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第七話

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昼食も食べずに部屋で横になっていると、いつの間にか時刻は夕方になっていた。
もう学校は終わった頃だろう。
泣き腫らした目で時計を見ていると、扉がノックされる。

「お嬢様。お友達のブルーノという方がお見えですが……何でも昨日のことを謝りたいと……」

私もちょうど彼と話したいと思っていた所だ。
いつも本を読んでいる彼なら古代魔法のことも詳しいだろう。
もう一度記憶を消す助言をしてくれるかもしれない。

どこか自暴自棄気味になっていた私は、適当に返事をした。

「入れてちょうだい」

「分かりました」

使用人が去っていくと、私はさっと身支度をする。
それから数分後、扉が開きブルーノが現れた。

「やあ、アナリス。大丈夫かい?」

「ええ、大丈夫よ」

そう答えたものの、やはりまだ体は重い。
もちろん心の方がもっと重症だが。
ブルーノも私の言葉をそのまま受け取らなかったようで、心配そうに椅子に腰かけた。

「本当にすまない。きっと僕が魔法のことを口にしたから、それが発端となって体調を崩してしまったんだろう……もしかしたらその内記憶も戻って……」

「ああ、それならもう戻ったわよ」

「……え?」

唖然とするブルーノを他所に私は言葉を続ける。

「全部思い出したの。ローとの一件。ナタリーの嬉しそうな顔まではっきりとね。ふふ」

「何を笑っているの?」

ブルーノがどこか怯えたように言う。

「確かに何でだろ。でもいいじゃない。笑いたいのだから。笑いたい時に笑えるって幸せなことでしょう?」

「……何を言っているんだ?」

「さあ、私も分からない!でも今幸せなの!私は……私は幸せなの!!!」

「そんな嘘はやめろ!!」

ブルーノは突然立ち上がると、怒りをはらんだ視線を私にぶつけた。
わなわなと肩が小刻みに震えている。
大人しい彼からは想像もつかない怒りの表情に、私は思わずたじろいでしまう。

「アナリス。悲しい時は悲しんでいいんだ。笑いたい時には笑えばいい。でも嘘はやめろ……無理矢理に自分に嘘をつくことだけはやめるんだ!」

「そ、そんなの私の勝手じゃない!」

「違う!」

ブルーノは一歩私に近づく。

「君が辛いと僕も辛いんだ。アナリス、どうして分からない!?こんなにも君のことを大切に想っているのに!!」

「……え?」

ブルーノがふいに私の手を握る。
不思議と嫌ではない。
それどころか……。

「ローが君を幸せにできないのなら、僕が幸せにする!アナリス、僕は君のことを愛してしるんだ!」
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