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第七話

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「腹立たしい限りだ……」

父の顔には靄は見えない。
やはり私に怒りを抱いているのだろう……変な力を持った娘を軽蔑しているのだろう。
そう思った私はそっと俯いた。

握りしめた拳に涙が落ちる。

「全く……娘の苦しみにも気づけないとは、私は父親失格だ」

……え?
父の意外な言葉に私は顔を上げる。

「そうね。私も母親失格だわ。もっとレインのことを見てあげるべきだったわ」
「それなら私も姉失格だよ。大切な妹を助けられなかったなんて……」

母と姉も父に続き、口を開いた。
三人は共に自分を責めていた、私ではなく、自分を。

「ど、どうして……!?」

私が掠れた声で言うと、父はいつもの笑みを浮かべる。

「家族だからだ」

母も続ける。

「そうよ、あなたは私たちの家族なんだからもっと甘えていいのよ」

姉も無邪気に笑った。

「そうそう。もっと私を頼ってよ。せっかくの優秀な頭を使わないなんて、宝の……いや、姉の持ち腐れだよ!」

「お前は何を言っているんだ……」

父が呆れた様子で姉を見るが、どことなく嬉しそうだ。

私はここに来る前、何度も頭の中でシュミレーションをした。
すんなりと受け入れてくれる家族……酷く怒る家族……。
もちろんこうやって笑って受け入れてくれる姿も想像済みだ。

しかし……。

「ありがとう……ござ……います」

どうしてこの現実は私の想像をいつも超えてくるのだろう。
これじゃあ……嬉しすぎて、まともにお礼も言えないじゃん……。

ポンと肩に手が乗る。
確かめなくても分かる、父の温かい手だ。

反対の肩にも手が乗る。
母の包み込むような優しい手。

そして頭に手が乗る。
髪に指を乱雑に絡ませるのは姉の手だ。

「レイン。今まで苦しい思いをさせてすまない。お前がそんな力を持っているなんて想像もつかなかったんだ」

「ごめんねレイン。母としてあなたにもっと寄り添うべきだった。どうか私たちにもう一度チャンスをちょうだい。今度はあなたを救ってみせる」

「まあ私としては誇り高いけどね。不思議な力を持ってるって物語の主人公みたいでかっこいいじゃん。レインは自慢の妹よ」

涙が溢れて溢れて止まらない。
急いで目を拭うも、追いつかない。

謝るのは私の方だ。
今まで隠して安全な場所にいたのは私の方だ。
なのに……伝えたいのに……涙で何も話せない。

「う、うぅ……うぁぁん……!」

気づいたら私は久しぶりに声を上げて泣いていた。
家族の温かい手に支えられながら……。
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