私は諦めませんので。

ララ

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第五話

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「ヨハン王子……」

私はショックで今にも倒れそうになった。
まさか私の力のことをバラしたのは王子だったとは。

「ヨハン王子、詳しくお聞かせ願えますか?」

「ああ」

王子は頷くと、語り始める。

「君の力を知った次の日。リリアが心配そうな目を僕に向けたんだ。どうやら普段とは違う様子の僕を見て、異変に気づいたらしい……」

「リリアが?」

「ああ。僕は彼女の口車に乗せられ、つい君のことを話してしまった。そして彼女と秘かに婚約までしてしまったんだ……」

そういえば王子の指にはあの指輪がはめられていない。
リリアとお揃いの指輪が。

「彼女は君のことを助けると言っていた……しかし現実はどうだ……それとは真逆になってしまった。きっと彼女なりに頑張っての結果なんだろうとは思うが、これではあまりにも君のことが不憫で……」

どうやら王子は自分のしたことを反省し、こうして真実を告げに来てくれたようだ。
しかし問題はリリアの方。
王子に私を助けると言っていたが、今の所私を毛嫌いしているようにしか見えない。

それは私も同じだが……。

「あのヨハン王子……王子はこのままリリアを妃に迎えるのですか?」

私の質問に彼は戸惑いながら答える。

「さっきも言ったようにもう婚約は結んでしまった。二度も婚約を破棄したとなれば父上から何と言われるか……」

確かにその気持ちも分からないでもない。
しかしだからといってリリアを妃にするのはどうかと思うが。
まあ王子の気持ちが一番ではあるのだけど。

「王子。話してくれてありがとうございました。一度リリアと話してみます」

「そうだな……僕も一緒に行くよ」

「いえ、私一人で行かせてください」

王子もついてきたらリリアは猫を被るに決まっている。
対して私だけなら、彼女の本音を聞くことができる。
一体どうしてこうなったのか、真実を確かめることができるのだ。

私の心中を悟ってか、王子は小さく頷いた。

「分かった。ならこの件は君に任せる。時間を取らせてすまない……」

王子はそう言うと静かに立ち上がり、部屋から出て行こうとする。

「あの!ヨハン王子!」

私が咄嗟に呼び止めると、彼はゆっくりと顔を私に向けた。

「あの……もし私が未来視を持っていなかったら……王子は私を妃にしてくれていましたか?」

今更どうなるというのだ。
頭でも分かっていても、心は制御できなかった。
王子はぎこちなく笑うと、口を開いた。

「ああ。もちろんだ」
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