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◇◇◇ 【第二章】魔法使いと時間の杭 ◇◇◇
天才剛毛ロリ童女を添えて~新たな<魔族>登場っ、もあるよっ!
しおりを挟む「お、おおおおお鬼人族(オーガ)!?」
俺の肩越しに見ていたリリィは、向かってくる巨体のオーガに完全にビビり散らかし、そんな情けない声を上げていた。
俺だって野良のオーガだったら同じように叫んでいたところだったが、何せこいつは見慣れた、ちょっとした知り合いなので、それほど恐怖心はなかった、むしろ――。
「何故こんなところにオーガがいるんだ!?」
オークとオーガ、名前は何となく似てるが…そんなに驚くことなのか? 魔王城で色んな種族といたせいか、その辺りがあいまいだ、まあ、リリィの驚く姿からして珍しいことなのだろう。
イボーグはその巨体を、オークたちに円形に囲まれた俺たちの前まで寄せると、膝を折り、「よっこい小一、ん…あ˝あ˝ーー」とおっさんクサいことを言いながら、ドカッと座り、首を左右に二回鳴らしてみせる。
「「……。」」
「お˝い、ガブ! 酒だ、酒もってこい!!」
「……くっ」
座ったのにも関わらず、何もしゃべらないオーガに困惑していると、荒々しくそんなことを命令し始めた、なるほど、酒を出されるのを待っていやがったのか、それにしてもガブとは、誰の…静観していると、後ろで待機していた隊長オークが悔しそうに奥へと引いていく。
「単刀直入に言うぜえ、ココに首ィ突っ込むのは止めとけ」
「分かった。」
「ん? え!?」
間髪入れない即答に声を上げて驚くリリィ、だが、俺から言わせてればリリィが驚くのはコイツを知らないからだ。
酒呑イボーグ。
魔王軍の中でも特に畏れられていた、とにかく力とスタミナが特筆しており、まさに破壊の権化。一度暴れ出したら止められず、破壊そのものを楽しむ野蛮な変態だ。オーガという種族がそういった物を好むというのもあるが、コイツは異常だ。戦闘に出せば、優勢状態だった敵軍隊を一人で壊滅することはもちろん、動いた後は酒が飲みたいという理由だけで、周りにあった村や街まで破壊して帰ってきたヤベ―奴。
個人的に信じられなかったのが、四天王(ヴォックス)も飛び入り参加した魔王軍大腕相撲大会でも、優勝していることだ。
「なんだそれは! いやそうではなく、だとしても、ココは引けないところだろう? 何を即答しているんだね!?」俺の渾身の紹介コーナーを聞いても、まだ分かっていない様子のリリィ。
「お前はバカか? だから、魔王軍出の俺が作った逆らっちゃいけねー相手ランキングベストファイブに入るヤベ―奴なんだよ! 分かれよ!」
「なんだねその端にも棒にもかからないリストは、とにかく、私たちがここで引けば戦争待ったなしだ引くわけにはいかないのだよ、それにおかしいね、キミの知り合いということは、魔族なんだろ? 何故こんなところにいる、聞きださなければ帰れんぞ!」
研究職の血が騒いだのか、リリィは震える小さい体をなるべく押し殺し、何とか足が笑う程度に納めると、おずおずといった雰囲気でイボーグの前に出ると「キ、キミね! いきなり出てきて何なんだね! この里とは関係のない部外者だろう!? 黙っていて貰えるかな」と想像の十倍ぐらいの強気な態度で喰ってかかる。
が、そんな事、意にも返さないといった感じで、というか…「おお? お嬢ちゃん! 威勢がいいなあ、気ィの強えー女はイイ女だ、嬢ちゃん将来有望だなガッハッハ!!」と軽くあしらわれ、おまけに「嬢ちゃんよく見とけよ、このナイフをな、口に…ホイッバクバクバクゥゥ…ゴックン! 食べちゃいましたー! どうだ面白れェか?」と奥行きを使ったしょうもない酔っ払いがやるような芸で絡まれ、頭を撫でられていた当人のリリィは地団駄を踏みながら怒り狂っていた。
「バカにしているのかねッ! そうなのだろう!?」
なんだか見たような光景だった。
「くっ、このッ…何故、皆私にマジックを見せたがるんだ…失礼だぞ! 私はキラベルきっての天才魔法使い、リリ・リマキナ、二十歳だよ!!」
「…………、なに?」
わしゃわしゃと、デカくごつい手で上機嫌に撫でていたイボーグの動きがピタリと止まり、姿勢を低く、低くすると、リリィの身長ほどある頭を、ズイッと寄せてまじまじと観察するように、見る。
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