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巨乳女騎士を添えて~魔王様との対話もあるよっ!
しおりを挟む魔王の意識はこちらへと向き、乳山は何とか金縛りから解放されたようだ、蛇ににらまれたカエル、比喩表現ではなく、本当にそう感じるほど圧倒的な力の前に乳山はさっきの元気も無くなり、ただひたすら、これよりも後ずさらないよう震える足に力を込めていた。
「ジン。倒錯シタ、歪ンだ精神を持つスラムの子…我ガ愛しい息子ヨ、こウシて語らうノは初めテカ」
乳山は先程の殺気が余程効いたのか、小声で(息子、お前魔王の子なのか?)とこちらに話しかけてくる。
「そんなわけねーだろ、ジジイは誰に対してもあんな感じだよ、…魔族限定だが」
「息子ヨ、わザワざ我の前に来タトいウことハ相応の頼みガアっテ来たのデハないカ?」
「ああ? まあ…な」
「なンダ? 遠慮は要ラぬ、森羅万象、魔王デアる我に叶えラレぬこトなど何もナイ、マしてヤ可愛い我ガ息子の頼ミ、見てオッたゾ、産まれテカら今まデの全てヲナ、息子ヨ、我に成長の喜びを与えてクレた褒美ダ、申しテミよ」
申してみよ、か、俺がいま、一番に望むこと――それは。
「ギャルのパンティをおくれ。」
「いや定番だけども!」
先程まで怯え、息をひそめていた乳山が盛大な、よく分からないツッコミを入れる。
なんだよデケー声出んじゃねーか。
「…ソレガ息子の頼ミデあルなら、カ、叶えヨウ」
「ほら見ろ! 息子が誕生日に十八禁のゲームねだってきた時のお父さんみたいになっちゃってるじゃないか!」
「うるせーな! さっきから訳わかんねーこと言うんじゃねーよ、ちょっとした洒落だろ!」
「ハッハッ…………ハッハッハッハッハッハッハッハッ!! 冗談であっタカ、うム、なカナか肝が座っテイるみタイダな、面白イ成長を見ラレて我ハうレシいぞ」
魔王はいったい何がそんなに面白いのか、実に愉快そうに大声で笑い出した。もちろん本体はピクリとも動いていない。
俺は跪き首を垂れる。乳山は急にかしこまった俺がそんなに意外だったのか、目を見開いて驚いていた。
冗談だ、冗談に決まっている、俺が俺たちがいま、一番に望むこと。
「ジジイ、ここから俺たちを逃がしてく――」
「出来ヌ」
間髪入れず。先程まで笑っていた魔王の声は冷たく、威厳のある声に変わる。
「チッ」
「……。」
「語弊があっタ、ヨり正確に言エバ<俺たち>を逃がしテやるこトは出来ない」
「あ? なんだ? 俺だけ、だったら逃がしてくれるっつうことかよ?」
「そウだ」
「――――え」
「なにっ!?」
あっさりと言った魔王の答えに俺は思わず気の抜けた声を出してしまった。俺だけなら、俺だけならココから出れる……チラと乳山を見ると、明らかに今日一番の顔色の悪さだった、俺は向き直り、魔王をキッと覚悟の決まったような、そんな顔でにらみつけると。
「あっ、じゃあお願いします」
魔王に頼んだ。
「うおい!!!! お、お前ェ!! 毎度毎度いい加減にしろ! というか、作戦って魔王に頼み込むことだったか!? 説明し――――」
…乳山?
跪いた俺の胸倉を掴み、揺すりながら文句を言っていた乳山が、消えた。
確か、パアアアアン!!!! と何かが破裂したような音がして、俺の目の前から乳山が一瞬にして居なくなった。なんだ? いったい…訳が分からない。
水音が聞こえる、ゴフッ、同時に液体を吐き出すような音が聞こえる、俺の横、十メートル先で乳山は血だまりの中痙攣し、ゴフッ…ガフッ! と形容しがたい声を上げ続け、震える手で鎧の隙間から小判型の艶々とした葉を取り出し口の奥へ押し込んでいた。
魔王はピクリとも動かさないその体でそれを見ると、虫けらを、蔑むような抑揚のない声で言い放つ。
「呻くナ耳障リダ」
続けて言う。
「我が子ヨ、我が息子ヨ、分カっておくれ、お前を逃がスコとは許そう、だがソレは駄目ダ置いてユけ」
「…………。」
「そレハ我らノ地を踏みニジリ、あマつさえ可愛い我が息子をたブラかシ、利用しよウとしタノだ――捨て置け、ヨいな」
「……チッ」
「イイ子だ、魔族とシテ<騙シ惑ワし奪ウ>恥じノナい行動を取レ」
俺は乳山を見る、血だまりの中、肺に穴が開いたのかヒューヒューと高い風切り音を響かせながら俺の方を恨めしそうな、憎悪に満ちた表情で、表情で――な、なんだ…? なんだその目は…!
乳山の瞳は澄みきり、吸い込まれそうになる何処か遠くの地を思わせるそんな目で俺を見ていた。俺はそれに見つめられ数秒ほど停止し、いや正直に言おう、見とれていた、俺はその眼に見惚れていた…パクパクと血にまみれた口を動かす、なんだ? 今なんと言った? 「す…け」なんだ? 「す…おけ」 何なんだ!?
「捨て置け。」
!?。
「一つ…条件をツけヨウ」
「あ、……あ?」
「我が子ヨ、分かッテいるト思うが、我ガ城でノ出来事は全テヲ無かったコトにハ出来ん――――<能力>、能力を置いてイけ、元々なイようなもノダ、問題なカろう? そうスレば五体満足デ、この地を去ルコとを許ソう」
…………。それは、<俺の唯一のアイデンティティ>
「――バカにすんなよ。」
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