愛する人とは結ばれましたが。

第八話

「……以上で卒業式を終わります。この学園の卒業生として誇りを持って未来へと突き進んでください！」 

理事長の熱弁を最後に卒業式の幕は降り、生徒各々が思い出に浸っていた。 
友人と集まり写真を撮る者、想いを寄せていた人に告白するもの、皆が思い思いの時間を過ごし、やはり私もクレアと思い出を語り合っていた。 

しかしそんな楽しい時間もあっという間。 
気づけば帰る時間となり、私は帰路についた。 

家に帰ると豪華な夕食がテーブルに並べられていた。 
私の卒業祝いで普段より一層豪勢になっているようだった。 
服を着替え食卓に着くと、私は早速、目の前の料理を頬張った。 
肉の脂が口いっぱいに広がり幸福な気分になる。 

「卒業おめでとう、シャーロット」 

姉も料理を口に運びながら私に笑顔を向ける。 
しかしその笑顔はどこか引きつっていて、少し疲れが見えた。 
よく見ると、目の下にクマまで出来ている。 

「ありがとうございます、お姉様。……ところで、少しお疲れのようですが、大丈夫ですか？」 

私がそう問いかけると、姉はふふっと感情の籠らない笑いをこぼす。 

「そうかしら？私は元気よ。それよりもシャーロットの話を聞かせて？」 

「あっ、はい……」 

姉との会話と豪勢な料理を楽しんだ後、私は自室に戻った。 
引き出しを開け、家族写真を取り出す。 

「お母様……今日卒業式だったの……もう大人になれたかな？」 

母が死んでから父は、母のものを全て捨ててしまった。 
きっと見るのが辛かったんだと思う。 
この写真は私が秘かに隠し持っていた一枚なのだ。 

「あと三か月……頑張るね、お母様……」 

その日はいつもより早く眠りについた。 
体が疲れていたからか直ぐに眠ることが出来た。 

夢の中に出てきたのはやはりあの日の出来事。 
後ろから何か硬いもので殴られ、そのまま倒れる私。 
そして最期に聞いたあの声。 

『あなたが悪いのよ』 

それから二か月は何の収穫もないまま時間が過ぎた。 
クレアとは度々お茶会でも開いていたが、それ以外の人物とは全く会っていない。 
姉も婚約者がいるからか家にいることが少なくなり、私は絵を描いて日々を過ごしていた。 

そして学園の卒業式から二か月後と少し。 
私は案の定、父の書斎に呼びだされた。 

「失礼します、お父様」 

扉をノックし部屋に入る。 
父はしかめっ面のまま、早速本題に入った。 

「シャーロット……お前の婚約者が決まった」 

「はい……」 

私がコクリと頷くと、父は言葉を続けた。 

「相手は……お前も知っているとは思うが……ペンドラゴン公爵家の子息ウィリアムだ。異論はないな」 

「はい、ありません」 

冷淡に私は言うと、父は普段は見せないような驚いた顔をした。 

「……ん？驚かないのか？……もしかして他に想い人でもいるのか？」 

「え？いえ……あっ……衝撃的すぎて固まってしまって……」 

さすがに、『二回目なので驚かないですよ』とは言えないので慌てて誤魔化すと、父は納得したように頷いた。 

「そうか……ならばウィリアムとの縁談の話を進めさせてもらう。いいな？」 

「はい！お願いします！」 

私は父に丁寧にお辞儀をすると、部屋を後にした……