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第一話
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「ロー様ぁ……何読んでるんですかぁ?」
「ロー様ぁ……一緒にご飯食べましょう!」
魔法学園の至る所で、私を突き飛ばしローの元へと接近する彼女。
彼女の名前はナタリー。
私とローが婚約していることは既に知っているはずだが、どうやらそれでもローのことがお気に入りのよう。
「ナタリー。今日はアナリスとご飯を食べる約束をしているんだ。また今度な」
ローはそう言うと、私の方をチラッと見る。
私は安堵の息をはきながら、悔しそうにしているナタリーに微笑を向ける。
彼女は一瞬私を睨みつけた後、「約束ですよ!」と言って去っていった。
「さぁアナリス。ご飯にしようか」
かつては幼馴染であり、今は婚約者。
私は幸せの渦中にいた。
しかし、数日後。
オセロゲームのようにそれは簡単にひっくり返された。
「……すまないアナリス。今日はナタリーとお昼は食べるよ」
まあ、約束していたものね。
そう理由付けるもやはり悲しみは抑えきれない。
ローはナタリーと楽しそうに話しながらその場を去っていく。
ナタリーは恍惚とした表情で、口元を緩めている。
かつては私もナタリーのようだった。
鈍感なローにアタックし続け、やっと婚約者の座まで辿り着いた。
お昼だって何回も一緒に食べようと誘った。
二人の背中を見ていると、穴に落ちていく感覚に襲われる。
ローは私のことを好きだというよりは、どこか渋々婚約に応じた様子であった。
初めから分かっていたのかもしれない。
私は親友にはなれても、恋人にはなれないことに。
それからローは事あるごとにナタリーを優先するようになった。
「頼むよ」そうローに言われたら、私は断ることが出来なかった。
嫌われるのが怖かったのだ。
ローとナタリーは秘かに婚約している。
学園内を歩いていると、そんな話を小耳に挟むようになった。
それに納得してしまう自分がたまらなく嫌だった。
ローを想い、ローのために生きようと自分に誓った。
しかしその未来は簡単に閉ざされてしまう。
私は一度だけ二人が一緒にお昼を食べているのを見た事がある。
ナタリーが「あーん」と言って自分のおかずをローにあげていた。
それは、私もやったことがない行為だった。
「ロー様ぁ……一緒にご飯食べましょう!」
魔法学園の至る所で、私を突き飛ばしローの元へと接近する彼女。
彼女の名前はナタリー。
私とローが婚約していることは既に知っているはずだが、どうやらそれでもローのことがお気に入りのよう。
「ナタリー。今日はアナリスとご飯を食べる約束をしているんだ。また今度な」
ローはそう言うと、私の方をチラッと見る。
私は安堵の息をはきながら、悔しそうにしているナタリーに微笑を向ける。
彼女は一瞬私を睨みつけた後、「約束ですよ!」と言って去っていった。
「さぁアナリス。ご飯にしようか」
かつては幼馴染であり、今は婚約者。
私は幸せの渦中にいた。
しかし、数日後。
オセロゲームのようにそれは簡単にひっくり返された。
「……すまないアナリス。今日はナタリーとお昼は食べるよ」
まあ、約束していたものね。
そう理由付けるもやはり悲しみは抑えきれない。
ローはナタリーと楽しそうに話しながらその場を去っていく。
ナタリーは恍惚とした表情で、口元を緩めている。
かつては私もナタリーのようだった。
鈍感なローにアタックし続け、やっと婚約者の座まで辿り着いた。
お昼だって何回も一緒に食べようと誘った。
二人の背中を見ていると、穴に落ちていく感覚に襲われる。
ローは私のことを好きだというよりは、どこか渋々婚約に応じた様子であった。
初めから分かっていたのかもしれない。
私は親友にはなれても、恋人にはなれないことに。
それからローは事あるごとにナタリーを優先するようになった。
「頼むよ」そうローに言われたら、私は断ることが出来なかった。
嫌われるのが怖かったのだ。
ローとナタリーは秘かに婚約している。
学園内を歩いていると、そんな話を小耳に挟むようになった。
それに納得してしまう自分がたまらなく嫌だった。
ローを想い、ローのために生きようと自分に誓った。
しかしその未来は簡単に閉ざされてしまう。
私は一度だけ二人が一緒にお昼を食べているのを見た事がある。
ナタリーが「あーん」と言って自分のおかずをローにあげていた。
それは、私もやったことがない行為だった。
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