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◇◇◇ 【第二章】魔法使いと時間の杭 ◇◇◇
天才剛毛ロリ童女を添えて~リリィのお願い、もあるよっ!
しおりを挟む「こっちだ!こっちに来たぞ!!」「ぐああああ!!」「誰か! 誰かこいつを――」「よしっよしっ!」「〇ね!〇ね!!」「押し返せ!! 押し返せよおおお」
「すすめえええええええ!!」
戦闘開始から六時間後。
以前奇襲を掛けられた時に出来た外壁の穴、そこを皮切りにオーク軍は大量に街へとなだれ込んでくる。
バグライト側の結界は以前から全くと言っていいほど復活しておらず、この魔導国には戦争経験の乏しいものばかりが集まっていた。
最新の魔導兵器、大量のマジックアイテム、並々ならぬ魔法知識、それらを集めても、連携の取れていない人間同士を集めて出来上がった即席の軍では、奪うことを生業とし、それでしか生きてこなかった、生きられなかった生物を止めることは難しかった。
いかに個人や軍備が優秀な環境でも、それに対する知識や連携の鍛錬がない素人では、やはり相手にはならないのだろう。
そう思わざるを得なかった。
「……そろそろですかね」
防衛に失敗した防壁の上で、バーゼルは風になびきそうになる髪を抑えながらつぶやいた。自身の下からは悲鳴や、少女達の喚き声が聞こえる。
防壁の落とし戸が開かれ、中から一人の少女が防壁の上に出てくると、バーゼルを見つけ、半身を出した状態でバーゼルをその涙や血、鼻水でぐちゃぐちゃに汚れた顔で見る。
「バ、バーゼルさん…お、弟…弟を……」「ぎゃああああ!!」「来てる来てる!! 来てるぞ!」「逃げろおおお!!」「弟を…どうか、どうか…」「ファイアーボール! ファイアあ゛あ゛ああ゛あ゛!!!!」
「……。」
バーセルはその少女に近づくため踏み出しそうとしたその時、グチュウウゥと、嫌な音が響き、少女は、何かに引っ張られるように、下へ、引きずり落されてしまう。
「…………、もう…いいでしょうか」
そう、つぶやいた。
瞬間。――――街の方で大爆発が起きた。
その衝撃は、防壁の上に立っていたバーゼルでさえも身を震わせる爆音をとどろかせ、黒煙を高く立ち昇らせながら、戦火に燃える街に新たな風を吹かせたのだった。
「リリィ…! まったく…学習能力というものがないのでしょうか…」
◇ ◇ ◇
「なに!? 戦闘に参加したいだァ!? 寝言は寝て言えよリリィさん」
「さん付けさえすれば敬っているって事にはならないからね!? 看守くん!!」
「うーーーん」
「……。」
拘留所、檻の中で私は、今後の事情について他三人に協力を求めてみることにした。
と言ってもこれは必要事項で、必須事項なので、協力というよりは説得をしていたと表現するほうが良いかもしれない。
魔導国家だとか、最高教育機関だとか持ち上げられているこの国の実情は、それはもうぐちゃぐちゃだった、比喩ではなく、内政何てあったもんじゃなかった、もともと、学位が高いものが政治権を持ち、魔法についてより深い知識と造形を持ったものが発言権を持つという構造自体に違和感を覚えていたのだが、こんにちに至っては、外交までぼろぼろだったとは私の予想をはるかに超えてしっちゃかめっちゃかだったみたいだね。
「でも…やっぱり止めた方がいいっすよ」アルマ君は私に疑いの目を向けられる。…まあ当然だろう、アルマ君には…その…随分みっともない姿を見せたからね。
「それについては心配いらないよ、だけどね、このままだと確実にこの戦争、負けるんだよ。いいかい、この国には訓練さえた兵士も少ない、君たちキラベルの学生を戦わせることぐらいが関の山だろう、だけどそれではダメなんだ、連携の取れない知識もない素人を投入して何とかなるものじゃないんだよ、戦争は、だからこそ、だからこそ私が行かなければ、この国を、街を守るためには私が行くしかないのだよ!!」
「……やっぱりダメだ」
看守君は頭を悩ませた末、そう断言してきた。こちらににらみをきかせると、「俺が何でそういってんのか、分かるよなリリィさん……」よりいっそうに、真剣に、そう問いかけてくる。
確かに。
分かっているよ、看守くん。分かっているけれどね、だからこそ…。
「……だからこそ、私が行かなきゃならないんだよ、看守くん。……いいや、行かせてくれないかね、お願いします」
「え? え? 何すか? 急になんなんすか?」
困惑するアルマ君を無視し、私は看守君に<お願い>をした、普通の人なら一生にそう何度も訪れないだろう、一生のお願いだったよ、三つ指をついて、姿勢を低くして。一生懸命。
「私だったら変える力がある、キミは知っているはずだよ」
「…………はあ」
「嫌だぞ」
などとやり取りをしていると、今まで一言も発さなかったなんちゃって騎士様が、そんなことを言い出した。
「それは戦争に行くという意味だろ!? 私は嫌だぞ!! 絶対に行かないからな!!」
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