ直ぐに高く真上へ舞い上がり真下に音速で落ちるのは何度繰り返してもトロールたちからどよめきをウケたんだ。
そんな毎日にも慣れた数日後、ヨウタロウさんが集落に来て僕らを連れ出した。
「どこに連れてってくれるの?」
「うん、あっちとの穴が安定し始めたからもしかしたら通れるかもと思うてもう」
「そっかー、ならトロールさんたちにちゃんとお別れをするくらいの時間はとって貰いたかったかなぁ」
「おや、随分と仲良くなったみたいじゃなぁ。我は正直きゃつらは苦手なんじゃ、特に子どものトロールどもはな。何しろきゃつらこちらの話なんぞちっとも聞かずひたすらに自分たちの事ばかりしゃべくり続けるでな、聞いるだけで頭が痛くなってくるんじゃ」
「あー… それはわかるわー、トロールってひとの話聞かないよねー、でもそれも含めて幻獣って生き物との交流は新鮮で楽しかったんだけどねぇ」
「そうか、楽しめたのならば何よりじゃ。トロールどもと一緒では退屈しているかと思っていたがホンにヒトとは何処に在っても溶け込むものよのう」
ヨウタロウさんが言うヒト基準は僕たちのじいちゃんを基準にしているんだろうけど、あのヒトとそこらの一般人を一緒くたに考えたらいけない気がするんだよね~、あのヒトは人間って種類でも野性味を溢れ過ぎさせている一面があるから。
それは客人として居る僕らもまた同様である。各々が手に桶を持って河原まで行くからだ。
河原でひとりとひと桶の水を汲む。それが一日でひとりが使える水の量だそうなのだ。
そしてそれは僕ら客人も例外ではない。
朝の冷たい河に両手を浸して僕たちはそれぞれの桶に水を汲んだ。
アオちゃんのだけは僕が代わりに汲んだが。
ちなみに普段は自由気ままなトロールの子どもも与えられた仕事はしっかりとこなす。サボると恐いママからの拳骨が降ってくるからだ。
ともあれその水を利用し今日一日の料理から手洗い、更のは沐浴までを賄わなければならず決して多いとは言えない量でしかないのだ。
僕たちはトロールから干魚と干飯、それに僅かな野菜を貰いそれを鍋に入れ火に掛けた。
暫くするとクツクツと沸き出したので、そこへさらにさやえんどうに似た野菜をチョッピリ放り込んだ。
このさやえんどうみたいなモノは塩分を多量に含んでおり、この地でのトロールの塩分の大半をこれで賄っているのだと世話をしてくれたトロールは話してくれた。
斯くして出来上がった干魚と飯の粥、これが今日の一品である。
これを三分の一食べ朝食とし、もう三分の一を昼に食べ、残りと二枚のクラッカーに似たクッキーで夕食とする。
ちなみに昨日の夕食はマジでヤギ(勿論ヨウタロウさんじゃくって集落で飼っていたただのヤギ)だったけど、アレは本当にハレの日しか出ないお御馳走だったみたいだね。
ヤギの肉や初めて見る果物やなんかが出た。(生っぽいお肉でちょっとドン引きしたけど、食べてみるとスッゴく美味しかった)
夜はもう日暮れとともに寝床に着く。
寝床と言っても布団は寝藁であったり家畜と共に寝たり、はたまた雑魚寝であったりなのだが… 僕らは三人で寝藁のなかで寝ていた。
まぁなんの楽しみもない毎日であったお陰でS字オニやらカゴメカゴメやらと言った素朴な遊びがおおいにトロールたちにウケた。
日々の作業の合間にS字オニを子どものトロールたちと楽しみ、カゴメカゴメをし僕たちはトロールの集落にどんどんと馴染んでいったんだ。
後はアオちゃんが飛ぶのもウケたっけ。
僕の腕から翼を広げて飛び出し、宙でもって一回転、二回転、そして真っ直ぐに高く真上へ舞い上がり真下に音速で落ちるのは何度繰り返してもトロールたちからどよめきをウケたんだ。
そんな毎日にも慣れた数日後、ヨウタロウさんが集落に来て僕らを連れ出した。
「どこに連れてってくれるの?」
「うん、あっちとの穴が安定し始めたからもしかしたら通れるかもと思うてもう」
「そっかー、ならトロールさんたちにちゃんとお別れをするくらいの時間はとって貰いたかったかなぁ」
「おや、随分と仲良くなったみたいじゃなぁ。我は正直きゃつらは苦手なんじゃ、特に子どものトロールどもはな。何しろきゃつらこちらの話なんぞちっとも聞かずひたすらに自分たちの事ばかりしゃべくり続けるでな、聞いるだけで頭が痛くなってくるんじゃ」
「あー… それはわかるわー、トロールってひとの話聞かないよねー、でもそれも含めて幻獣って生き物との交流は新鮮で楽しかったんだけどねぇ」
「そうか、楽しめたのならば何よりじゃ。トロールどもと一緒では退屈しているかと思っていたがホンにヒトとは何処に在っても溶け込むものよのう」
ヨウタロウさんが言うヒト基準は僕たちのじいちゃんを基準にしているんだろうけど、あのヒトとそこらの一般人を一緒くたに考えたらいけない気がするんだよね~、あのヒトは人間って種類でも野性味を溢れ過ぎさせている一面があるから。
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