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タメ蔵

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 「おお!伝説のタメ蔵ためぞう師匠とこんな処でお会いできるとは。
 ぜひお手合わせ願いたい!」
 「いいよー」
 肥ったオタクは気軽に言った。
 「感謝いたす」
 黒影は深々と頭を下げる。
 「では参る、トウ!」
 黒影は天高く飛び上がったかと思うと、タメ蔵の肩に跳び蹴りを食らわす。
 ゴキッと鈍い音がする。
 「ぐおおおおおおー!」
 足が変な方向に曲がって黒影が転がり回る。
 「な、なんやこいつ!」
 不死裂が驚く。
 タメ蔵がバックの中に手を入れてゴソゴソする。
 「な、なんや武器を出すんか!」
 不死裂は警戒して身構える。
 タメ蔵はバックからバナナを取り出す。
 「これから、バナナを食べます」
 そう言うとムシャムシャとバナナを食べ出す。
 「すごく……甘くて……おいしいです……」
  それを見て不死裂の顔が紅潮する。
 「なめとんのかああああー!」
 不死裂は一瞬でタメ蔵の処まで移動すると、タメ蔵の胸に手を当てる。
 「劫殺!」
 不死裂が叫ぶ。
 タメ蔵はぼーっとしている。
 「な、なに!ワシの劫殺が効かんやと!」
 「おい止めとけ、タメ蔵は甲摩忍序列五位だぜ、お前瞬殺されるぞ」
 勇名が助言する。
 「じゃかましわい!今ので分かったで、こいつ、バフに全振りしとる。
 それやったら一切攻撃できんでくの坊じゃ。いくでえ、亡神!」
 不死裂はタメ蔵の肩に両手を置く。
 タメ蔵はぼーっとしている。
 その横を女の子二人組が通る。
 「うわっ、こんな処でオタゴッコしてる。きもーい」
 「だめよ、見ちゃ」
  不死裂の顔が真っ赤になる。
 「お、お前が反応せえへんからゴッコ遊びやと思われてしもたやろがい!」
 「いいこ、いいこ」
 タメ蔵が不死裂の頭をなでる。
 「くはっ」
 不死裂の足がふらつく。
 「うわっ、アイツ生きてるよ」
 勇名が目を丸くした。
 「え?どういうこと?」
 驚いて武が勇名を見た。
 「タメ蔵は今、不死裂の体に一瞬にして大量の糖分を流し込んだんだよ、
 本来は戦場で栄養失調になった兵士を回復させるバフスキルだが、
 人間の処理能力を超えた糖分を送り込むと肝臓が処理できなくなって
 普通の人間なら即死するところだ」
 勇名が解説した。
 「ヤバイ、こいつやばいで」
 不死裂は足をガクガクさせながらも必死のパッチで立っている。
 「へへへ、お前なかなかやるやな……」
 不死裂が話しかけるのを無視してタメ蔵が手を伸ばす。
 「止めろや!」
 不死裂はタメ蔵の腕を服の上から触って払いのける。
 「くそっ、服の上からも唐を注入してきよった!ぐはっ!」
 不死裂は歯を食いしばって後ろに飛び退く。
 「クソ!クソ!クソ!処理能力いっぱいや、
 死なんようにするので手いっぱいで次の技が出ん、 
 反撃せな殺される!殺される!殺されるがああああー!」
 タメ蔵は容赦なく、ヨチヨチと不死裂に近づいてゆく。
 「あばばばばばばばー!」
 混乱しながら不死裂は両手でタメ蔵の頭を持つ。
 「天乙貴人!」
  不死裂が叫ぶ。
 叫びながら後ろにひっくり返った。
 泡を吹きながら倒れている。
 タメ蔵の右の鼻の穴からツーッと鼻血がたれた。
 「あ……生まれて初めて格下と戦って流血したよ」
 勇名がタメ蔵の肩をぽんと叩く。 
 「殺すなよ」
 タメ蔵は無表情のまま勇名を見る。
 「いやー、いいもん見せてもらったなあ。
  寿司喰いにいこうぜ、おごってやるからよお」
 「オモチャやさんがいい。ロボットのオモチャがほしい」
 「いいぜえ、いいぜえ」
  勇名はタメ蔵と武を引き連れて帰っていった。

 
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