魔王軍のお荷物〈最弱クズ魔族は〉巨乳女騎士を助けたら裏切ったと勘違いされ、難攻不落の魔王城から脱出するために〈魔王様を出し抜くようです〉

舎人二阿木

文字の大きさ
上 下
61 / 80
◇◇◇ 【第二章】魔法使いと時間の杭 ◇◇◇

天才剛毛ロリ童女を添えて~リリィのお願い、もあるよっ!

しおりを挟む




「こっちだ!こっちに来たぞ!!」「ぐああああ!!」「誰か! 誰かこいつを――」「よしっよしっ!」「〇ね!〇ね!!」「押し返せ!! 押し返せよおおお」

「すすめえええええええ!!」

 戦闘開始から六時間後。
 以前奇襲を掛けられた時に出来た外壁の穴、そこを皮切りにオーク軍は大量に街へとなだれ込んでくる。
 バグライト側の結界は以前から全くと言っていいほど復活しておらず、この魔導国には戦争経験の乏しいものばかりが集まっていた。
 最新の魔導兵器、大量のマジックアイテム、並々ならぬ魔法知識、それらを集めても、連携の取れていない人間同士を集めて出来上がった即席の軍では、奪うことを生業とし、それでしか生きてこなかった、生きられなかった生物を止めることは難しかった。
 いかに個人や軍備が優秀な環境でも、それに対する知識や連携の鍛錬がない素人では、やはり相手にはならないのだろう。
 そう思わざるを得なかった。

「……そろそろですかね」

 防衛に失敗した防壁の上で、バーゼルは風になびきそうになる髪を抑えながらつぶやいた。自身の下からは悲鳴や、少女達の喚き声が聞こえる。
 防壁の落とし戸が開かれ、中から一人の少女が防壁の上に出てくると、バーゼルを見つけ、半身を出した状態でバーゼルをその涙や血、鼻水でぐちゃぐちゃに汚れた顔で見る。

「バ、バーゼルさん…お、弟…弟を……」「ぎゃああああ!!」「来てる来てる!! 来てるぞ!」「逃げろおおお!!」「弟を…どうか、どうか…」「ファイアーボール! ファイアあ゛あ゛ああ゛あ゛!!!!」
「……。」

 バーセルはその少女に近づくため踏み出しそうとしたその時、グチュウウゥと、嫌な音が響き、少女は、何かに引っ張られるように、下へ、引きずり落されてしまう。

「…………、もう…いいでしょうか」

 そう、つぶやいた。
 瞬間。――――街の方で大爆発が起きた。

 その衝撃は、防壁の上に立っていたバーゼルでさえも身を震わせる爆音をとどろかせ、黒煙を高く立ち昇らせながら、戦火に燃える街に新たな風を吹かせたのだった。

「リリィ…! まったく…学習能力というものがないのでしょうか…」


 ◇ ◇ ◇


「なに!? 戦闘に参加したいだァ!? 寝言は寝て言えよリリィさん」
「さん付けさえすれば敬っているって事にはならないからね!? 看守くん!!」
「うーーーん」
「……。」

 拘留所、檻の中で私は、今後の事情について他三人に協力を求めてみることにした。
 と言ってもこれは必要事項で、必須事項なので、協力というよりは説得をしていたと表現するほうが良いかもしれない。
 魔導国家だとか、最高教育機関だとか持ち上げられているこの国の実情は、それはもうぐちゃぐちゃだった、比喩ではなく、内政何てあったもんじゃなかった、もともと、学位が高いものが政治権を持ち、魔法についてより深い知識と造形を持ったものが発言権を持つという構造自体に違和感を覚えていたのだが、こんにちに至っては、外交までぼろぼろだったとは私の予想をはるかに超えてしっちゃかめっちゃかだったみたいだね。

 「でも…やっぱり止めた方がいいっすよ」アルマ君は私に疑いの目を向けられる。…まあ当然だろう、アルマ君には…その…随分みっともない姿を見せたからね。

「それについては心配いらないよ、だけどね、このままだと確実にこの戦争、負けるんだよ。いいかい、この国には訓練さえた兵士も少ない、君たちキラベルの学生を戦わせることぐらいが関の山だろう、だけどそれではダメなんだ、連携の取れない知識もない素人を投入して何とかなるものじゃないんだよ、戦争は、だからこそ、だからこそ私が行かなければ、この国を、街を守るためには私が行くしかないのだよ!!」
「……やっぱりダメだ」

 看守君は頭を悩ませた末、そう断言してきた。こちらににらみをきかせると、「俺が何でそういってんのか、分かるよなリリィさん……」よりいっそうに、真剣に、そう問いかけてくる。
 確かに。
 分かっているよ、看守くん。分かっているけれどね、だからこそ…。

「……だからこそ、私が行かなきゃならないんだよ、看守くん。……いいや、行かせてくれないかね、お願いします」
「え? え? 何すか? 急になんなんすか?」

 困惑するアルマ君を無視し、私は看守君に<お願い>をした、普通の人なら一生にそう何度も訪れないだろう、一生のお願いだったよ、三つ指をついて、姿勢を低くして。一生懸命。

「私だったら変える力がある、キミは知っているはずだよ」
「…………はあ」

「嫌だぞ」

 などとやり取りをしていると、今まで一言も発さなかったなんちゃって騎士様が、そんなことを言い出した。

「それは戦争に行くという意味だろ!? 私は嫌だぞ!! 絶対に行かないからな!!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

処理中です...