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第三話

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数日後。
私は友達のトーマスの家を訪れていた。

トーマスの家と私の家は昔から交流があり、自然と私もトーマスと友人になっていった。
普段無口だが私の話をちゃんと聞いてくれるトーマスの存在は、私にとってもありがたいものであったし、無駄に気遣う必要もないので一緒にいて楽だった。

トーマスの家に行くと、応接間にはトーマスが一人座っているだけで、他に人はいなかった。
皆出払っているのだろうか……。

「ノエル……よく来たね……」

トーマスは感情の籠ってない声でそう言うと、テーブルの上のお菓子を指さした。

「食べて大丈夫だから……」

「ええ、ありがとう」

彼の正面のソファにちょこんと座りお菓子をほおばる。
甘い砂糖の味が口いっぱいに広がり、幸せな気持ちになる。

「……」

「……」

いつもはちゃんと話せているのに、何だか今日は無言になってしまう。
平気な顔で本を読んでいるトーマスが羨ましい。
 
「ト、トーマス……今日はご両親は出かけているの?」

「ああ……そうだった……忘れてた」

トーマスは本を置くと、「ごめんごめん」と謝った。

「両親は出かけていてね……今日は中止にしようか迷ったんだけど、今ノエルはその……色々あっただろ? だから何か力になれればって……」

「そうだったの……」

詳しい気持ちまでは話してはくれなかったが、友達として彼の言いたいことは何となくわかる。
きっと私の事情を察して、いつもみたいに話を聞いてくれるのだろう。
しかし今日のトーマスはどこか変な気がする。
さっきから全然目が合わないし、どこか口調が早口だ。

何かあったのかしら?

「トーマス、もしかして何かあった?」

「いや……別に……」

「でも、今日のあなた何だか変よ。体調でも悪いの?」

「別に……」

「本当?」

私がトーマスの顔を覗き込むと、少しだけ彼の顔が赤くなった。
熱でもあるのだろうか?
こうして話を聞いてくれるのは嬉しいが、無理はしてほしくない。

「……すまない」

するとなぜかトーマスは目を逸らしながら謝った。

「ん? 別に謝ることなんて何もないじゃない。体調を崩すことは誰だって……」

「いや、そうじゃなくて……」

そこでトーマスは私の目をしっかりと見つめたのだった。

「君を守れなくて……ごめん」
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