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第四話

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「恋敵……」

サラの言葉を自分で復唱してみて、その意味に気づく。
まさか……と思いかけた時、サラが言葉を加えた。

「私は……ロイ様と関係を持ってしまいました」

「え……」

彼女の顔に靄は見えない。
つまりそれは真実だということ。
ロイはサラと浮気をしていたのだ。

私は強く歯ぎしりをする。

「レイン様……本当にごめんなさい……」

サラはそう言うと、おもむろにその場に膝をついた。
そして頭を床につけ、土下座をした。

「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……うぅ……本当に……ごめんなさい」

自分を律っするように謝罪の言葉を繰り返すサラ。
私はただそんなサラを茫然と見下ろす。
止めることも、怒ることもなく、ただ無感情に。

サラのことは友達だと思っていた。
初めてできた友達だった。
嘘もつかない……素直で優しいサラ……。
私は彼女が好きだった。

しかし目の前にいるのはあのサラなのだろうか。
私の婚約者と浮気をし、土下座をして涙で顔を腫らしている。
彼女は一体誰なのだろうか。

「サラ……」

私が彼女の名を呼ぶと、彼女の声はピタリとやんだ。

「なぜ……それを私に言おうと思ったの?隠しておくこともできたはずでしょ?」

サラは自分の声が届かないことを危惧したのか、さっと立ち上がると、目を乱雑に手で拭った。

「レイン様が私の一番の友達だからです」

「……」

彼女はまだ言葉を続けるようだったので、私は口を閉じる。
少しして、やはり彼女は言葉を続ける。

「恥ずかしながら、私には今まで友達がいませんでした……きっとこの素直すぎる性格が仇となっているのでしょう……周りの嘘を指摘しているうちに、いつの間にか距離を取られるようになったんです」

嘘だと知っていてもそれを告げない私と正反対だ。

「別に誰かを助けたいとか高尚なことを思っているわけではないのです……ただ、黙っていたら自分まで嘘をついたような気になって、見過ごせなかったのです」

サラが昔を懐かしむような目になった。
しかしどう頑張ってもそれには手が届かないような、悲しみも帯びていた。

「自分の嘘をバラしてしまうような人間を誰だって友達にしたくはありません。自分が不都合になるのですから……」

その通りだ。
だから私みたいな存在は嫌われるのだ。

「でもレイン様だけは違いました。私から目をそらさずに向かい合ってくれました。心で分かったんです。この人とは友達になれるって」

私も同じだ。
素直な……嘘のつけないサラだから、友達になりたいと思った。

こんな状況だが、サラも同じことを思ってくれていたことが素直に嬉しかった。
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