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第九話
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幼少期より私は未来視の能力を使いこなしていた。
幸いなことにこの国で未来視の力は恐れられていると知っていたので、誰にも話すことはなかった。
両親は私を病弱だと思っていたようだが、実は違う。
私は未来視が使える選ばれた人間なのだ。
人生の起点となる場面で、未来視は都合よく私の前に現れた。
激しい頭痛と共に現れる未来は、全てが私に都合の良いものであるとは決してない。
だが、与えられた未来の映像を分析すれば、事前に策を練ることは簡単なことだ。
未来視で視た未来は変えられなくても、その先は変えられるのだ。
学園の入学試験、卒業試験……未来視のおかげで高得点を取ることができた。
元々頭の回る方だったので、映し出された問題を暗記するなど訳ないことだった。
そして学園を卒業後は、ヨハン王子の秘書となった。
王子を見た瞬間胸が躍る。
この人の婚約者となれたなら……そう考えるだけで喜びに満ち溢れた。
しかし。
「どうして!?ヴィクトリア!?はぁ!?」
未来視に映しだされた光景は王子とヴィクトリアが結ばれるものだった。
違う……こんなのは違う。
そんな折、私は王子から相談を受ける。
いや、正確には様子がおかしい彼のことを私が心配したのが始まりだ。
「リリア。実はヴィクトリアのことで相談があって……」
王子からヴィクトリアが未来視を使えると聞いた時は、心臓が飛び出る思いだった。
私の他にこの神の力に選ばれた人間が存在していたのだ。
高揚感と共に、酷い妬みが沸き上がってきた。
私はひたすら隠し続けて今まで努力してきた。
それをあの女は他人にバラした挙句に、私の想い人と結ばれるというのか。
そう思ったら私のやることは一つだけだった。
ヴィクトリアが未来視を使えることを言い広め、彼女を婚約者の座から引きずり下ろすのだ。
皆優秀な私のことを信じてくれた。
涙を流し、困っている顔をし、可愛い声を出して……演じ続ければ……隠し続ければ……。
結果、ヴィクトリアは王子と婚約破棄をし、婚約者の座に私はついた。
そして先日。
私に未来視が訪れた。
それは私がヴィクトリアを刺している場面だった。
ヴィクトリアの腹から流れ出した血は残酷に床を赤く染める。
「ふふっ……神は罪人を裁く権利を私にお与えになるのね……」
私は大丈夫。
この力があればもっと幸せになれる。
そのために邪魔な人間は地獄に落ちればいい。
「さよなら、ヴィクトリア」
私は彼女を刺すと、その場から逃走した……
幸いなことにこの国で未来視の力は恐れられていると知っていたので、誰にも話すことはなかった。
両親は私を病弱だと思っていたようだが、実は違う。
私は未来視が使える選ばれた人間なのだ。
人生の起点となる場面で、未来視は都合よく私の前に現れた。
激しい頭痛と共に現れる未来は、全てが私に都合の良いものであるとは決してない。
だが、与えられた未来の映像を分析すれば、事前に策を練ることは簡単なことだ。
未来視で視た未来は変えられなくても、その先は変えられるのだ。
学園の入学試験、卒業試験……未来視のおかげで高得点を取ることができた。
元々頭の回る方だったので、映し出された問題を暗記するなど訳ないことだった。
そして学園を卒業後は、ヨハン王子の秘書となった。
王子を見た瞬間胸が躍る。
この人の婚約者となれたなら……そう考えるだけで喜びに満ち溢れた。
しかし。
「どうして!?ヴィクトリア!?はぁ!?」
未来視に映しだされた光景は王子とヴィクトリアが結ばれるものだった。
違う……こんなのは違う。
そんな折、私は王子から相談を受ける。
いや、正確には様子がおかしい彼のことを私が心配したのが始まりだ。
「リリア。実はヴィクトリアのことで相談があって……」
王子からヴィクトリアが未来視を使えると聞いた時は、心臓が飛び出る思いだった。
私の他にこの神の力に選ばれた人間が存在していたのだ。
高揚感と共に、酷い妬みが沸き上がってきた。
私はひたすら隠し続けて今まで努力してきた。
それをあの女は他人にバラした挙句に、私の想い人と結ばれるというのか。
そう思ったら私のやることは一つだけだった。
ヴィクトリアが未来視を使えることを言い広め、彼女を婚約者の座から引きずり下ろすのだ。
皆優秀な私のことを信じてくれた。
涙を流し、困っている顔をし、可愛い声を出して……演じ続ければ……隠し続ければ……。
結果、ヴィクトリアは王子と婚約破棄をし、婚約者の座に私はついた。
そして先日。
私に未来視が訪れた。
それは私がヴィクトリアを刺している場面だった。
ヴィクトリアの腹から流れ出した血は残酷に床を赤く染める。
「ふふっ……神は罪人を裁く権利を私にお与えになるのね……」
私は大丈夫。
この力があればもっと幸せになれる。
そのために邪魔な人間は地獄に落ちればいい。
「さよなら、ヴィクトリア」
私は彼女を刺すと、その場から逃走した……
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